生徒会の一族第6話「追憶」

〜前回までのあらすじ〜

生徒会室の中に誘われた薩真の前にいたのはアオナとイエリと言う少女だった。

そして、学から貰った紙は、何かの護符でアオナの話によると闇や闇の従者が容易に近付けない様にするための護符だと言い伝えられる。

薩真「なんで、学さんがそんなのを…」

そして、夜の学園に慣れてもらう名目で夜の学園の探索を開始した3人は、月明かりが照らす闇の中に入って行く。

しばらく歩いているとアオナが何かの気配を感じ、その場で立ち止まる。

イエリに聖典で調べて貰うと闇の反応を感知するもその闇は、薩真達から遠ざかって行く。

3人の背後から闇の従者達が迫って来ていることがわかり、3人は、近くにあった教室に入り、身の安全を確保する。

安全を確認した3人は、闇の従者達とは反対の方向に向かって歩き始める。

その途中で薩真がイエリになぜ、夜の学園を探索しているのかと尋ねる。

イエリの話によるとかつて、この学園である悲惨な事件が起こり、その事件で犠牲になった生徒や教師達の報われない魂達が彷徨っていて、その魂達を救済するためと知らされる。

そして、とある教室の扉の前に到着すると突然変異が起こり、アオナが対処すると扉が開き、歪邪心空間の入り口が現れる。

しかし、その様子を闇の従者に見られていたため3人は、その中に無理矢理突入することになる。

その空間の中は、普通の教室の光景をしており、黒板の前に立っていたのはその事件の犠牲になった男子生徒が立っていた。

少し会話を始めるもその途中で男子生徒が苦しみ始め、男子生徒を中心に地面から魔法陣が出現する。

すると、その魔法陣から赤と黒の無数の手が現れ、男子生徒を魔法陣の中に引き摺り込む。

そして、その魔法陣の中から現れたのは啄木鳥の姿をした鳥族の闇、ハーメスでさらにその周りから薩真を襲った闇が出現すると教室が歪邪心空間に包まれる。

闇を迎撃するためにイエリは、聖典の叡智(ちから)を使うとイエリの前に黄色の魔法陣が現れる。

そして、その魔法陣の中から現れたのはカウボーイの姿をした護神テキサスだった。

薩真「てっきり、アーサー・ペンドラゴンとかアルテミスとかが出て来ると思った」

アオナ「完全にFGOにハマってるわね…」

その戦いの中で薩真は、あることを強く願うと叡智(ちから)の印が反応し、自我の進化を成し遂げ、右手の中に白い光を集めてボウガンを作り出す。

そのボウガンで闇を倒し、ハーメスに大きな深傷を負わせる。

そして、アオナとテキサスの共闘により、ハーメスを撃破し、戒魔の欠片を手に入れることに成功するも教室が元の姿に戻ると同時に黒装束を纏った3人が待っていた。

そこで明かされたのは闇の従者達も戒魔の欠片を必要としていることだった。

それを聞いた薩真は、戦って奪い合うより手を繋いだ方が良いと提案を持ち掛けるも時間が無いと否定されてしまう。

刀を持った2人の闇の従者が薩真に襲い掛かろうとした時、教室の窓硝子が轟音と共に割れ、そこから現れた謎のプレイヤーが間に入る。

薩真「あれは、一体誰だったんだろうか…」

謎のプレイヤーの乱入により、アオナ達は、無事にその場から逃げ、生徒会室に戻ることが出来た。

生徒会室に戻ったアオナ達は、ガーデンに状況を報告して終わろうとするも薩真が説明を要求して来る。

まだ知られる訳にはいかないアオナは、イエリに麻酔弾で薩真を眠らせる様に指示を送り、イエリは、小型の拳銃を使い薩真をその場に眠りに落ちさせるのだった。

眠りに落ちた薩真を背負って神原家まで送り届けた賀雄は、智之と出現した謎の生命体リヴァイアサンについて話し合う。

