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【キルギスタン】石人(ブラナの塔)
場所:トクマク近郊、チュイ州
時代:6~9世紀ごろ
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キルギスタンで最も有名な遺跡のひとつ、ブラナの塔の敷地内に石人の野外博物館がある。その他岩絵や巨大な石臼も並べられている。ブラナの塔そのものは、11世紀ごろに建造されたカラハン朝の遺跡だが、石人はそれより古い6世紀に遡る遊牧民族突厥のものである。これらはもとからこの地に立てられていたものではなく、チュイ渓谷(イシク・クル湖西部)各地から収集されてきたもので、残念ながらほとんどの石人が、もとはどこに立っていたのかわからなくなっている。
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石人とは
古代の人々が何らかの記念に、人をかたどった石の像を立ててきたものを石人と呼んでいるが、その分布範囲はフランス、ドイツなどの西ヨーロッパから中国、韓国などの東アジアまで広範囲にわたっている。日本では古代の人をかたどった像として、縄文時代の土偶や古墳時代の埴輪が知られているが、福岡県八女郡にある5世紀ごろの古墳には、石人が立てられたものがある。
石人の中でも特に遊牧民によるものとしては、ウクライナや南ロシアで紀元前7~3世紀ごろに活躍したスキタイやサルマタイ、6~8世紀半ばにモンゴルから西トルキスタンに建国した突厥、10~13世紀ごろ、やはりウクライナから南ロシアの草原地帯で遊牧生活を送っていたキプチャク(ポロヴェツまたはクマン)、そして13~14世紀ごろのモンゴルによるものが数もたくさん発見されている。しかし近代になって草原地帯に農民が入ってくると、耕作に邪魔な石人は、破壊されるか建築資材として再利用された。こうした破壊を免れた一部の石人が、今日各地の博物館などに集められて展示されている。
石人はカザフやキルギスへ行くと、地元の人は「バルバル」と呼んでいる。本来バルバルというのは、古墳に付属する柱状の石列のことだそうだが、広義では石人も含めてバルバルと呼ぶこともあるようなので、ここでも何となく親しみがわく「バルバル」という名称で呼ぶことにした。またロシアやウクライナに多く残るキプチャクのバルバルは、女性像が多いためか「カーメナヤ・バーバ」と呼ばれており、これは石の農婦という意味らしい。
石人を立てた目的については未だはっきりしていない。異なる民族によって長い期間にわたって制作され、分布範囲も極めて広いため、すべてが同じ目的で立てられたとは考えにくい。突厥の墳墓に立てられたものは、死者本人の像とされているものが多いが、死者が生前倒した敵の像であるとも言われている。
ブラナの塔野外博物館にある石人の特徴
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様々なタイプの石人があるが、1500年近く風雨に曝されてきたため石の表面の凹凸が劣化しており、とにかく細部がわかりにくいものが多い。まずこの地域の石人の特徴としては、石に彫られた人の部位として、上半身だけのものや下半身含めて全身を彫ったもの、ほとんど頭部しかないものなどがある。また加工方法も単純に石に線で彫っただけのものや、頭や肩の部分を丁寧に彫り出して加工したものもある。顔の彫りでは、両眉と鼻が繋がっていて、口髭をたくわえたものがいかにも突厥の石人という感じがする。また石人の右手には、杯のような器を持っているものが多い。
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石人についての専門書「ユーラシアの石人(林俊雄著・雄山閣)」の214ページによれば、残念なことにこれらの石人の中には、改ざんされたものが一部混じっているらしい。顔の部分はオリジナルだが、袖や腕の部分の彫りが新しく表現のおかしなものがあるとのことで、今回それも撮影してきた。
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