生徒会の一族 第4話「特訓開始!」

生徒会の一族、前回までのあらすじ…。

部屋の中を見回していると声を掛けて来たのはアーカイル・レイ・ガーデンと言う男性でSATG(スタッグ)と言う組織のリーダーと名乗る。

ガーデン「颯爽と登場だな」

ガーデンと共に基地内を歩いて行き、ガーデンの部屋に入るとそこに飾られてあったのは薩真の家にも飾られてあった光と闇と言う題名の絵画だった。ガーデンの話によるとこの絵は、光の者と闇の者が対立して起きた戦争、第0次暗刻大戦の後に描かれた聖遺物だと言う。

薩真「つまり…同じ聖遺物が2つ存在する…調べないと…」

それ以外にも襲って来た人間(ひと)の形を象った何かや黒装束のこと、歪邪心空間のこと、プレイヤーのこと…そして、黒装束達の偵察をするため薩真をSATGのリーダーにしたいと言うガーデンの思いを告げられる。

薩真「いきなりあんなこと言われても…」

そして、ガーデンは、薩真の身の安全を確保するために独自で入手したロストテクノロジー、トライフォンを譲渡すると薩真を薩真の家に送り届けるのだった。

〜本編の始まり〜

学園までの遠い通学路を歩いていた薩真は、自分の身に起こっていた出来事を思い出していた。

薩真「(ここ数日間…色んなことがあり過ぎた…登校初日には自分の何倍もある大型の狼に乗った生徒会長と出会って…そこで言われたのは愛されたから消えたのよって…そして、そこから正門前で生徒会の人達と出会って、学園の中に入ったら真江の下僕…いや、親衛隊達に遭遇するも頭が痛くなる…そして、賀雄が交渉の末に俺達は、生徒会の1員になったのは良いものの…自然科と言う謎の学科に配属する事になった…そして、今日がその授業の日だ)」

薩真は、いつもの信号機の所で立ち往生させられる。

薩真「(そして、買い物に行った帰り道の途中でみぃ〜つけたと言う声が聞こえたと同時にカーブミラーが割れたと思ったら人間(ひと)らしき者が襲って来て…そこに現れたのは黒装束を身に纏った奴で襲って来るそいつらから護ってくれたのも束の間…いきなりなぐりかかれて…それを刀を持った赤い服を身に纏った少女が受け止めて…黒装束の奴と色々会話があって、俺の後ろから飛んで来た1発の弾丸が黒装束の奴の服を貫いて黒装束の奴は、逃げ去って…今度は、蒼い服を身に纏った少女が現れて歪邪心空間なんたらかんたら…)」

信号が青になると薩真は、交差する人混みを避けながらも色々思い出し、学園に向かって歩いて行く。

その後ろをこっそり付いて行く人影があった。

薩真「(その赤い服を身に纏った女の子から楠公園に行ってと言われて行ったら黒服の男に絡まれて…滑り台の着地場がガーって、開いて…地下基地にやって来て変なおっさんに連れられて…光と闇の絵について…そして、色んな事に関して…話をして…)」

