彼女、お借りします。(サイバーネオン)第1話「接触」

〜彼女、お借りします。の世界〜

ゲートを抜けたジンと一輝は、ゆっくりとアスファルトの地面の上に降り立つ。

ジン「よっと…」

一輝「…………ジンさん」

ジン「ん〜やっぱりダメだな…闇の力が不安定だ。そっちは?」

一輝「僕の方は、問題無い…」

ジン「と言うことは…思いたくは無いが、少なからずこいつらの主が俺を拒絶している…と言う訳か…」

ジンは、右手の中で優しく包み込んでいた白い光の球体を見るために手を広げると2つの光の球体は、どこかに向かって飛んで行くのだった。

ジン「行け、2人とも、主人の所にな」

一輝「まぁ…あんなことしてたり…こんなこと書いてたりしてたらね…誰だって拒絶反応を起こすに決まってる…」

ジン「俺は、昔から誰からも嫌われ、誰からもその存在を拒否されて来たから、もう、何とも感じもしないさ。たとえ白金の騎士やみんなが俺のことを敵にしようとも俺は、この心で応えるだけさ」

一輝「その考えをどうにかしないと…と言いたいけど、ジンさんの過去が過去だからね…さてと…」

そう言うと一輝は、背中に隠していた薄型ノートパソコンを取り出すとパソコンを起動させる。

ジン「それで?これからどこに行くんだ?」

一輝「とりあえず…母上が先に手を回してくれてて母上の親衛隊達が僕達を迎えに来る手筈になってる…今からそのシグナルを発信する所…」

ジン「まさか、彩華と講談社に繋がりがあったなんてな」

一輝「正しくは、その後ろ…何だけどね…関係を持ってても何の不思議じゃないよ…それに僕の父上と母上は、かつて、声優として活躍していた…年代的には白金の騎士とほぼ同い…おかしいと感じた父上達は、業界の表舞台から離脱して、多田家に入り、業界の裏で活動を始め、10年と言う歳月を経て頭主になった…まぁ、その影の立役者は、爺やなんだけどね…ジブリに手塚プロダクションに円谷…東映、東宝等々…アニメ業界のみにならず特撮の方に関しての人脈も広かったからね…よし…今、シグナルを発信したから後は、待つだけだよ」

