生徒会の一族第3話「光と闇」

前回までのお話…

どこにでもいる普通の高校生、神原 薩真は、ふとしたことからの親友である東堂 賀雄と共に星嬢流華学園の生徒会の1員となった。

薩真「誰が親友だよ」

生徒会の1員になった薩真の周りでは不可思議な出来事が起こり始める。

ある買い物の帰り道、人間(ひと)の形を象った何かがいきなり現れ、薩真に襲いかかるもその間に黒装束を身に纏った人が割り込み、襲って来た奴やその周りにいた奴らを圧倒的な力でねじ伏せる。

賀雄「一体、誰なんだ、こいつは…」

しかし、その黒装束を纏った人は、薩真を見ると今度は、そいつが薩真に向かって殴りかかってくる。今度は、どこからか現れた紅橙色の戦闘服を身に纏い、紅色の長髪の少女、アカネが2人の間に割り込み、持っていた鞘でその拳を受け止める。

アカネ「さすが、私ね」

黒装束の人と少女との戦いが始まろうとした時、遠くの方から水色の細い光線が黒装束の人の服に小穴を空けると黒装束の人は、闇の中へと消えて行く。2人の後ろから現れたのはスナイパーライフル銃を片手に蒼翠色の戦闘服を身に纏い、蒼色の短髪をした少女、アオナだった。

アオナ「あの黒装束の奴には最新の注意が必要よ…」

そして、2人から今、起きていることの説明を受ける薩真だが、あまりにも現実離れをしているため理解に苦しむ。そして、アカネから楠公園に来る様に指示を受ける。

夜の楠公園にやって来た薩真は、1人の黒服の男性と出会い、なんやかんやあって公園の中にある滑り台の着地部分の地面が開き、その中に向かって滑って行くとある部屋の中に辿り着く。

薩真「なんやかんやって、ちゃんと説明しろ」

???「詳しいことは、第2話「蠢く夜」を読んでくれ」

しばらく部屋の中で待っているとある人物が部屋のドア越しに話しかけて来る。その人の名は、ガーデン、アーカイル・レイ・ガーデン、このSATG(スタッグ)基地の長と名乗る男性だった。

本編の始まり。

薩真「SATG(スタッグ)?」

ガーデン「まぁ、詳しいことは私の部屋で話そう」

そう言うとガーデンは、ドアに自分の左手を翳すと左手の甲にある紋章が浮かび上がり、ドアが開く。

ガーデン「さぁ、出て来て良いよ」

そう言うと薩真は、疑心暗鬼になりながらも周りを見てから部屋の外に出るのだった。

ガーデン「何を怯えているのかね」

薩真「いや、いきなりこんな所に来て、疑わない人いないと思いますが…」

ガーデン「確かにな。まぁ、そんな心配する必要は、ない。ここは、地下にあるからな。それじゃ、案内しよう」

そう言うとガーデンは、通路を歩き始めるとその後を薩真が少し距離を置いて追いかけて行くのだった。

しばらくすると司令室と書かれた掛札が付いてあるドアの前にやって来るとガーデンは、さっきと同じく左手を翳すとドアが自動的に開く。

ガーデン「さぁ、入ってくれ」

部屋の中にまずは、ガーデンが入るとその後を薩真が入室する。

薩真「!!!」

部屋に入って直ぐ薩真の眼に映ったのは自分の家の額縁に飾られてあるあの絵の巨大な姿だった。

ガーデン「どうしたのかね、薩真くん」

薩真「この絵…」

ガーデン「ん? この絵がどうした?」

薩真「俺の家に飾られている絵と同じなんです」

その言葉を聞いたガーデンの表情が一瞬だけ険しくなると直ぐに穏やかな顔に戻る。

ガーデン「そう、君の家にこの絵が…この絵の題名を知ってるかね」

薩真「えっ、あ、はい。確か…光と闇…」

ガーデン「やはり知ってたか」

薩真「やはりって…」

ガーデンは、その絵の前に置いてあるゲーミングチェアの様な豪華な椅子に座る。

ガーデン「君がここに来る前に少しだけ君のことを調べてさせてもらったんだ。そして、アカネにも君ついての情報を聞いている…そう、君の右手に宿っている叡智(ちから)について」

薩真「これは、一体何なんですか…」

ガーデン「実は、それについては我々もよくわかってない」

薩真「わかってないのにあんなことを…」

ガーデン「わかってないからこそだよ、薩真くん」

薩真「それで、俺は、これからどうなるんですか…」

ガーデン「まぁ、そう怖い顔になるな。野蛮なことはせんよ。我々は、個と人権、そして、人としての心を大切にする組織なのだから」

薩真「そう…ですか…」

ガーデン「本来であればアカネの言う通り、特異点である君の身柄をここで預からなければならないのだが…私生活のこともあるだろうから預かることは出来ない。だからと言ってこのまま野放しには出来ない」