薩真「って、ロクでも無い思い出ばっかりじゃねぇか!」

その大声に後ろから迫っていた人影が声をあげる。

???「ぬおっ!?」

薩真が後ろを振り返るとそこには親の顔より見た賀雄の姿があった。

薩真「何してんだよ」

賀雄「それは、こっちの台詞だっての。後ろから見ていたんだが、やたら真剣な顔してたからさ。何かあった?」

薩真「色々とな…なぁ、賀雄」

賀雄「ん?」

薩真「変なこと聞くんだけどさ…もし、アニメの様に並行世界と言うのが存在するとしたらどう思う?」

賀雄「並行世界? なんで、そんなことを? まぁ、もし、そんな世界があったら行ってみたいよな。本当にあったらな」

薩真「怖くないのか?」

賀雄「怖い? なんで?」

薩真「だって、何があるかわからないんだぞ。それに…」

賀雄「それに?」

薩真「生命(いのち)が無くなるかもしれないんだぞ…」

賀雄「んー…なぁ、薩真、これは、あくまでもその並行世界って言うのが本当にあったらの話だろ? その言い方だとまるで経験して来たかの様な言い方じゃないか」

薩真「っ! いや、その…あれだ、ちょっと深夜帯にやってたアニメを観てさ」

賀雄「あーなるほど、だからね。お前、昔から何か新しいこと、知らないことを見つける度にわかるまで考える癖があるもんな」

薩真「気になるだろ」

賀雄「お前は、気にし過ぎ。もうちょっと気楽に行こうぜ」

薩真「お前は、気楽過ぎ」

???「あら、仲良さそうじゃない」

2人が後ろを振り返るとそこにいたのは制服姿の真江だった。

賀雄「おっす〜生徒会長さん」

薩真「おはよう」

真江「それで? 私が渡した生徒会の黙示録、ちゃんと頭に叩き込んで来たわよね?」

賀雄「え〜あ〜…それは…」

真江「それは?」

賀雄「俺…国語苦手でさ…わ、わかんないっピ♪」

その詞と同時に真江から右脚の回し蹴りが炸裂すると賀雄の左頬を捉える。

賀雄「バグッモ!」

蹴られた賀雄は、横向きに回転しながら学園の正門を通って行くのだった。

その時、薩真は、あることを考えていた。

真江「まったく…それで、薩真くんは?」

薩真「えっ? あ、ああ、少しは…」

真江「何よ、その顔…」

薩真「いや…少し…」

真江「男の子なんだからうじうじしないではっきり言いなさいよ」

薩真「言わない方が…」

真江「良いから!」

薩真「それじゃ、遠慮無く…性格に似合わず意外と可愛らしい下着履いてるんだなって。ピンク色で白いフリルと橙色の小さいリボンが付いた…」

真江「////!!?」

その詞を聞いた真江は、顔を真っ赤にして薩真の腹部に思いっきり右足で蹴りを入れる。

薩真「ガモフっ!」

蹴られた薩真は、正門の柱に叩きつけられる。

真江「説明するな! この……変態っ!」

薩真「許可したの…そっちじゃん…ぐはっ…」

それを見ていた周りの他の生徒達は、現場を見ていたものの何事もなかったかの様に学園の中に入って行くのだった。

そして、事態を聞きつけた日向がやって来ると朝練をしていた運動部に手伝ってもらい薩真と賀雄を救出するのだった。

葵「おいおい、大丈夫か?」

薩真「あー…死ぬかと思った…てか、良く生きてたな、俺…」

葵「一体何があったんだ…」

賀雄「見ての通りだっての…痛ててて…首が取れるかと思った…」

薩真「賀雄の奴は、生徒会長に渡された生徒会の黙示録を読んで無かったと言うことで蹴り飛ばされて」

葵「あんたは?」

薩真「俺は…思ったことを言ったら蹴り飛ばされた…」