智之「全く…厄介なことになったよ…」

賀雄「一体誰がこの世界にリヴァイアサンを呼び寄せたんだ…」

本編の始まり。

〜???〜

薩真「………………」

薩真「…………」

薩真「……」

薩真「あれ…俺…どうなったんだっけ…確かアオナさんとイエリさんと一緒に生徒会室に戻って…そして……」

薩真が目を覚まし、周りを見回すとあの時の真っ白な風景があった。

そして、自分の身に何が起きたかを頭の中で整理をしていると懐かしく忘れかけていた声が聴こえてくる。

「よっ、久しぶりだな」

薩真「その声は! あの時、夢の中で聴いた…確か道導って、言ってたっけ?」

「ほう、まだあの時の記憶が残っていたのか。記憶力が良い奴だ」

薩真「教えてくれ。ここは、どこなんだ?」

「ここは、お前の心の奥底に眠る空間…簡単に言えばお前自身の心象世界だ」

薩真「心象…世界…」

「人間(ひと)は、誰しも自分の心が落ち着き、安らぐ場所を持っている」

薩真「つまり、俺は、今、自分の心が安らぐ場所にいるってことか…」

「まぁ、お前が「人間(ひと)」だったらの話だがな。さてと、俺が現れたのはお前にあることを伝えに来た」

薩真「あること?」

「先の戦いでお前は、無事に自我の進化をしたことによって自分の心力でボウガンを作り出せたな」

薩真「ああ」

「そして、あの世界の裏…闇の部分を知った。お前、あの戦いの時に何を願ったか、覚えているか?」

薩真「確か…みんなが戦っているのに俺だけ見ているだけなんて出来ないからみんなと一緒に戦える力が欲しいって…そしたら、叡智(ちから)の印が光って…ボウガンを持っていた」

「だな。その時、右手に激しい痛みは、感じたか?」

薩真「そう言えば…痛みなんて感じなかった」

「なんで、痛みが感じなかったと思う?」

薩真「………わかならい」

「まだ、そこまで進化は、していないと言うことだな」

薩真「そうだ。あんたの名前、聞いてなかった。教えて欲しい」

「道導だ」

薩真「違うだろ、あんたにもちゃんとした名前があるはずだ」

「知った所で何か関係あるのか?」

薩真「それは…名前ぐらい教えてくれても良いだろ」

「名前なんて…幾らでも変えられるし、偽れる…名前なんてただの飾りなんだよ…世の中にはその名前が嫌な奴だって山程いる…変な名前を付ける馬鹿な奴がいるから悲しむのはいつも無垢な子供達だ…それぐらいわかると思うがな…」

薩真「何かあったのか…」

「ここまで来ると色々とな…なら、これだけ教えておく。守護聖人とな」

薩真「守護聖人…」

「そして、お前に伝えに来たのはお前の欠落した記憶についてだ」

薩真「その前に俺にもちゃんとした名前がある。神原 薩真と言うちゃんとした名前が」

「そうだな。なら、薩真は、自分の過去の記憶は、どこまで覚えている?」

薩真「記憶…」

「小学生の時の記憶は?」

薩真「………わからない」

「そうか…薩真、その頬の傷がいつ出来たかは覚えているか?」

薩真「いや…全く…」

「なら、俺から言える事は…薩真、お前は、1度、生命(いのち)を落としている」

薩真「えっ…」

「まぁ、そうなるよな…薩真が小学生の時、とある科学者がいて、ある子を助けようとした時に出来た傷なんだ」

薩真「なんで、貴方が俺の小学生の頃の事を…貴方は、俺の何を知っているんだ」

「悪いが、今は、それを教える事は、出来ない。そして、その子を助けようとしてその科学者に体当たりをして、その子は、助かったが、その科学者と一緒にその科学者が開発した機械に突っ込んだんだ」