薩真「それじゃ、どうするんですか?」

ガーデン「と言う訳で、君をここSATGの1員にすることする」

薩真「……………はい?」

ガーデン「さぁ、決まった所で早速…」

薩真「ちょい待ち。誰も入隊するとか言ってないし、勝手に話を進めないでくれません?」

ガーデン「ふふふ、冗談だよ」

薩真「(何なんだ、この人は…)」

ガーデン「それじゃ、薩真くん。この書類にサインを。もうすでに君の印鑑を押しておいたよ」

ガーデンは、机の引き出しから1枚の紙を取り出し、机の上に優しく置き、薩真に差し出す。

薩真「あー用意周到なこって、それじゃ、サインと…」

そう言うと薩真は、その紙をチラッと目を通すと両端を両手で持つ。

薩真「って、なるかー!!」

薩真は、両側から紙を思いっきり引っ張ると紙は、粉々に散って行く。

ガーデン「どうしたのかね?」

薩真「どうしたのかねって、平然な顔して言わないでくれません! もう、ツッコミ所満載だよ! なんか、もう、俺が入る前提で話されてるし! なんか誓約書に勝手に俺の押し印がされてるし! なんで、あんたが俺の免許証の写し持ってんだよ!」

ガーデン「凄いだろ?」

薩真「ああ! 凄いよ! 怖いよ! ヤバいよ!」

ガーデン「何も心配することはないさ」

薩真「(りむー! 最初の時も言ったけど、りむー! 色々とりむー!)」

ガーデン「さて、お遊びは、ここまでしようか」

薩真「えっ?」

その詞と同時にガーデンの顔が真剣な顔になる。

ガーデン「まさか、あれが私だと思ったかね」

薩真「えっ、ええ…」

ガーデン「司令官と言うのは部隊を指揮するだけが仕事ではない。こうやって、人間(ひと)と気楽に接することもまた必要なのだよ」

薩真「(と言うことは、今までのは演技…)」

ガーデン「しかし、君にここSATGに所属して欲しいことは間違いない。そうでなければ君の身に何か起こってからだと手遅れになってしまうからね。では、まず、この「光と闇」について説明して行こうか」

「光と闇…それは、遥か昔、我々人類や他の生命体達が生まれるずっと前の世界。そこには光と闇の2つが存在した。光は、闇を恐れ、闇は、光を恐れた。光と闇は、相対する存在、光が強くなれば闇もまた強くなる。闇が強くなれば光もまた強くなる。この2つは、決して交わることがなく、日々絶え間なく争いが繰り広げられていた。そんな争いが繰り広げられている中でとある出来事によって闇の世界を統治する王と光の世界を統べる騎士が大きく対立する。その時に起こった大戦を第0次暗刻大戦と言う。しかし、この大戦は、ある5つの誕生によって急遽終焉を迎えた…」

ガーデン「この絵は、その第0次暗刻大戦の後に描かれた聖遺物だと定められている…そして、ここに描かれている2人の人物…黒い方が闇の王、白い方が白金の騎士と我々は、呼んでいる」

薩真「闇の王…白金の騎士…」

ガーデン「確か薩真くんは、黒装束の奴と接触したと言う報告を受けているが、間違いないか」

薩真「はい」

ガーデン「私は、奴らのことを闇の従者と名付けている。君が通う学園、星嬢流華学園が閉まった後にその学園内外を彷徨っていることも確認されている」

薩真「奴らってことは複数いると言うことですね」

ガーデン「ああ、以前、偵察隊を差し向けたが、生命(いのち)に別条は、無かったものの…身に付けていた武装は、ほとんど破壊されていた」

薩真「奴らの目的は…」

ガーデン「そこまでわからない…ただ、わかるとすれば奴らは、我々に知られてはいけない何かを知っている…そして、あの人間(ひと)の形を象った奴を倒している報告も上がっている」

薩真「味方…なんでしょうか」

ガーデン「さぁな…何もかもが不明…得体の知れない奴ら…だから、「闇」なのかも知れない」

薩真「だから、あまり関わるなと言ってたんですね」

ガーデン「ああ。でも、敵とは思えない。もし、本当に我々を敵視するのであればあの圧倒的な力で幾らでも葬りされたはず…それをしない…生かしてるのか、それとも…薩真くんから聞きたいことはあるかね」