葵「何言ったの?」

薩真「賀雄を蹴り飛ばした時にあいつのスカートの中が丸見えだったから。それを説明したらこの有り様…」

葵「あーなるほど…可愛いの履いてただろ」

薩真「あ、ああ…」

賀雄「なに!? 薩真、俺が痛い目に遭ってる隣でそんなラッキースケベな!」

薩真「少し黙れ。生徒会長って、昔からあんなのだったのか」

葵「昔は、そうじゃなかったんだけどね…ある出来事がきっかけでな…」

賀雄「あること?」

葵「護れなかったんだ…先輩との大切な思い出を…表面上は、あんなのだけど…それは、自分がしっかりしなきゃいけないと護れないの現れ」

薩真「………」

葵「まぁ、色々難しいお年頃なんだ。所で、そろそろ行かないとまずいんじゃない?」

その時、学園の鐘が鳴り響く。

葵「ほら」

薩真「マジかよ…おい、行くぞ、賀雄」

賀雄「お、おい、待ってくれよ、薩真」

2人は、鞄を持ってあの教室に向かうのだった。

葵「粋の良い2人さんなことだな」

その様子を空高くから監視する1羽の鷹が弧を描いていた。

そして、あの教室にやって来ると2人は、席に座る。

賀雄「てか、思ったんだけどよ…」

薩真「ん?」

賀雄「この自然科の生徒って、俺達だけなのになんでこんなに沢山あるんだよ」

薩真「きっと、みんな、来てくれるって、期待したって、所だろ」

賀雄「経費の無駄遣いとはまさにこの事だな」

薩真「てか、チャイム鳴ったのに先生まだ来てないし」

???「だと、思ったか?」

声のした方を見ると教卓からひょっこりと顔を覗かせる人物がいた。

薩真「どっから出て来るんだよ」

???「お前達が来るのが遅いから教卓の中で別の仕事をしてたんだ」

賀雄「別の仕事って、良いのかよ、教師が掛け持ちして」

???「本当は、ダメだぜ。てか、現実では出来ないからこの世界でやる」

薩真「で? この前、欠席した理由は?」

???「なんだ、あんなことがあったのに覚えていたのか。記憶力が良い奴だな」

薩真「教師が授業サボるとかどうなんだ」

???「ほう、なかなか物を言う奴だ。さすがは、真江が認めた事だけはあるな」

賀雄「先公は、生徒会長と知り合いなのか?」

???「まぁな。てか、この学園で真江のことを知らない奴は、いないぐらいだ」

薩真「そんなに周知されてるのか」

???「なんだって、この学園の生徒会長になれるのはたった1人。その枠に入るだけでも相当辛い思いをしただろうしな」

薩真「それじゃ、先生は、日向さんのことも知ってるのか?」

???「ああ、真江の側近とも呼べる親友だ」

薩真「今日の朝に日向さんが真江さんは、先輩との大切な想い出を護れなかったと言ってたんですが、何かわかりますか?」

???「そうか…かなり個人的な話になるからあまり言えないが、真江が生徒会長になれたのはそれがあったから…かもしれない」

賀雄「なんか、すげぇ嫌な感じがする」

轟「まぁ、この話は、俺からはしないでおく。さっ、とっとと授業始めるぞ。自己紹介が遅れたな。俺の名前は、霧谷 轟(とどろき)だ。よろしくな」

薩真「轟って、体育会系によくいそうな名前だな」

轟「まぁ、間違っては無いな。漁業然り農業も体力が無いと出来ないからな」

薩真「なんで、漁業と農業の話が…」

轟「サバンナにいるライオンも日々己の力をつけるために仲間と戦ったり、自分の何倍ともでかい相手に立ち向かって行く。そして、大切な仲間達を守るために強くなる。そう、思わんかね」