薩真「………でも、俺には中学生の時の記憶がある」

「でも、小学生の時の記憶は、無い。そうだろ?」

薩真「……………じゃあ、なんで俺は、生きているんだ…」

「その科学者が研究していたのが禁断の実験…ホムンクルス…つまり、人体錬成術だった。そいつは、どうしても幼い女の子と男の子の被験体が必要だったんだ」

薩真「何のために…」

「AdamとIbを誕生させるために」

薩真「AdamとIbって…旧約聖書に登場する最初の男性と女性と言われているあの2人ですか?」

「ああ」

薩真「なんでAdamとIbの復活させようとしたんですか…」

「新たな世界を構築するためだ」

薩真「新たな世界…」

「その科学者の最終目的は、AdamとIbを復活させ、自分が創生王となり、この世界を消滅させてゼロからやり直す事だったと残された資料に書かれてあった」

薩真「と言うことは、俺がAdamの誕生の実験体になっていた…」

「その通りだ。その科学者と一緒に機械の中に入った薩真は、とある遺伝子と同化を始める。科学者の方は、その遺伝子に適合出来なく細胞が暴走してその中で破裂して、血肉の塊になった」

薩真「それじゃ…俺の身体には…」

「本来、その子に入れるはずだったIbの遺伝子が埋め込まれている。そして、その機械から無事に出て来れたものの意識不明の状態だったが、体内では細胞が活発な働きをしているため幼い身体のままで成長すればやがて肉体が耐えきれなくなり、破裂して死ぬ。それを抑える必要があった」

薩真「どうやって…まさか!」

「そうだ。助けたその子がAdamの遺伝子を入れて、とあるカプセルの中で眠り続けいている。AdamとIbにはもう1つの言い伝えがあって、Ibが光でAdamが闇という言い伝えがあった」

薩真「光と闇…まさかあの絵って…それを意味していた…」

「2つが揃ったことにより均衡が誕生し、2人とも細胞の異常の活性化を防ぐことが出来たが…その子は、その時からずっとカプセルの中で眠り続けている」

薩真「その子がいる場所は…」

「約束の地」

薩真「約束の地…」

「そう、その場所がかつてその事件があった場所…この事は、このAdamとIb計画の全貌を知る者のみだ。薩真、お前は、ここに行かなければならない。そのためには最初に見たあの悪夢を越える必要がある」