薩真「たくさんありますが、気になっているのはあの空間のこととプレイヤーの関係性です」

ガーデン「ほう、そこに視点が行くとはさすが特異点だな」

薩真「その特異点も知りたいです」

ガーデン「では、まず、特異点について話をする必要があるな。特異点、聖典によると己の心の闇に討ち克ち、闇の力を手に入れ、自我を覚醒させた者を特異点と呼んでいる」

薩真「自我の覚醒…」

ガーデン「そして、君の右手の甲に浮かび上がる叡智(ちから)の印…それは、特異点で無いと現れない物だと言うこともわかっている」

薩真「と言うことは、あんたも…」

ガーデン「ああ、特異点さ。しかし、この特異点には2つの道が存在することもわかっている。それが、「光と闇」」

薩真「まさか…あの時、黒装束の人が俺を殺そうとしたのも」

ガーデン「君を我々の手に渡したくなかったんであろう。つまり、君は、光にでも闇にでもなれる中間点にいる」

薩真「確かそいつは、お前達では抑止力になれないって…」

ガーデン「そうか…奴がそんなことを…」

薩真「一体何があったんですか…」

ガーデン「闇覚醒」

薩真「闇覚醒…」

ガーデン「これは、光でも闇でも起こり得ることで、ある一定の領域を超えると自動的に叡智(ちから)が暴走を始め、闇が心の侵食を始める。それに耐えきれない心は、闇に呑み込まれ、自我を壊し、心影獣へと姿を変える…そうなってしまえば、もう、2度と人間(ひと)に戻ることは出来ない。聖典にはその先に行った者がいると書かれてあったが、私では見たことはない」

薩真「もし、それになったらどうなるんですか…」

ガーデン「空間維持のために抹殺される。現に過去、2回起こっていて最初は、闇の従者の奴らが処刑した。2回目は、我々の部隊、SATG、SATS(スタッス)、SATO(スタット)の応戦とあの黒装束の奴との共闘で何とか倒すことが出来た」

薩真「でも、あいつは、これが何度目の大丈夫だとも言ってました」

ガーデン「そうか……特異点が成熟する前に人間(ひと)の形を象った奴らに襲われて殺されたり、喰われたりして何人もの特異点が死んでいる」

薩真「(だから、あの時、あいつは、あんなことを言ってたんだ)」

ガーデン「さて、それでは、君が気になっている関係性について話そう。まず、プレイヤーとは我々特異点のことを指す。おそらく君が言う空間は、歪邪心空間のことだな」

薩真「時空論とかそんな類なんですか?」

ガーデン「まぁ、間違いではないな。その名の通り歪んだ邪な心の空間…つまり、人間(ひと)の欲望が作り出した空間だ」

薩真「凄い複雑ですね…」

ガーデン「かつて、聖戦を戦い抜いた人達は、トラフェイクトフィールドと言う擬似空間を作り出し、闇と戦っていたと言う話があるが…今となってはロストテクノロジーとなってしまっている…それがあれば我々も充分な活動範囲を広げられるんだが…おっと、すまない、話が逸れてしまったようだね。この2つの関係性…つまり、人としての心が大きく関わりを持つことになる」

薩真「人としての心…」

ガーデン「今日は、ここまでにしよう。あまり遅くなるとご家族が心配なさることであろう。薩真くん、最後に君に渡したい物がある」

薩真「渡したい物?」

そう言うとガーデンは、机の上から2番目の引き出しの棚を開け、その中から1つの黒い長方形の箱を取り出すと机の上に置き、薩真にゆっくり差し出す。

薩真「これは?」

ガーデン「今の我々の叡智(ちから)で唯一復元出来たロストテクノロジーの1つ、トライフォン」

薩真「トライフォン? 携帯か何かですか?」

ガーデン「ああ。しかし、腕時計型の携帯電話らしい」

薩真「今となっては普通に見かけますけどね」

ガーデン「彼らの時空では最新で高度な叡智(ちから)が使われていたんだろう。その証拠がこのトライフォンを着けていると遠くに離れていても叡智(ちから)の共有が出来るのと闇の従者が近くにいることや歪邪心空間が張られていることを知らせてくれるんだ」