薩真「まぁ…」

賀雄「その通りっすよ、轟先生!」

轟「どれだけ優しくてもどれだけ金持ちでも体力が無ければ意味がない」

薩真「でも、ある程度の知識も必要なんじゃないか?」

轟「確かにな。と言う訳で…君達2人にはこれより特訓を受けてもらう」

賀雄「特訓✨」

薩真「嫌な予感しかしない…」

轟「1限目は、体育だ!」

賀雄「おっしゃー!」

薩真「やっぱり…」

轟「着替え終わったらこの校舎の裏にある農園に来てくれ。それじゃな」

そう言うと轟は、教室から出て行くのだった。

賀雄「良い先公じゃねぇか。なっ、薩真」

薩真「俺は、最悪なんだが…」

2人は、体操服に着替えると第2校舎の裏手にある農園にやって来る。

賀雄「すげぇーマジで農園じゃねぇか」

薩真「(良いのかよ…勝手に農園なんか作って…)」

???「おや? そこにいるのは? 轟さんの生徒さん達かな」

2人が声のした方を向くとそこには麦わら帽子を被り、農園で作業している人が着る服装をした人が立っていた。

薩真「生徒…になるのか…所で、貴方は?」

翠「自分は、翠(すい)、この農園の管理人だよ」

賀雄「あれ? 轟先生は?」

翠「轟さんは、本校の4限目の準備のために違う所に行ったよ」

薩真「と言うことは、翠さんが講師って、ことで間違いかな」

翠「うん。君達は、農業をやったことは、ある?」

薩真「どんなのかは知ってますが、やったことはないです」

賀雄「婆ちゃん家で少し手伝ったぐらいだな」

翠「なるほど…それじゃ、自分の手伝いを頼みたいな」

薩真「何をするんですか?」

翠「今から大根を収穫するんだ」

賀雄「大根? それらしきのが見当たらないけど…」

翠「君達の真下だよ」

薩真「えっ?」

2人が下を見るとそこには地面から顔を出している大根がいた。

薩真「おっと…」

賀雄「やべっ…」

2人は、その場から移動する。

翠「それじゃ、早速、大根を収穫していくよ。はい、軍手とスコップ」

翠は、2人に軍手とスコップを手渡す。

薩真「まさか、これが…体育…」

翠「そうだよ。大根は、根菜だから周りをある程度掘って、優しく回しながら地面から引き抜いてね。今からお手本を見せるね」

そう言うと翠は、大根の側に座るとスコップで周りの土を掘って行く。

そして、地面を掘るとスコップを置いて大根の胴体を両手でしっかりと握り、優しく左右に揺らしながら引き抜いて行く。

地面から大根から出て来るとそこにはスーパーとかでそのまま置かれている大根の姿があった。

薩真「おお〜」

賀雄「立派な大根だな」

翠「さぁ、2人もお願いね。獲れた大根は、この籠の中に入れて行ってね」

薩真「わかりました」

賀雄「よしっ、やるぜ」

2人は、お手本と同じ様にスコップで周りの土を掘って行くが、スコップの先が大根に当たり、削れてしまう。

薩真「しまった…」

賀雄「おおお! みみずが出て来たー!」

2人は、苦戦しながらもようやく大根を地面から引き抜くも…賀雄のは途中で折れてしまい、薩真のはスコップの先に当たり過ぎて所々に小さな穴が空いていた。

賀雄「あっちゃ…」

薩真「傷だらけ…」

翠「あはは、最初は、そんなものだよ。さっ、あと97本だよ」

賀雄「きゅ、97本!?」

薩真「まさに体育だな…」

翠「大丈夫、自分も一緒にするから」

3人は、黙々と土の中から大根を引っこ抜いては、籠に入れて行く。

そして、無事に100本を籠に入れる頃には2人は、クタクタになり、地面に座り込んでいた。

薩真「はぁ…はぁ…」

賀雄「ひぇ〜…こんなに大変なのかよ…うちの婆ちゃんの凄さが身に染みやがる…」

翠「はい、2人とも、お疲れ様。次は、座学だからシャワーを浴びて教室に戻ってね」

賀雄「なに!?」

薩真「シャワー室があるのか」

翠「ここ辺りは、昔、プールの設備があったんだ。でも、とある奴らの苦情からプールを撤去しないといけなくなってね…」

薩真「その跡地を使って、農園にした…と言うことですね」

翠「うん。まぁ、半ば無理矢理的なこともあったけどね。理事長が裁判で勝ち取ったから」

賀雄「そのことって、生徒達には?」