その時、空間がぐらっと大きく揺れる。

薩真「な、なんだ!?」

「時間か…良いか、薩真、必ず生きろ、何があってもな」

薩真「待ってくれ、まだ聞きたいことが…」

「時間が無い…薩真、そのカプセルの中で眠っているのはお前の妹だ!」

薩真「!!!」

そして、薩真は、白い光に包まれるのだった。

〜現実世界〜

深い眠りに付いている薩真の側には奏衣が寄り添っていた。

奏衣は、両手で薩真の左手を優しく握っていた。

奏衣「薩真…」

その右手の甲には何かの紋章が浮かび上がっていた。

そこに智之がやって来る。

智之「奏衣」

奏衣「あなた…もう、これ以上、薩真を関わらせるのは危険過ぎるわ」

智之「わかってる…でも、2人を助けるためには薩真にはもっと強くなって貰わなければいけない」

奏衣「なんで、あの時、否定しなかったのかしら…こんなことになるなら…」

智之「奏衣…」

智之は、奏衣を横から優しく抱きしめる。

智之「もう、自分を責めないでくれないか、奏衣」

奏衣「だけど…」

智之「だから、僕達は、こうやって活動をしている。それに賀雄君も手伝ってくれてる」

奏衣「このまま…記憶が蘇らない方が幸せ…なのかしら…」

智之「かもな…でも、もし、薩真の幼い時の記憶が蘇ってあの事について聞かれたらどうする?」

奏衣「……薩真、怒るかしら…」

智之「きっとね…そして、僕達2人のことを恨んでその叡智(ちから)で殺すと思う」

奏衣「偽りの家族…私が昔、嫌っていたのにそれになっちゃった…」

智之「奏衣…たとえ、歩いて行った先が崖であっても一緒にいるよ」

奏衣「ありがとう…智之さん」

その時、奏衣が握っていた薩真の左手が微かに動く。

奏衣「薩真?」

智之「どうしたんだ?」

奏衣「今、薩真の手が動いたの」

智之は、奏衣から離れると薩真の傍に歩み寄る。

智之「薩真」

智之は、自分の左手を薩真の左頬に当てると智之の左手の甲に奏衣と同じ紋章が浮かび上がる。

薩真「ん…」

薩真は、ゆっくり目を開ける。

智之・奏衣『薩真!』

薩真「あれ…父さん…母さん…俺は…」

奏衣は、薩真を強く抱きしめる。

奏衣「薩真…」

薩真「い…痛いよ…母さん…」

奏衣「たとえ偽りであっても…薩真は、私達の息子だから…」

薩真「何の話…」

智之「薩真」

薩真「父さん…」

智之「何があったか覚えいるかい」

薩真「確か…生徒会室にいて…誰かと話していたら…急に眠気に襲われて…なんで、自分の家に…」

智之「賀雄くんが連れて帰って来てくれたんだ」

薩真「賀雄が…そう言えば、俺は、何日ぐらい寝ていたんだ」

智之「丸2日だ」

薩真「(あれで丸2日も寝ていたなんて…)」

薩真「それじゃ…学校は…」

智之「お父さんから事情を話して休学にして貰ったから心配は、いらないよ」

薩真「そうか…なぁ、父さん、母さん」

奏衣「なに、薩真」

薩真「俺に…妹がいたのって、本当?」

その詞に2人は、鳩が豆鉄砲を食った様な表情をする。

奏衣「薩真…まさか、記憶が…」

薩真「夢の中である人が教えてくれたんだ」

智之「ある人?」

薩真「うん。その人は、俺の過去のこと…小学生の時の記憶を知っていた」

奏衣「そう…」

薩真「その人は、守護聖人と言う人で妹が約束の地にいるって、教えてくれたんだ。父さん、本当なの…」

智之「………ああ、本当だよ、薩真」

薩真「一体何があったの…なんで、俺は、生きてるの」

智之「とある人体実験があってその実験に薩真と音羽が選ばれた。最初は、医療を発展させるための計画だった…でも、それは、嘘の計画で目的は、別にあった」

薩真「AdamとIb計画…」

智之「そうか、そこまで聞いているんだね…とても恐ろしい計画だった。しかし、計画は、失敗に終わったものの…幼い時の薩真は、今回の様に深い眠りに付いたまま動けなくなっていた…薩真の身体の中にある細胞が異常発達を起こし、このままだと身体の変化に耐えきれなくなり、やがて死に至ると判明したんだ」

薩真「そして、音羽がカプセルの中に入り、俺の身体の中で起こっている異常発達の抑止力となってくれた代わりにカプセルの中で眠り続けているって…」

智之「その通りだよ」

薩真「なんで、俺と妹が選ばれたの」

智之「適合血が他の人達と比べて高く、血の純度も高かったからだ」

薩真「父さん、妹を…音羽を助けるためにはどうすれば良い」

智之「音羽を助けるためには薩真が心覚醒(しんかくせい)になること」

薩真「心…覚醒…」

智之「闇覚醒のことは知っているね」

薩真「うん」

智之「聖典には別の世界では闇覚醒の先に行った者達がいて、心の中にいる闇の侵食に討ち勝った者がそれになれ、自然から新たな叡智(ちから)を手に入れられる」

薩真「音羽を助ける為にはその叡智(ちから)が必要なんだな」

智之「うん…でも…」

薩真「でも?」

奏衣「新たな叡智(ちから)にはそれに相当する犠牲が必要なの…」

智之「何が犠牲になるかは…それが起きてみないとわからないんだ」

薩真「それじゃ…もしかして…」

奏衣「薩真の大切なモノ…かもしれない…」

薩真「…………」

智之「薩真。どうするかは薩真自身が決めるんだ。このまま普通の人として学生生活を続けるのも良いんだ。お父さん達は、薩真は、普通の人間(ひと)として生きて欲しい」

薩真「…………」

智之「音羽のことはお父さんとお母さんに任せて良い」

薩真「少し…考えさせて欲しい」

智之「わかった。行こう、奏衣」

奏衣「ええ」

智之は、奏衣と一緒に薩真の部屋から出て行くと静かに扉を閉めるのだった。

薩真は、見慣れた天井をただ見つめていた。

薩真「…………俺は、何のために音羽に生かされたんだ…」

薩真は、自分の右手の甲を見るもそこには何も無かった。

薩真「そう言えば…俺と賀雄が学園に初登校した時…生徒会長が止めようとしていたあの大型の狼に似た様な生き物を止めて消えたら…生徒会長に愛されたから消えたのって…まさか…」

