【中国アクション】武侠小説や武術映画・ドラマに登場する人気の主人公まとめ
中国文化好きの方であれば、中国系の映画やドラマを視聴したことがある方がほとんどではないでしょうか。その中でも、特に印象深いのが「武侠モノ」であり、中国人の間でも非常に根強いファンが存在するジャンルです。
中国の武侠ドラマと言えば、勧善懲悪が基本的なストーリー・フォーマットであるものの、同時に時代物であるがゆえに、ダイナミックな世界観を盛り込んでいることも特徴の1つでしょう。今回は、中国の武侠小説を基にした映画やドラマに出てくる大変メジャーな主人公やヒーローをチェックしていきます。
中国で安定した人気を誇る伝統的武術ヒーロー
黄飞鸿(huángfēihóng)
中国で最も人気の高い武術ヒーロー、黄飛鴻は清代、広東に実在した武術家で、医師としても活躍していました。日本人は名前を聞いたことのある方もかなり多いはずで、それはかつて70年代にジャッキー・チェン(成龙(chénglóng))主演の香港映画『酔拳』で彼が演じたキャラクターだったからです。
しかし、ジャッキー・チェンの演じた黄飛鴻が役名だけのほぼフィクションであったのに対し、80年代後半からジェット・リー(李连杰(lǐliánjié))が演じた映画シリーズは、辮髪で比較的史実に近いキャラクターでした。そして、現在も続く、黄飛鴻の爆発的人気はジェット・リーによるアクションの影響が非常に強いと言われています。
また、黄飛鴻に関する作品には、父親で同じく有名な武術家である黄麒英(huángqíyīng)も必ず登場することから、武侠モノの作品の中ではかなりスケールが大きくなる傾向にあるでしょう。
苏乞儿(sūqǐer)
上述の映画『酔拳』にも登場した人気のキャラクターが、乞食の蘇。日本では一般的に蘇花子(そかし)と呼ばれる乞食の酔拳(醉拳(zuìquán))の達人として有名ですが、本名を苏灿(sūcàn)と呼び、黄飛鴻に自らの酔拳を実際に伝授したと伝えられています。
映画『酔拳』でのイメージが強すぎるのか、彼が清代に実在した人物だということは、日本人に意外に知られておりませんが、黄飛鴻の父親である旧知の黄麒英と並んで『広東十虎』に挙げられるほど、武術に大変優れていたのです。
张三丰(zhāngsānfēng)
中国では一般的に宋代から明代にかけ、武当派と呼ばれる武術派を立ち上げ、太極拳(太极拳(tàijíquán))を編みだしたことで知られている張三豊は、かつて少林寺でさまざまな少林拳を会得した人物と伝えられています。太極拳は、少林拳がルーツと言われることも多いのは、彼のその生きざまにあることが大きいでしょう。
また、彼については、さまざまな文献において、長寿で伝説的な存在として描かれてはいるものの、彼が本当に実在したのかについては議論も大変多いことから、非常に謎めいた人物としても知られています。それ故に、彼を題材にしたメディアは中国でも高い人気を誇るのです。
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三德和尚(sāndéhéshàng)
さて、70年代にリュー・チャーフィー(刘家辉(liújiāhuī))主演の『少林寺三十六坊』という香港映画がヒットしたことで、三徳、本名を刘裕德(liúyùdé)という修行僧が日本公開以降に徐々に知られるようになりました。
彼は、清代に広東に実在した人物ですが、出家して武術を身に着けたことは疑う余地はないものの、映画作品のように少林寺で修行したことについては疑問視されることも多いようです。また、この映画が公開される前にも、他の作品に題材として扱われたことはあったようですが、黄飛鴻などと比べると注目度はそれほど高くなかったと言えるでしょう。
それでも、現在では、この映画のアクション作品としての完成度が国内外で大きく評価された経緯もあり、少林モノのヒーローとしては高い人気を維持しています。
洪熙官(hóngxīguān)
少林拳をルーツとする洪拳を創始した、洪熙官は清代の武術家で広東省生まれ。彼は、少林寺で少林拳を修行僧としてではなく、俗家弟子として学んだ代表的な人物であり、これまで数々のアクションスターに映画やドラマで演じられてきたカリスマ的な武術ヒーローでもあります。
メディア作品では華やかな黄飛鴻と比較すると、派手さのない一匹狼的な感じで描かれることもあるでしょう。しかし、黄飛鴻と同じように中国南部武術派の代表的存在であることから、その武術レベルの向上に大いに貢献したのは間違いありません。
