日本は世界の中でも活動量が少ない国!?
Point 1.運動不足は世界中で問題となっており、特に日本ではその問題が深刻である
Point 2.世界中のデータを検証した結果、女性の3人に1人、男性の4人に1人が運動不足であることが明らかとなった
Point 3.自分だけでなく、家族や友人など、身近な人の活動量も気にしてみよう
日本人の運動不足は深刻です
これは「座りすぎは心臓病・がん・糖尿病のリスク!?ー34の研究からー」でもお伝えしたように、日本人は他国と比較して座っている時間が長く、運動をする機会が少ないことが原因の1つかもしれません。
また、家事や仕事の自動化、交通手段の発達により、日常生活で活動する時間が少なくなってきたことも原因の1つとして考えられます(参考文献・参考資料①)。
また、厚生労働省が平成26年に発表した調査結果によると、約75%、実に4人のうち3人が運動不足を感じると回答しています。(参考文献・参考資料②)
(図:参考文献・参考資料②もとに執筆者作成)
そこで今回は、WHOが世界各国の活動量を調査してまとめた結果をご紹介いたします。
世界中のデータを集めて活動量を調査
この報告では168ヶ国のデータを集め、解析を行いました。
データ収集の結果、全部で358件の調査のデータを収集することができ、その対象者数はのべ1900万人にもおよびました。
そのうえで職場や自宅、移動中、余暇の時の運動量を調べ、1週間あたりの活動量が十分保てているかどうかを確認しました。
この時の活動量はWHOの定めた基準を元に、1週間に150分以上の中等度な活動、または週75分以上の激しい活動としました(参考文献・参考資料③)。
世界の4人に1人は運動不足の状態にある!
解析の結果、世界的に運動不足である人は対象者の27.5%にもおよび、2001年の調査結果と比較しても統計学的な差はありませんでした。
つまり、運動不足の状態が長い年月の間、蔓延し続けていることを意味します。
女性の方が運動不足の傾向が強い?!
さらなる解析の結果、男性の23.4%が運動不足だったのに対し、女性では30.7%もの人が運動不足であることがわかりました。
このことから、男性の4人に1人、女性の3人に1人は運動不足であることが分かりました。
日本人の運動不足はそれ以上!
この報告の参考資料(Supplmentary appendix)に、国別の結果が報告されています。そのうち日本は、韓国やシンガポールと同様、太平洋に面した高所得国として位置づけられ、計4823名のデータが用いられました。
その結果、日本人全体の35.5%が運動不足であり、この割合を高く見積もった場合、50%を超える可能性があることが明らかとなりました(95%信頼区間:20.5-53.8)。つまり、日本人の3人に1人が運動不足であり、高く見積もれば2人に1人が運動不足であるということになります。
また、男性の33.8%、女性の37.0%が運動不足であることが示されました。したがって、日本においても女性の方が運動不足の傾向であると言えるでしょう。
できることから一歩ずつ
今回ご紹介した調査の結果から、運動不足は世界的な問題であり、特に日本は世界の中でも活動量が低い国であることが分かりました。
例えば、ご自身の両親や家族といった、自身の身近な人はどうでしょうか?WHOの基準である、1週間あたり150分(2時間半)の運動ができているでしょうか?
運動不足は「運動量を増やすと心不全のリスクが下がる!!-6年間の調査から-」でお伝えしたような心不全だけでなく、様々な病気に影響していきます。また、アメリカHHS(Health and Human Services)によると、運動不足は年間1170億ドルの医療費と全死亡の約10%に関連していると言います(参考文献・参考資料④)。
始めは10分だけでも良いので、身近な人が健康でいてもらうためにも、少しは運動してもらうよう声をかけてみてはいかがでしょうか?
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】The Lancet Global Health, 6(10), e1077-e1086.
【筆頭著者】Guthold, R
【タイトル】Worldwide trends in insufficient physical activity from 2001 to 2016: a pooled analysis of 358 population-based surveys with 1· 9 million participants.
【PMID: 30193830】
▼参考文献・参考資料1:身体活動・運動. 厚生労働省 (2019年1月16日閲覧)
▼参考文献・参考資料2:体力・スポーツに関する世論調査. 文部科学省 (2019年1月16日閲覧)
▼参考文献・参考資料3: Global recommendations on physical activity for health. (2019年1月14日閲覧)
▼参考文献・参考資料4: Physical Activity Guidelines for Americans 2nd edition. (2019年1月14日閲覧)