その時、扉からこんこんと音が聞こえて来る。

薩真「誰だ?」

扉からは懐かしい親友の声が聞こえてる。

賀雄「俺だ、薩真」

薩真「なんだ、賀雄か…開いているから入って来て良いぜ」

賀雄「おっ? そうか、なら遠慮なく…どりゃ!」

その直後、部屋の扉が壊れるぐらいの勢いで開く。

薩真「はぁ!?」

賀雄「入るぜー」

そこには両手にスーパー四季と描いたレジ袋を持った賀雄が立っていた。

薩真「入るぜーじゃねぇよ! どんな入り方してんだよ! 器物損害罪で訴えるぞ💢」

賀雄「そう、カッカすんなって」

薩真「あのな…一応、親がいる訳だし…」

賀雄「いや、さっき2人だけでどこかに出かけて行ったぜ」

薩真「なんで、そんなこと知ってるんだよ…」

賀雄「だって、俺がここに来る途中で出会ってさ。薩真のことを聞いたら部屋で寝ているって、聞いたんだ。そしたら、合鍵を貰ったと言うことだ」

薩真「(不用心過ぎ…なんで、そんな簡単に渡せるんだ…)」

賀雄「ほら、合鍵、返しておくよ」

賀雄は、机の上に袋を置くと薩真に向かって合鍵を軽く投げ渡す。

薩真は、その鍵を左手で受け止める。

薩真「それで? 何しに来たんだ」

賀雄「よっいしょっと…何って、決まってんじゃねぇか。プリントを届けに来たんだ、ほらよ」

賀雄は、袋の中から濡れたプリントを薩真に手渡す。

薩真「濡れているんだが…」

賀雄「飲み物と一緒に入れてたからな」

薩真「しかもこれ…宿題のプリントだし…」

賀雄「まぁ、そこら辺に置いておけば乾くさ。それよりさ、すげぇーの持って来たんだ」

薩真は、側に置いてあるコップに手を伸ばし、中身を飲み始める。

薩真「すげぇのって?(なんか、嫌な予感が…)」

賀雄が袋の中から取り出したのは何かの箱だった。

薩真「(ゲームソフトの箱…)」

賀雄「今日、Julyさんから出た新作で〜夏の想いは、優しい愛(あめ)に〜の発売日でさ。薩真、お前、こう言う系好きだろ?」

薩真「好きか嫌いかって言われたら…まぁ、嫌いじゃない」

賀雄「しかも今回のキャストと制作会社、それにシナリオを手掛けたのがさぁ!」

薩真「あーわかったわかった。そう言うことになると永遠と話し続けるからな…」

賀雄「それともこっちの◯リスソ◯トさんのエ◯カレ◯ヤーの方か…それとも、エ◯シュリーさんの姫◯りダン◯ョンか…それとも…」

賀雄がその箱を速攻で取り出して薩真に見せる。

薩真「ブハッ!? 何を出して来てんだよ!? てか、賀雄、お前まだ未成年だったはず…」

賀雄「薩真…世の中にはな…常識じゃ理解出来ないことが沢山あるんだよ」

薩真「どうでも良いが、法に触れないでくれよ…後々、ややこしいんだから」

賀雄「あっ、これ、ちなみに薩真の親父さんのコレクションだから」

薩真「あの…馬鹿親父ーーーーーーーーーー!!! てか、この作品…全年齢作品だよな…」

賀雄「大丈夫、ちゃんとモザイクかけてるから」

薩真「いや、名前でわかる奴がいると思うんだが…」

賀雄「で、薩真は、どれが良いんだ?」

薩真「いらねぇよ」

賀雄「ほらほら、どの子が良いんだ?」

薩真「要らないって言ってるだろ」

賀雄「そっか…なら、親父さんの隠し書籍庫から昔の薩真の女装写真を生徒会のみんなに…」

薩真「そんなことさせると思うか」

薩真の右手にはボウガンが握られ、銃口は、賀雄の方を向いていた。

賀雄「だって、薩真のノリが悪いからさ〜」

薩真「あのな…」

賀雄「じゃ、選んでくれるよな」

薩真「…………」

賀雄「なっなっ!」