ジン「それを考えたらいかに多田家が強者かわかるよな」

一輝「僕達に関しての情報は、誰も知らない。知っていたとして話しても誰も信じないからね。まぁ、そのおかげで事を進ませて貰っているよ…」

ジン「上でペラペラ公開してるが、大丈夫か?」

一輝「別に…これぐらいなら公開した所で問題無いから書いて良い許可を出したんだよ、わかってる?」

ジン「それもそっか」

しばらく待っているとジンの背後から1つの人影が現れ、ジンの右肩に軽く手を置く。

???「仲村ジンだな、少し話がある」

ジン「ん?悪いな、人違いだ。他を当たってくれ。それとも…この俺とやるかっ!」

ジンが後ろを振り向くとそこには剣先と銃口をジンの顔に向けた2人の女性がいた。

ジン「おいおい、こんな平穏な街中で聖剣エクスカリバーとスミス&ウェッソンM19を構えてたら逮捕されるぞ?」

???「その心配は、ない」

???「あの3人のギガロマの力で他人には箒と玩具の銃に見せている」

ジン「用意周到なこって何より…」

???「ジン、劣ったか?」

ジン「いや、この世界と言うべきか、俺がこの世界を拒絶してるから本来の叡智(ちから)が使えなくなっているだけさ」

???「普通に言ってるが、かなり致命的じゃないのか?」

ジン「まぁな。てか、一輝が動かない時点で敵じゃないのはわかってるしな」

???「なるほど、そう言うことか」

???「なら、この銃爪を引いたらどうなる?」

ジン「まぁ、この距離なら避けることは不可能だから1発で終りだな」

一輝「あの…色々面倒だから…案内をして欲しい…」

???「わかった。付いて来てくれ」

???「穂香、まゆみ、瑠奈、ベースに集まってくれ」

そう言うと4人は、ある場所に向かって歩き始めるのだった。

歩き始めて数十分、とあるマンションに到着する。

ジン「へぇ〜良い所に住んでるんだな」

一輝「とりあえずわね…」

一緒にマンションの中に入ると剣を向けていた女性から2つの鍵を受け取る。

???「2人の部屋は、205で後から来る環境長と工場長は、206だ。色彩長は、私達と同部屋だ」

ジン「あいあい」

一輝「こっちの身支度が終わったら連絡を送るよ…」

???「ああ、なんで、この世界に来たのかの理由もちゃんと聞いておかないとな」

ジン「おぉ、おっかねぇの」

???「アーカイル家」

一輝「心配しないで2人とも…ジンさんの心に邪な気持ちは、無いから」

???「それなら良い」

そう言うとジンと一輝は、女性2人と別れて部屋に向かうのだった。

205と書かれた札が付いている扉を見つけると鍵を使って部屋の中に入る。

ジン「ほ〜う、良い部屋じゃないか。日当たりも良いし」

一輝「この世界に住むわけじゃないからね…」

ジン「わかってるさ。さて、冷蔵庫とか洋服棚とかを点検しないとな」

そう言うとジンは、そそくさに台所に向かうのだった。

その間、一輝は、テーブルの上にノートパソコンを置き、床に座ると作業を始める。

一輝「ネット環境良し…電波良し…通信環境良し…」

その時、台所からジンの声が聞こえてくる。

ジン「おーい、一輝!炊飯器があっても米がねぇぞー!」

一輝「あぁ…もう…煩い…すぐ近くにスーパーあるから買って来れば…」

ジン「金が無い」

一輝「(イラッ…)はい、これで気の済むまで買って来て…」

一輝は、胸ポケットからブラックカードを取り出すとテーブルの上に置く。

ジン「それじゃ、借りて行くぜ。あと、風呂場見たんだが、あんな高価なシャンプーなんて使えねぇよ」

一輝「僕が使うから置いといて…」

ジン「一輝、お前、あんなシャンプー使ってるのか…」

一輝「あーもう、早く行けって、闇の王💢」

ジン「そんじゃ、行ってくら〜」

そう言うとジンは、部屋から出て行くのだった。

一輝「はぁ…」

???「あはは、大変だね、情報長」

一輝「まぁ…いつものことだし…とりあえず、こっちの世界とそっちの世界を繋ぐために擬似の闇の楔を打ち込んだから干渉無しで来れるよ…」

???「それじゃ、そっちに行かせて貰うわよ」

一輝「彰…シグナル指数と電磁パルス指数、座標位置の最終確認を…あと、念のためにアレを持って来てくれる?」

彰「闇は、いないんだろ?それなのにか?」

一輝「念のためだよ…」

彰「わかった。鋼と美歌を先に安全に送り込む」

一輝「わかったよ…パルス信号を確認…シグナル良好…ゲート位置設定完了…良いよ」

彰「開放する」

そう言うと部屋の壁に紅黒色の魔法陣が出現するとそこからゲートが現れる。

