読書感想文(38)進士素丸『文豪どうかしてる逸話集』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだこの本は、出版当初から気になっていた一冊です。
私は近代の作家や文学についてあまり詳しくはないのですが、何人かの文豪については面白いエピソードがあることを知っていたので、「きっともっと面白い話があるはずだ!」と思っていました。
そんな好奇心に応えてくれたのがこの本です。

感想

面白かったです。
全部で27人、読んだことがある作家もない作家もいました。
それぞれの関係性も書かれているので、文学史が頭に入っていない私には勉強にもなりました。

個人的に興味を持ったのは、太宰治を中心とした文豪たちの話です。私は坂口安吾の作品を高校時代によく読んでいたので、関心がありました。
坂口安吾は、他人の家に居候している時にカレーを百人前頼むという奇行をしたそうで、これは初耳でした笑。
坂口安吾のエピソードで個人的に好きなのは、ドラッグを使用して5日間ぶっ通しで作品を書いた後に2日間ぶっ倒れたり、薬中で精神病院に入っては新聞に「私はおかしくない!もう治っている!」と投稿したり……笑。こんなことばかり書いているとただのヤバい人ですが、競馬の八百長を暴いてヤクザに追っかけられたりしているので、良い面(?)もあります

その他に印象に残ったエピソードは例えば太宰治が書いた『走れメロス』は自分の経験が元になっているが、実際は友人を見捨てていた話です笑。
あとは谷崎潤一郎も面白かったです。女性拝跪といえば谷崎ですが、妻の元夫との間の長男の嫁に「薬師寺の仏の足の石よりもきみが刺繍の履(くつ)の下こそ」という歌を贈ったり、実際に話している途中に頭を踏んでほしいと頼んだりしていたそうです。そして娘の鮎子が父のそんなアレコレを雑誌に書いたので、「許しもなく、父のことをいろいろ書かないで」と手紙を送ったのだとか。

最後にまえがきの一節を引用します。

素晴らしい作品を生む人間が必ずしも素晴らしい人間とは限らないし、またそうある必要もないのです。

この一文をどう捉えるかは人によると思いますが、私は現代でもそういう作家がいるのではないかなと思います。作品と人間性は別、頭ではそうわかってはいてもその人の本を買うのが癪というか……笑。敬遠している有名作家の作品も、少しは読んでみようかな、と思いました。

そしてこの本で紹介されていた作家の作品も、もっと読んでみたいと思いました。作品をもっと知れば、人間関係ももっと面白く感じられると思います。
代表作も書いてくれていたので、それも参考にします。でも坂口安吾の代表作に『桜の森の満開の下』が無かったので、どういう基準なのか気になりました。

一つこの本に不満があるとすれば、一人一人のエピソードが少ないことです。もっと詳しく知りたいので、続編(というか詳解版)を期待しています!

おわりに

今回この本を読んで、古典もこんな本がもっと増えればいいなと思いました。
大塚ひかりさんのご著書など、あることにはあるのですが、そもそも興味がない人は手に取らないのが課題ですよね。
読んだら面白いのだから、いかにして読んでもらうか。この課題をなんとか解決したいと思っています。

今月はこれで5冊です。あと10冊、なんとかして読むつもりです。
次はホームズの6冊目、『恐怖の谷』を読むつもりです。今日中に読み切れるように頑張ります。

というわけで、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
ごきげんよう。

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