薩真「あーわかったから顔を近付けるな…じゃあ、これ」

賀雄「ほ〜う、やっぱりそう言うのが好みなんだな」

薩真「うっ、うるさい…」

手元に残ったソフトは、袋の中に戻すのだった。

賀雄「それからな、薩真」

薩真「まだ、何があるのかよ…(早く帰れよ…)」

賀雄「これを見よ!」

賀雄が袋の中から取り出したのは透明な小袋で中には歪な形をしたクッキーが数枚入っていて、止め口の所には白いリボンが巻かれていた。

薩真「なんだ、それ?」

賀雄「さぁて、なんだろうな〜ほらよ」

賀雄は、その小袋を薩真に軽く投げ渡すと薩真は、優しく受け取り、中に入っている物を確認する。

薩真「んー…なんだ…歪な形をしているが…クッキー…みたいな得体の知れない食べ物だな」

その詞を聞いた賀雄は、クスクスと笑い始める。

薩真「なんだよ、その変な笑いは…」

賀雄「いや〜別に〜w」

薩真「気になるからちゃんと言えよ」

賀雄「えっ? 良いのか? 本当に? 後悔しないか?」

薩真「なんか怖くなって来た…」

賀雄「怖気付いたか?」

薩真「うるさいから早く言え」

賀雄「その前にそのクッキーを食べて感想を聞いてからだな」

薩真「変な奴…(まぁ、元々だがな)」

そう言うと薩真は、賀雄の言う通りに止め口に巻かれてある白いリボンを解き、封を切ると中から1枚のクッキーを手に取り、口の中に放り込む。

賀雄「どうだ?」

薩真「まだ噛んでねぇよ…ん」

ボリっ。

薩真「モグモグ…(別に不味くは、無いな…でも、少し焦げてるから苦味は、ある…これは…チョコか…)」

賀雄「どうなんだよ、薩真」

薩真「口に物を含みながら喋れるかって…まぁ、悪くないな。でも、焦げているから苦いし、作りが雑だな」

賀雄「なぁ〜るほどな〜」

薩真「何なんだよ」

賀雄「別に〜さて、目標は、達成したことだし、俺は、帰るわ。もう、元気そうだし、学校に来いよ」

薩真「ああ、わかった」

そして、賀雄が私物を持って薩真の部屋を出ようとした時だった。

賀雄「あっ、そうだ、言い忘れてた」

薩真「今度は、なんだ…宿題か? それとも、体操服か?」

賀雄「そのクッキー、生徒会長の手作りだった。それじゃな」

薩真「…………おい…ちょ…おま…」

賀雄「ちゃんと伝えておくから心配するなよ」

薩真「だぁーー! 賀雄! お前、絶対に言うなよ!」

賀雄「俺は、言わねぇよ。代わりに…ボイレコが言うから」

薩真「待て、賀雄!」

賀雄「あと、大人しくて胸が大きい女の子が好きだってこともな」

そう言うと賀雄は、そそくさに薩真の部屋から出て行き、走って逃げるのだった。

薩真「……………」

薩真は、布団の上に寝転び、見知れた天井を見ると袋の中からクッキーを1枚取り出し、口の中に放り込むのだった。

薩真「美味しいん…だけどな…」

薩真の左手には今でも白いリボンが握られていた。

翌日。

〜学園〜

学園の正門前にやって来た薩真は、気が重たかった。

薩真「…………」

薩真は、学園の正門を見ていた。

薩真「(何か…いる…)」

薩真の眼に映っていたのは間違いなく黒装束を纏った闇の従者が正門の支柱に体を預けて立っていた。

周りの生徒達には見えてないのかその闇の従者の前を何事もない様に歩いて行く。

薩真「(どうする…このまま行って良いのか…)」

薩真は、恐る恐る正門に近付いて行くも闇の従者は、動かずにいた。

その光景をある人物が見ていた。

そして、薩真が正門を通過しようとした時、闇の従者がいきなり刀を取り出し、薩真に向かって走って来る。

薩真「!!!」