翠「知られてない」

薩真「この学園って…」

翠「まぁ、色々とあるんだよ、世の中ってね。さぁ、シャワーを浴びて教室に戻ってね。シャワー室は、第2校舎の地下にあるよ。スコップと軍手は、そこに置いてて良いよ」

そう言うと翠は、大根が入った籠を背負うとそのままどこかに向かって歩いて行ってしまうのだった。

薩真「…………」

賀雄「行こうぜ、薩真」

薩真「あ、ああ…」

2人は、この時、この学園に隠れている秘密を1つ知るのだった。

そして、シャワー室にやって来るとそこにはシャンプーやボディーウォッシュ、タオルなどのアメニティが用意されていた。

シャワーを浴び終わった2人は、教室に戻ると制服姿に着替えて次の授業を待っていた。

そして、2限目のチャイムが鳴ると同時に教室の扉が開くとそこには髪は、荒れ果て、眼鏡は、斜めにずれ、服装は、乱れに乱れ、口に白い棒を咥えた人が入って来る。

その脇には1つのファイルが挟まれていた。

その人が教卓の前に立ち、ファイルを置いて開く。

???「はい…今から出席を取ります…東堂賀雄くん…」

賀雄「はい!」

???「神原薩真くん…」

薩真「はい」

???「以上、生徒2名生存を確認…あとは、お好きにどうぞ…」

そう言うとその人は、ファイルを持って教室から出て行くのだった。

薩真・賀雄『………………』

賀雄「はぁ?」

薩真「終わったな…」

賀雄「えぇ…マジかよ…とりあえず…俺、寝るわ」

そう言うと賀雄は、机の上に両足を乗せて寝る体勢に入るのだった。

薩真「お、おい……とりあえず…この学園について調べてみよう…」

そう言うと薩真は、鞄の中からタブレットを取り出すと色々調べ始めるのだった。

そして、2限目の終わりのチャイムが鳴ると薩真は、タブレットを鞄の中にしまい背伸びをする。

薩真「んー…ふぅ…」

隣にいる賀雄を見ると腕を組みながら鼾(いびき)をかいて寝ていた。

薩真「よくそんな体勢で寝れるよな…こいつ…おーい、賀雄、起きろ」

賀雄「ぐがぁーーーー」

薩真「こいつは、ダメだな…水でも飲みに行くか」

そう言うと薩真は、席を立ち、教室にから出ると廊下に設置されてあるウォータークーラーに向かうのだった。

薩真「(そう言えば…あの先生の名前…誰だったんだろう…)」

???「知りたい…」

薩真が後ろを振り返るとそこにはさっきの先生が立っていた。

薩真「うぉっ!? 先生、どうしてここに…」

???「どうしてって…僕も喉が渇いたから飲みに行く所だよ…」

薩真「そ、そうですね」

???「確か…薩真くん…だったね」

薩真「は、はい」

???「君は、この世界のERROR(エラー)を見つけたかい」

薩真「何のことですか…」

???「この世界に隠された秘密…そして、この学園の秘密…君の目に映る世界は、本物かな」

薩真「…………」

学「僕の名前は、佐江川 学(なまぶ)…」

薩真「学さんですね。でも、どうして俺にだけ名前を…」

学「さぁね…」

2人は、ウォータークーラーの所にやって来ると水を飲む。

薩真「ふぅ…」

学「はい、これ…」

学は、薩真に二つ折りにしたある1枚の紙を手渡す。

薩真「これは?」

学「これを持って夜の生徒会室に来てだって…」

そう言うと学は、どこかに向かって歩いて行くのだった。

その紙を財布の中に入れると教室に戻るのだった。

教室に戻るとまだ寝ている賀雄をさすがに起こす。

そして、3限目、4限目が終わると昼休みに入る。

賀雄「んーやっと昼休みだぜ。食堂、行こうぜ」

薩真「そうだな」

そして、2人は、食堂に向かうと食堂の入り口に人集りが出来ていた。

薩真「ん?」

賀雄「なんだ?」

2人がその先を見るとそこにいたのは葵と3人の男子生徒だった。

賀雄「お、おい、あれって…」

薩真「葵さんだ」

葵「あんた達、このあたしが誰か知ってのことよね?」

男子生徒A「知るかよ」

男子生徒B「女だからって、容赦はしねぇぜ」

葵「上等じゃない」

男子生徒C「おりゃ!」

1人の男子生徒が葵に殴りかかるも葵は、軽く避けてその生徒の足を払うとその男子生徒は、食堂の机と椅子に顔を突っ込むのだった。

