![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75029056/rectangle_large_type_2_3f96e2a25e9ed7a0a545ef2bf19b894f.png?width=1200)
AIファサード設計、建築家とは、DIY可賃貸物件検索の話(コンワダさん29週目)
こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。今週も社内で話題になった事例からいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら。
事例1:大林組×SRIの「AiCorb®」がファサードデザイン検討AIを発表
―――概要
株式会社大林組がシリコンバレーのSRI(※)と共同で、スケッチや3Dモデルから様々なファサードデザインを提案できるAI技術「AiCorb(アイコルブ)」を開発しました。顧客からの要望の聞き取りやイメージすり合わせの手間と時間が大幅に削減され、設計初期の迅速な合意形成に有用とのことです。
![](https://assets.st-note.com/img/1648213950853-tDKN0ilGoR.png?width=1200)
(出典:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html)
設計用プラットフォームHypar(※)と連携することで、生成されたファサードデザインは必要なパラメータを推定して3Dモデルが作成されます。ファサードとボリュームを兼ね備えた3Dモデルを顧客に提示可能で、理解を高め、議論、合意形成を更に効率化します。
![](https://assets.st-note.com/img/1648213990669-FYbK2p9xIX.png?width=1200)
(出典:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html)
![](https://assets.st-note.com/img/1648214284683-dkSXNr8ixx.png?width=1200)
(出典:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html)
Hyparは、住所や平面外形などの基本情報に加え、建物高さや階高などのキーとなるいくつかのパラメータから、建設予定地の周辺環境を考慮した3次元的なデザインを生成、検討できるプラットフォームです。今回、日本市場への導入を目指し、大林組が手掛ける東京都の中小規模物件を対象に機能の検証を行い、いくつかの追加実装をしながら実用性を確認しています。
※
SRI
SRI International、世界で最も大きな非営利独立研究機関の1つ。スタンフォード大学発だが現在は完全に大学から独立。大林組と戦略的パートナーシップを締結している。
Hypar
Hypar社、Autodeskから独立したメンバーによって2018年に創業。設計者向けプラットフォームHyparを開発している。
―――この事例について
AIが瞬時にファサードを何案も出してくれて、その中から良いものを選択して改変するだけで済むようになるとしたら、当該業務に従事している設計者からしたらとてつもない効率化です。頭を捻って0から1を生み出さなくても、それ以外の業務にもっと注力することができるのです。おそらくいくつもの技術的なハードルを乗り越えた画期的な開発なのでしょう。
一方で、すごいニュースだからこそ内側でどんなことができているのかが気になってしまいます。例えば、出力されるファサードがテクニカルに成立するのか、など細かいことです。あくまで初期検討段階のたたきなのでそこまでの堅実性は不要でしょうが、AIが自動生成したファサードが技術、法規などの問題で実現不可能だったら、なんだか少しもったいないですよね。すごいかっこいいと思った車のコンセプトカーがそのまま作られるのを見たことがないような感覚です。あくまで初期検討のツールということですが、ここまでのモノを見せられると、人間欲張りなのでついつい期待が膨らんでしまいます。出力される3Dモデルを見ると、マッシブなボリュームの表面にファサードの画像を貼り付けたような印象ですが、例えばファサードを構成する部材なども3Dモデルで生成されるようになるとか。どんどん進化しそうで、続報・詳報に期待したいと思います。
最後に考えたいのは、こうしたAIによる事例は、建築家のあり方を変えたり、建築家とはなんぞやといった議論の契機になるだろうということです。建築家は複雑な条件を解いて形を提案することだけでなく、その形の意味を伝えることも担ってきたと理解しています。そのためにはストーリーが成立していることが重要でしょう。あるいはかつてルイス・サリヴァンが「Form ever follows function.」と述べたように、建築の設計は形の機能性が問われる行いでもあります。時代とともに建築の様式、構法が大きく変化していますので過去を引っ張り出すことが適当なのかというのも一考すべきことですが。果たしてイメージからファサードを生成する便利なAIはこれに代わることができるのでしょうか。機械任せではなく人がやるうべきことだ!なんて言いたいのではありません。むしろこれまでの作家論または作品論的な言説とは異なる、AIを含めたあらゆる道具を複合的に使いこなすPM的建築家像又は設計論が主流になっていく感覚を覚えました。文章を書いていて自分自身が何を考えたいのか、何を明らかにしたいのかがふわっとしてきたので今回はここまで。ちょっとお勉強必要だなと思った筆者でした。
事例2:DIYP ”改装可能な賃貸物件 検索サイト”
―――概要
改装可能な物件だけを掲載している、賃貸物件情報サイトです。原状回復については不要のものから、指定箇所だけ原状回復するものまで条件は物件に拠るようです。
本サービスは新しいものではありません。運営している株式会社PAXは、この他にもクリエイティブ層向けオフィス物件のみを集めたサイト「OFFICES TOKYO」や、ショップに適した物件のみを集めた「SHOPS TOKYO」などいくつかのサービスを展開しています。InstagramなどのSNSでも物件発信をしているので、こういうのがお好きな方は要チェックです。
![](https://assets.st-note.com/img/1648208684376-wbSxij5Yhr.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1648209333949-Voxp9Gft7K.png?width=1200)
ショップを開きたい願望は有りませんが、ついつい見てしまいます
(出典:http://shopstokyo.jp/)
―――この事例について
DIYをしたくても、普通の賃貸物件サイトで検索すると、基本的には「原状回復」が当たり前の条件になっていますので、適した物件を探し当てるのは大変です。本事例では数多ある賃貸物件が「改装可能」というファクタでフィルタリングされています。以前コンワダさんで紹介した「チョク買い」は、仲介手数料無料の物件のみが掲載されているサイトでした。一般的なポータルサイトで、用意された一般的な評価項目を選んでも物件を絞り切ることは難しいです。こうしたサービスのように、とある条件下の物件だけを集約する事には確かなニーズが有り、サービスの価値も高そうです。なお、DIY型賃貸借については、国土交通省がガイドブックを策定していますので、気になる方はこちらもぜひご覧ください。ちょっと引っ越ししたくなった筆者でした。
まとめ
先週は初めて私ではなく、当社メンバーに本連載を執筆してもらいました。自分がこれまで迷走しながらも形作ってきたコンワダさんという人格を、他人が意識的に使いこなそうとしている感じが伝わって、なんだかくすぐったい感じがしました。建築家が、初めて雇った部下が担当した作品を、自身の名を冠した事務所名でパブリッシュするときはこんな感覚なのかもしれない、と想像したりしました。事例1で建築家とはなんぞやといった話を偉そうに展開しましたが、当社は設計事務所でもないし私は建築家でも有りませんので想像です。本noteで初めてarchiroidを知ってくださった方は、「え?あんなに語っていたのに?」と驚かれるかもしれません。すみません。是非これまでの他のnoteをお読みいただくか、archiroid.comにアクセスしてみてください。
最後に「スキ♡」を押していただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。
「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。
社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。
メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。
【バックナンバー】はこちら