闇の従者が薩真との距離を一気に縮めると薩真に向かって刀の先で突き刺そうとする。

薩真「(避けれない!)」

???「よっ、薩真」

薩真が声のした方を振り向くとそこには葵がいた。

薩真「(葵さん!?)」

葵「お前、何してんだ?」

薩真「何って、見たら…」

再び闇の従者が襲って来ていた方を向くとそこには誰もいなかった。

葵「見たら?」

薩真「あ、あれ…」

葵「おいおい、大丈夫かよ。病み上がりでまだ本調子じゃないんだな、きっと」

薩真「確かにいたんだ…」

葵「話は、聞いてる。放課後、生徒会室に集合な」

そう言うと葵は、薩真の肩を軽く叩き、学園の中に入って行くのだった。

薩真「幻…覚…」

葵「おーい、薩真〜置いて行くぞー」

薩真は、葵の所に向かうのだった。

その地面には真っ黒で赤い文字で何か文字が書かれた護符が落ちていたが、役目を終えたのか黒紫色の炎に包まれ、消滅するのだった。

〜教室〜

薩真は、教室の前で深呼吸をするとゆっくり扉を開ける。

そして、扉を開けるとそこには賀雄と…あの人がいた。

薩真「なっ…なんで…」

賀雄「おっ、来やがったな、この色男」

???「何よ、いたら悪い?」

そこにいたのは間違いなく、この学園の生徒達の憧れの的であり、最高位に立つ人、生徒会長の真江だった。

薩真「なんで、いきなり睨まれてんだよ…」

真江「悪かったわね。得体の知れない食べ物で。さらに、作りが雑で」

薩真「賀雄、お前…」

賀雄「だって、生徒会長さんからの頼みじゃ断れねぇだろ?」

薩真「だからと言って…」

真江は、2人が言い合っている中で薩真の鞄を見るとそこには白いリボンが巻き付けられているのを見つける。

それを見た真江は、少しだけ微笑んでいた。

そこに出席簿を持った轟がやって来る。

轟「ほほう、朝から賑やかだな」

賀雄「轟先公、おはようございますっ!」

轟「おっ! 良い挨拶だ」

真江「おはよう、轟さん」

轟「まさか、お嬢がこの学科に来られるとは…今度は、どんな風の吹きまわしで?」

真江「見ての通りよ。この学科だけまだ未経験だったから生徒会長として編入したの」

轟「それだけの理由で? あんなに嫌がっていたのに?」

真江「気が変わったの。所で、理事長には言ってないわよね?」

轟「ええ、勿論ですとも。でも、どうして理事長には…」

真江「色々あるのよ。それに…私は、あいつの人形じゃないから」

轟「深く考え過ぎなのでは」

真江「私が決めたことなの」

轟「左様ですか。なら、俺は、それに従うだけですが、授業に関しては、生徒会長と言えどしっかりと受けて頂きますので御覚悟ください」

真江「私を誰だと思ってるのかしら」

轟「高飛車がお似合いですな、相変わらず。席は、薩真の隣でよろしいですね」

真江「ええ」

薩真「げっ、マジかよ」

真江「本気よ。一緒に頑張りましょうね、薩真くん♪」

薩真「うっ…いきなり、腹の調子が…きっと、あのクッ…」

そう言いかけた時、真江から広辞苑が投げ付けられる。

薩真「グマブっ!」

真江「あんたは、黙ってなさい」

薩真「ど、どこから…ぐはっ…」

薩真は、そのまま後ろに倒れるのだった。

賀雄「広辞苑を片手で投げ付ける女の子、初めて見たぜ」

轟「とりあえず、全員生存ってことだな」

薩真「おーい、俺、こんな立ち位置?」

こうして、自然科に真江が編入し、騒がしくて物騒な教室になるのであった。

次回:第7話「大切な居場所」

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