しばらくするとゲートの中から私服姿の鋼(こう)と美歌が飛び出してくる。

鋼「よっと…」

美歌「よっと」

一輝「確認したよ」

彰「行くか。おい、後は、頼むぞ、多田家」

多田家の人「はっ!」

その詞から数十秒後、立方体の白い箱を持った私服姿の彰が現れるとゲートは、消滅する。

一輝「揃ったね…」

鋼「ここが彼女、お借りします。の世界だね」

美歌「私達は、そのままなのね」

一輝「とりあえずはね…」

彰「どこに気を遣ってるんだか…ほらよ」

彰は、持っていた白い箱を一輝に手渡す。

美歌「それ、なに?」

一輝「ちょっとね…」

彰「それで?ジンの奴は?」

一輝「煩いから買い物に行かせている…色彩長は、母上の親衛隊達がいる部屋に来てって言ってたよ」

美歌「りょーかい」

一輝「はい、これ…鋼と彰の部屋は、隣の206号室…」

鋼「今回は、流石に畑は、作れないかな」

彰「ここまで来て畑を作らなくて良いからな、鋼。それじゃ、行かせてもらう」

一輝「ジンさんが到着して用事を済ませ次第、ベースでの作戦会議だからジンさんが戻って来たら連絡するよ」

美歌「私達の靴は?出て来る所が部屋の中だから靴を履いて来なかったんだけど?」

一輝「靴棚にあるから取って行って…」

そう言うと鋼と美歌、彰の3人は、玄関に向かい靴棚から靴を取り出し、それぞれの場所に向かうのだった。

美歌「工場長、なんで、下駄なのよ」

彰「そこに下駄があったから」

鋼「似合ってるよ、工場長」

その頃、買い物に出ていたジンは、近所のスーパーに立ち寄り、10kgの米袋を3袋抱えてレジの列に並んでいた。

ジン「みんなが揃うんだからこれぐらいはいるよな」

そして、無事にブラックカードで買い物を済ませるとスーパーの外に出る。

ジン「さてと、基地に戻るか」

ジンが部屋に帰る途中の出来事だった。

対面の遠くの方から乗用車が走って来るのを確認したジンが壁側に寄ろうとした時、走って来る乗用車の前に1人の子供が飛び出す。

それを見たジンは、脳内で計算をする。

ジン「(きはじ(距速時)…ダメだ、危ない!)」

それを見たジンは、手に持っていた米袋を捨ててその子供に向かって走って行く。

ジンは、子供に手を伸ばし、子供を抱きかかえると地面を蹴り、そのまま安全側の壁の方に飛び込む。

その後ろを乗用車が何事も無かったかの様に通過して行く。

ジン「(ちっ…ブレーキも無しかよ…)」

ジンは、抱えている子供に声をかける。

ジン「大丈夫か?」

子供は、何が起きたかわからずに泣き始めてしまう。

ジン「お、おいおい…」

そこに母親らしき人が現れるとジンと子供の方に走って来る。

???「まさと!」

ジン「ん? この子は、あんたの子か」

その母親は、ジンからまさとと言う少年を奪い取るかの様にして自分の身体に引き寄せる。

母親「だから、勝手に行くなって言ったでしょうが!」

それを見たジンは、ゆっくり立ち上がる。

ジン「よっこいしょっと…おい、あんた、どんな子供の躾をしてるんだよ。もう、少しで…」

そう言いかけた時にその母親は、ジンを睨みつける。

ジン「?」

母親「私の子を誘拐しようとしたでしょ!」

ジン「はぁ!?何、言い出すんだ!?」

母親「誰か警察を呼んで!」

ジン「おいおい…」

その叫び声に周りにいた人達がざわつき始める。

ジン「(結局こうなるのかよ…腐った世の中だぜ…)」

ジンが右手の甲に宿る闇の王の刻印の叡智(ちから)を強制的に解き放とうとした時だった。

???「待ってください!」

声のした方を振り向くとそこに私服姿の1人の女性が立っていた。

ジン「(誰だ…)」

???「待ってください、その人は、車に轢かれそうになったその子を助けたんです」

母親「そんなの嘘よ!」

???「なら…あそこにある監視カメラで確認してみる…もし、違ったらどうなるか…お分かりですよね…」

さらに声のした方を見るとそこには白衣のポケットに手を突っ込んだ一輝が歩いて来ていた。

ジン「一輝」

一輝「やぁ…帰って来るのが遅いからPEACEを使って、追って来たよ…」

母親は、子供に話を聞くとあのお兄ちゃんが助けてくれたと証言した。

それを聞いた母親は、その場から逃げるかの様にそそくさに離れて行くのだった。

ジン「謝罪も無しかよ、腐ってやがる、やっぱり…」

一輝「止めておきなよ、ジンさん…たかがあんな洗脳された下等生物如きにジンさんの高度で神聖な叡智(ちから)を使うなんて馬鹿げてるから…」