薩真「つまり、ロストテクノロジーとあいつらが深く関わっている可能性が…」

ガーデン「ふふふ、そこに目を付けて来るとは恐れ入ったよ。私も独断で奴らのことを探らなければいけない…そこで、君に私の部隊の司令官をやってもらいたいと考えいる」

薩真「ええっ!」

ガーデン「まぁ、能力判断テストをしてみないことには何もわからんよ。外に出る時は、必ずこれを着けておく様に。わかったかね」

薩真「は、はい」

そう言うと薩真は、箱を手に取って中身を確認するとそこには間違い無くアレが入っていた。

薩真「(いや、アッ◯ルウォッ⬜︎じゃねぇか!)」

ガーデン「はい、そこ、◯ップル⬜︎ォッチとか言わなーい。トライフォンだから」

なんやかんやあって、アッ…トライフォンを右腕の手首に着けた薩真は、ガーデンと共にある場所に向かっていた。

薩真「今度は、どこに向かってるんですか?」

ガーデン「ここから君の家に直結する土管に案内する」

薩真「土管って…もう、嫌な感じしかしない…」

しばらく歩いていると遠くの方から誰もが1度は、見たことがある緑色の土管が見えて来る。

その前にやって来るとガーデンは、薩真の方を振り向き、笑顔で薩真に声をかける

ガーデン「さぁ♪」

薩真「さぁ♪  じゃねぇよ! これ、ヤバいって! 完全にモザイクじゃねぇか!」

ガーデン「何を言ってるのかね、これは、土管だよ」

薩真「いや、土管だけど! 色々版権が危ないって!」

ガーデン「何も心配は、いらんよ。ちゃんと土管からはあれが…」

それと同時に土管から三角形の茶色のアレが出て来る。

薩真「だー! もう、駄目だってば! 心配大ありの大アリクイだわ! 何考えてんだよ、あんたは!」

ガーデン「楽しい基地だろ」

薩真「もう、今回だけにしてください…本当に色んな部署から怒られますから…」

ガーデン「ふふふ、大丈夫、モザイクもかけてあるし、みんなで仲良く使うのがもっとうだしな」

薩真「はぁ…付いて行けねぇ…」

ガーデン「ちなみにこんなのも…」

ガーデンの左手の中には少し帯電した黄色のモルモットが乗っていた。

薩真「だから、勝手に出すなってば!」

ガーデン「ツッコミが新鮮だからついな。さて、冗談は、ここまでにしてと…」

ガーデンが指を鳴らすとそれらが全部一瞬で消えるのだった。

ガーデン「さて、実は、君の家に直結するリフトがあるからそこから家に帰って欲しい」

薩真「なんで、俺の家の場所まで知ってるんだよ…」

ガーデン「そこは、企業秘密だよ。君の家の前に直結するリフトは、C-7と書かれた扉の先にあるリフトだ。その中に入る為には着けてもらったトライフォンを扉に翳すと暗号を受信して適合すれば、扉は、自動的に開く」

薩真「わかりました」

薩真は、C-7と書かれた扉の前にやって来るとトライフォンを翳す。

すると、扉が自動的に開き、目の前には掃除用具を入れる鉄の箱が姿を現す。

薩真「うわーどっかのアニメで見た様なやつー」

薩真は、部屋の中に入り、その箱の中に入るといきなり女性の楽しそうな声のアナウンスが聞こえて来る。

???「はい、1名様、ご案内〜♪」

薩真「えっ?」

そのアナウンスの後に両手首と両足首をベルトで固定され、ガシャン!と言う音と共に鉄の箱の天井部が開く。

薩真「まさか…」

???「まさかでーす♪」

その詞と同時に鉄の箱の中から薩真を乗せたリフトが急に飛び出し、上がって行く。

薩真「なあぁーーーーーーーーーー!!」

〜神原家前〜

神原家の家の門の前にあるコンクリートの地面が正方形に開くとそこから固定された薩真が現れる。

薩真「うへぇ…」

安全が確認されると固定されてあったベルトが外れる。

薩真は、リフトからゆっくり降りるとリフトは、そのまま地面の中に消えて行き、出口も閉じるのだった。

薩真「もう、現実離れし過ぎて頭痛い…とりあえず、家に入ろう」

こうして、長い様で短い様な薩真の1日が終わりを迎えるのだった。

〜???〜

そこには黒装束を着たたくさんの闇の従者達が集まり、この世の詞では解明出来ない詞で何かを話していた。

???「ヌバヤザレダマベナ」

???「カソレシアマルーベ」

そこに黒装束の背中の部分に破の文字が刻まれた奴がやって来るとみんなそいつに視線を向ける。

???「アルフェサ?」

???「ギーザメアン…」

???「ルーフェ…」

黒装束達がある場所を見るとそこには巨大な樹が立っていた。

こうしてそれぞれに新しい朝がやって来るのだった。

次回 第4話「特訓開始!」


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