将来の筋肉の質は筋肉量と体脂肪量のバランスが影響!!
Point 1.加齢にともなって全身の筋力や筋肉の質が低下するが、その低下には個人差がある
Point 2.全身の筋肉量や体脂肪量は、将来の筋肉の質に影響する事がわかった
Point 3.まずは家庭用の体重計を使って、自分の身体の状態とその傾向を確認してみよう
人間誰しも、年を取るにつれて筋肉の質は低下していきます。
筋肉の質と言っても、その定義は様々です。
例えば、ストレッチなどをした際に「身体がかたい」と言われれば、筋肉の伸長性が低下しているため「質が低い」となります。あるいは、身体が大きく、筋肉質に見えても、筋組織に含まれる脂肪組織が多ければ、「筋肉の質が低い」状態であると言えます。
また最近では、年をとるにつれて筋肉の細胞が変性し、脂肪などに変わってしまうとも言われています(参考文献・参考資料①)。
これも「筋肉の質が低下した」と言えるでしょう。現在では、「サルコペニアの新たな定義と指標!ーヨーロッパからの最新の報告ー」でもご紹介したように、MRI画像やCT画像、エコー画像などを用いて、このような筋肉の質を評価する取り組みが進んでいます。
では、このような筋肉の質が低下しやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか?今回は、足の筋力と筋肉の断面積をもとに筋肉の質の変化を調べた研究をご紹介します。
足の筋力と筋肉の断面積から筋肉の質を推定!
本研究は、50歳以上の男女511名を対象としました。
研究を始めた段階で、X線を利用した特殊な機械(DEXA)を用いて、体脂肪量と筋肉量(正確には除脂肪量)を測定しました。この機械はX線透過率の違いを利用して骨量や体脂肪量、筋肉量を測定することができます。
筋肉の質は、研究を始めた段階と研究開始から約4年後に評価しました。この「筋肉の質」は、足の筋力と筋肉の断面積から推定されました。
足の筋力は、主に膝を伸ばす際に働く太ももの力(大腿四頭筋の筋力)で測定しました。
筋肉の断面積は、太ももの筋肉をCT画像で測定しました。その上で、以下の様な式から、筋肉の質を推定しました。
■ 筋肉の質=太ももの力(大腿四頭筋の筋力)÷ 太ももの筋肉(大腿四頭筋)の断面積
体脂肪量と筋肉量はそれぞれ対象者を等しく3つの群に分類し(三分位)、一番低い群とそうでない群を比較しました。
4年間で筋肉の質は明らかに低下している!
解析の結果、年齢や性別に関係なく、4年間で筋肉の質は低下することが明らかとなりました。これは年齢を10歳ごとに分けて解析しても、結果は変わりませんでした。
なお、体重や体格の指標であるBMIとの関連はありませんでした。
筋肉量が少なく体脂肪量が多いと質の低下は早い?!
様々な要因で解析を行った結果、研究を始めた段階で体脂肪量が多い場合か筋肉量が少ない場合は、そうでない方と比較して、4年後の筋肉の質がより低下していることが分かりました。
特に、体脂肪量が多く筋肉量が少ない対象者と体脂肪量が少なく筋肉量が保たれた対象者との差は最も顕著でした。
ご自身の体脂肪量を気にしてみよう!
今回ご紹介した研究の結果から、体脂肪量が多い場合もしくは筋肉量が少ない場合に筋肉の質が低下しやすいことが明らかとなりました。また、この関連は年齢や性別に関係なく見られました。
今回体脂肪量を測定するのに使用したDEXAと呼ばれる機械は正確に測定できるというメリットがありますが、高価な機械であり、一部の医療機関しか所持していないというデメリットもあります。
一方で、家庭にある最近の体重計は、体重だけでなく体脂肪率や筋肉量なども測定できるものがあります。つまり、どなたでも簡単に筋肉量や体脂肪量を測定することができます。
しかし、体脂肪率の正確な測定は困難とも言われていますので、今の身体の状態を維持していくためにも、”こまめに” 体脂肪率を確認する必要があります。ちなみに厚生労働省では、体脂肪率が男性では25%以上、女性では30%以上を「肥満」としています。筋肉のいい状態をできるだけ長く保つためにも、これを機に、普段の体脂肪量の経過を観察してみてはいかがでしょうか。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2017 Jun;8(3):490-499.
【筆頭著者】Fabbri E
【タイトル】Early body composition, but not body mass, is associated with future accelerated decline in muscle quality.
【PMID: 28198113】
▼参考文献・参考資料1:サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント (2018年08月20日閲覧)
▼参考文献・参考資料2:e-ヘルスネット. 肥満と健康 (2018年11月23日閲覧)