賀雄「行くぜ、薩真」

薩真「あ、ああ」

賀雄と薩真の2人は、人混みの中をかき分けて葵の所に向かう。

男子生徒B「この野郎」

葵「かかって来な」

男子生徒B「舐めんなよ、この女!」

そう言って葵に殴り掛かろうとした時、横から賀雄がその男子生徒の顔を思いっきり殴り飛ばす。

賀雄「おりゃー!」

薩真は、葵の所に駆け寄る。

薩真「葵さん」

葵「あんたらは…」

賀雄「おいおい、男3人がかりで女の子虐めて楽しいかよ、卑怯もん共」

男子生徒A「なんだ、てめぇは」

賀雄「俺か? なら、教えてやるよ…この学園のアイドル、東堂賀雄様ってのは俺のことよ!」

その一言で群衆のみんながざわめき始める。

葵「なぁ、自分で自分のことを様付けしてる奴って痛いよな」

薩真「気にしないでやってくれ。あいつは、昔からあんなのだから」

葵「お前、なんであんな奴と友達になったんだ」

薩真「俺が知りたいぐらいだよ」

2人がそう話していると賀雄は、その男子生徒を背負い投げで倒すのだった。

その光景を見ていた群衆からは賀雄コールが鳴り響くと賀雄は、観客達に手を振る。

賀雄「ありがとう〜諸君〜」

そこに騒ぎを聞いた先生達がやって来る。

先生A「何をしてるんだ!」

その声を聞いた他の生徒達が道を開けると先生達は、賀雄達の所にやって来る。

先生B「これは…」

先生C「一体何があったの」

賀雄「これは…」

葵「この人がやりました」

賀雄「うおおおおい! 仲間を売るとか!」

先生A「君、ちょっと職員室に…」

賀雄「捕まってたまるかよ」

賀雄は、人混みをかき分けて食堂から飛び出して行くのだった。

先生B「あっ! こら! 待ちなさい!」

2人の先生が賀雄の後を追いかけて行くのだった。

残った先生が薩真と葵の所にやって来る。

先生C「それで? この騒動の発端は?」

葵「こいつらがみんながちゃんと並んでいた列に割り込んで来て、それを注意したあの子に詰め寄ったからあたしが割って入った」

葵の視線の先にいたのは大人しそうな女子生徒がその友達に保護されていた。

先生C「なるほどね」

薩真「それを見た俺と賀雄…さっき逃げた奴です。が入って暴れたという事です。もし、葵に罪を問わせるなら俺と賀雄が負いますから許してあげて貰えないでしょうか」

先生C「ふぅ〜ん。事情は、わかったわ。それで、2人って、彼氏彼女みたいな関係かしら?」

薩真「えっ!?ち、違います。俺達は、生徒会で…」

先生C「そう、貴方達、生徒会だったのね。この事は、秘密にしておいてあげる」

葵「別に秘密にすることじゃない。あたし達は、正当な理由でやっただけのこと」

先生C「まぁね。でも、本来なら職員室に連れて行くのが正当なんだけど?」

薩真「ありがとうございます、先生」

渚「素直でよろし。私の名前は、宮風 渚よ。よろしく。それじゃ、2人共、お幸せにね」

渚は、そのまま食堂を後にするのだった。

薩真「不思議な人だったな、葵さん」

薩真が葵の顔を見るとそこには真剣な顔をして何か考えている葵がいた。

葵「(似てる…あの人に…でも…)」

薩真「葵さん?」

葵「えっ? あ、ああ」

薩真「どうかしたのか?」

葵「いや、なんでもない。さてと、腹も空いた訳だし、なんか喰って行こうぜ」

薩真「そうだな」

そして、2人は、食券を買って料理を注文する。

薩真は、秋刀魚定食で葵は、豚の生姜焼きおろし定食を隣同士座って食べるのだった。

昼休みが終わるとそれぞれの教室に戻り、午後の授業が終わると2人は、生徒会室に足を運ぶのだった。

扉を開けるとそこにいたのは真江と葵だった。

賀雄「おっすーお2人さん」

真江「あら、賀雄くん、生きてたのね」

賀雄「生きてるわ! 勝手に殺さんといてw」

真江「話は、葵から聞いたわ。悪役を買ってもらってありがとう」

賀雄「なぁ〜に、こんなのはお手のもんさ」

真江「薩真くんも葵をかばってくれてありがとう」

薩真「と言ってもほとんど何もしてないからな」

真江「それじゃ、早速だけど2人には強化特訓を受けてもらうわ」

賀雄「はぁ?」