方世玉(fāngshìyù)
これまで紹介したのは、実在もしくは実在の可能性のある武術ヒーローでしたが、この方世玉は、完全に架空の人物です。しかし、映画などでは彼をタイトルの一部にした作品も数多く、見るものが本当にこの世にいたのではないかと錯覚するような高い人気があります。
彼は少林武術を学んだ設定ですが、一般的な少林寺として知られる嵩山少林寺ではなく、かつて実在した福建の莆田少林寺となっています。フィクション・キャラクターでありながら、彼は広東の出身とされ、庶民を守る強い存在として描かれているのです。
梁山伯(liángshānbó)
中国の有名な伝記小説『水滸伝(水浒传(shuǐhǔzhuàn))』に登場する沼の名称、それが梁山泊(りょうざんぱく)です。
一見すると人の名前のように見えますが列記とした地名であり、百八星と称される力強い義賊(庶民の味方)の本拠地として描かれていることから、ある意味、彼らヒーロー全体の代名詞として認識されています。
この水滸伝には、数あるエピソードの中に武術大会に関するものがあり、この部分をメインにストーリーが展開される映画作品もあるほどで、まさに猛者の多い梁山泊に相応しいものと言えるでしょう。また、梁山泊の中でも、主人公である宋江(sòngjiāng)はもちろん、燕青(yànqīng)、武松(wǔsōng)は特に有名です。
ちなみに、沼としての梁山泊は山東省済寧市梁山県にかつて実在していたとされ、歴史的にも非常にミステリアスな存在ではないでしょうか。
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中国武術ヒーローに関するマメ知識
中国武術ヒーローに関する最近の傾向
中国の武術ヒーローの多くは、流れ者としての性格がやはり強く、これは日本の時代劇とも大いに共通する部分です。黄飛鴻のように中医として定職についている者もいますが、多くは世直しを本分とする直情的な武侠、つまりアウトロー的な存在になります。
ただ、最近では武侠モノと言うダイレクトなジャンルではなくとも、武術はできないけれど人徳者を主人公に据えたお話の中に、武術のできる重要キャラクターを加えてストーリーを展開させるケースも多くなっています。
かつては男性の主人公は、最強の存在であるという暗黙の了解があったようですが、今の時代を反映するかのように比較的穏やかなヒーロー像も人気があるのです。特に漫画作品から実写化されることも多い現状の流れからすれば、今後はこのようなヒーローがさらに多くなってくることでしょう。
武侠ドラマに出てくる頻出キーワード
武林盟主(wǔlínméngzhǔ):武術界でナンバー1と認められている武術家
一代宗师(yīdàizōngshī):自らの武術を門派として創始し、世の中に広めた武術家
絕世武功(juéshìwǔgōng):この世のものとは思えないほどに強力な武術
无影脚(wúyǐngjiǎo):空中からの素早いキック
● 足を派手に影が見えなくなるほど激しく動かすことから、このような名称があります。作品によっては、手や拳を激しく動かす型が登場することもあり、この場合は无影手(wúyǐngshǒu)と表現されることもあるでしょう。
走火入魔(zǒuhuǒrùmó):何かに取りつかれたように夢中になること
● この表現は、武侠作品では出てこないほうが珍しいフレーズであり、大抵は魔術や気功術などを使う格闘シーンなどで、体にダメージを受けた際に精神が乱れたり、健康が悪化したりする状況で使われます。
正人君子(zhèngrénjūnzǐ):品行方正のある人間、人格者
● 男性キャラクターを例える際にもよく用いられます。
攜手天涯(xiéshǒutiānyá):生涯に渡り手を取り合って生きる
● 主人公であるヒーローとヒロインが最終的に結ばれる際に用いられることも多いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?中国の武侠モノは主人公が男性の作品が多いものの、美人だけれど非常に男勝りな女武侠が主人公となる作品も存在します。最近は、女優も普通にアクションが出来る人も増えてきたことから、ワイヤーワークを使うとこれまで以上に臨場感のある場面が撮影できるようになっているのです。
現在、中国でも今風の武侠ヒーローはドラマでも数多く出てきてはいますが、やはり実在の武術家を題材にしたものは別格であり、今後も時代を超えて支持されていくことでしょう。