ジン「それもそうだな。さてと…誰かは知らないが、援護してくれてありがとうな」

???「い、いえ、私は、ただ、見過ごせなかっただけだから…それじゃ!」

ジン「あっ!ちょっと待った、何かお礼をさけてくれないか」

???「お礼なんて良いですよ」

ジン「まぁ、そう言うなって。ちょっと待っててくれ…ええっと…おっ、あったあった」

そう言うとジンは、周りを見渡し、自動販売機を見つけると自販機に向かって歩いて行くのだった。

???「あ、あの…」

一輝「人の善意は…ちゃんと受け止めた方が良いと僕は、感じるよ…まぁ、世の中には善意を装ったヤバい奴らもいるけど…ジンさんのは歪み無き心からの善意だから」

???「心からの…善意…」

そう話をしているとジンが3つのペットボトルを左腕に抱えて帰って来る。

ジン「待たせたな、これを受け取ってくれ」

ジンは、女性に綾鷲と書いたペットボトルを手渡す。

???「あ、ありがとうございます」

ジン「一輝は、お汁粉で良いだろ?」

一輝「なんで、お汁粉選んだの…てか、ペットボトルタイプのお汁粉なんてある訳…」

ジン「それが、あるんだよなぁ〜この世界ならw」

一輝「…………」

ジン「俺は、ホッカリスエットと…そうだ、君の名前、聞いてなかったな」

???「え、ええっと…」

一輝「千鶴…水原千鶴さん…だね…ズズズっ…うわぁ…美味しくない訳じゃないからなんとも言い難いよ…」

その詞に身の危険を感じる女性だった。

一輝「心配しないで…レンタル彼女について知ってるだけだから…」

ジン「レンタル彼女?」

一輝「純粋なジンさんは、知らない方が良いよ…」

???「何のことかしら」

一輝「そう…まぁ、それで良いよ…昔、少し流行ったもんね…レンタル彼女…それを後押しするかの様に…」

???「失礼します」

そう言うと女性は、少し怒りながらその場から去って行くのだった。

ジン「お、おい、一輝」

一輝「まぁ、ファーコンは、これで良いよ…帰るよ、ジンさん」

ジン「あ、ああ」

そう言うとジンは、米袋達を持ち上げ、一輝の後に付いて行くのだった。

そして、無事に部屋に戻って来たジンと一輝は、風呂を済ませ、食事を済ませてみんなが待つベースに向かうのだった。

〜ベース〜

ベースにやって来るとみんなが揃っていた

ジン「みんな、揃ってるな」

美歌「ええ、アルトリアも唯も」

アルトリア「当然だな」

唯「それで?この世界にはどう言った要件だ?事と次第では…」

鋼「まぁまぁ、落ち着いて」

美歌「穂香とまゆみ、瑠奈の3人もありがとうね」

穂香「いえいえ」

まゆみ「彩華さんからの頼みなら」

瑠奈「断る理由がないから」

ジン「それじゃ、始めるか。まず、この世界について話そう。この世界、彼女、お借りします。と言う世界だ」

アルトリア「なんだ、まるで女の子を物扱いする卑劣極まりない題名は…そんなのが流行ってるのか?」

ジン「危うく流行りかけた…まぁ、みんながおかしいと声を上げてくれたおかげで防げたが、シリーズは、未だに続いてる」

唯「裏は?」

一輝「講談社…(超極秘)だよ」

ジン「ああ。だが、もう、流行ることはないだろう。あんなのを流行らせてたまるか、人権侵害野郎共め」

アルトリア「それを知っておきながらやると言うことは…ジンの護りたい者の案件か」

ジン「まぁな」

一輝「これが、キャスト一覧…目を通して…」

みんなは、一輝から1枚の紙を受け取ると目を通し始める。

まゆみ「なるほどね」

瑠奈「碧さんか」

唯「碧は、確かシンフォギアとSAOだったな。救う価値は、あるのか、ジン」

ジン「あるさ。いや、救わなければいけない。未来のためにも」

穂香「それは、良いんだけど…碧さんの気持ちは、考えてるの?」

彰「こいつが考えていると思うか?」

美歌「まぁ、あんなことしててね」

鋼「ジンさんに何か考えがあってやったと感じるよ。ねっ、ジンさん」

ジン「今は、話す気は、ない。碧は、まだ、偽りの優しい世界に囚われている…このままだとみんなに置いていかれる…そうなれば、なのはの二の舞になる…それだけは、避けなければならない」

アルトリア「何を見据えている、ジン。その眼に何を映している」

ジン「言ったはずだ、今は、話す気は、ないとな。これより、作戦会議を始める」

次回:彼女、お借りします。(サイバーネオン)編「突入」

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