薩真「強化…特訓…名前からして絶対ヤバい奴だ」

真江「知性も確かに大切よ。でも、身体がしっかりしてないとね。と言う訳で学園の屋上に行きなさい」

薩真「ちなみに拒否権は?」

真江「あると思う?」

賀雄「あっ、いっけねぇ〜今日、バイトの奴らと遊びに行く約束してんだったぜ。それじゃ!」

真江「逃げたら…わかってるわよね?」

賀雄「逃げではない。戦略的撤退…」

真江「それじゃ、今日の農園での出来事をレポート用紙100枚書かされるか訓練に出るか選ばせてあげる」

賀雄「はい、特訓に行きます」

真江「よろしい。それじゃ、行ってらっしゃい」

2人は、鞄を置いて屋上に向かうのだった。

〜屋上〜

屋上にやって来た2人を待っていたのは弓道着に身を包み、正座して待っていた桜華の姿があった。

薩真「桜華先輩」

桜華「来たわね」

賀雄「弓道着なんか着て…もしかして、コス…」

桜華「それ以上言ったらどうなるか…貴方にならわかると思うわ」

賀雄「はい、すいませんでしたー」

桜華「まったく…だから、男の人って嫌いなのよ…」

薩真「とりあえず、真江さんから特訓のためにここに来る様に言われたんですが」

桜華「ええ、それで間違いないわ」

桜華は、ある場所に向かって歩き始めるとその先にあったのは2つの弓矢だった。

その2つを手に取ると薩真と賀雄の所にやって来る。

桜華「さぁ、これを持って」

薩真と賀雄は、桜華から弓矢を手にした瞬間だった。

2人の身体が地面に吸い寄せられる様に崩れ落ちる。

薩真「なっ!?」

賀雄「なんじゃ、こりゃ!?」

桜華「それが特訓の内容よ」

薩真「こ、これが…特訓…」

賀雄「つまり…持ち上げろってことかい…」

桜華「ええ、2人にはそれを持ち上げて自由に使いこなせるまで毎日ここに来て貰うから」

薩真「ま…マジかよ…」

賀雄「うおぉーーーー!」

賀雄が意気込んで両手で弓を掴むと地面から少しだけ持ち上がる。

桜華「貴方、なかなかやるわね。それじゃ、特訓開始!」

そして、夕日が沈む頃に特訓が終わると2人は、ヘトヘトになっていた。

賀雄「ぜーぜー…」

薩真「はぁ…はぁ…」

桜華「今日は、ここまでね。明日の放課後、生徒会室に来て」

そう言うと桜華は、2人が持ち上げられなかった弓矢を何事も無く持ち上げると屋上から校内へと入って行くのだった。

2人は、大の字になり仰向けになってコンクリートの地面に寝転ぶ。

薩真「なぁ…賀雄…」

賀雄「な…なんだよ…」

薩真「お前…あの時…どこ行くつもりだったんだ…」

賀雄「まぁ…なんだ…ちょっとな…」

薩真「…………」

賀雄「星が…」

薩真「えっ?」

賀雄「星が綺麗だなって、思ってさ」

薩真が正面を見るとそこには幾千の星達が輝いていた。

薩真「そう…だな」

賀雄「なぁ、薩真、お前、この前、俺にさ…もし、並行世界があったらって言ってたよな」

薩真「ああ」

賀雄「あったら行ってみたいぜ。そこに俺達より強い奴がいるんだと思うとさ。ワクワクするじゃねぇか」

薩真「本当に気楽だな」

賀雄「それが俺と言う1人の人間の個性さ」

薩真「そうだな。あっ!」

賀雄「どうした?」

薩真「まな…あの2限目の先生に生徒会室に行く様に言われてたの忘れてた」

賀雄「無視しちゃえば?」

薩真「そうは、いかないだろ…よっと…」

薩真は、地面から立ち上がると服に付いている砂や埃を落とし生徒会室に向かうのだった。

〜夜の生徒会室〜

薩真が生徒会室にやって来るも灯りは、点いてなかった。

薩真「あれ? 誰もいないのか…」

薩真が生徒会室の扉を開けようとした時、扉は、固く閉ざされていた。

薩真「鍵が掛かってる…」

扉の傍には薩真と賀雄の鞄が置かれてあった。

薩真が鞄に手を伸ばした瞬間、さっきまで閉まっていた生徒会室の扉がいきなり開く。

薩真「!!!」

薩真は、中から出て来た手に腕を掴まれるとそのまま真っ暗な生徒会室へ引き摺り込まれて行くのだった。

次回:第5話「歪邪心空間」

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