大学受験の英語:効率の良い単語学習法 前編
こんにちは。札幌で英語講師をしているアラといいます。
単語学習といえば単語帳ですが、一口に単語帳といっても、形式がいろいろありますよね。単語のリストがあって、横に日本語訳がのっているもの(リスト型)。短い英文が書いてあり、その文中に覚えるべき単語がいくつか含まれていて、文を覚えれば5個くらいの単語を一気に覚えられるもの(Duoという単語帳が有名なのでDuo型)。200語ぐらいの文章が左ページに、その訳が右ページにのっていて、長文を読みながら単語を覚えていくもの(速読英単語という単語帳が有名なので速単型)。ここらへんがメジャーどころでしょうか。
好みはそれぞれで、僕が学生の頃は速単型というか速単を愛用していました。大学に行っても速単型のTOEIC対策のテキストを使っていました。リスト型のものはどうにも味気なく、Duo型のものは単純に覚えられなくて続きませんでしたね。でも、先日受験して無事合格できた英検1級の対策では、リスト型の一種といえるフラッシュカードを使いました。
では、これらの形式の違いは、単語学習の効率に影響するのでしょうか。中田達也著『英単語学習の科学』を読むと、影響する、というのが結論であるようです。
この本は外国語の単語学習に関する数々の研究をまとめ、分析したものです。フォルス著『語彙の神話』同様、専門的な知見を教育現場ですぐに使えるところまで落とし込んでくれているので、とても使いやすくおすすめです。単語帳選びに関する疑問はこれでだいたい解決すると思います。
さて、いきなり答えを言ってしまうと、リスト型が最も効率が良いようです。前述の通り、僕は英検1級対策で本書の知見を利用してフラッシュカードを使ったのですが、覚えられているという手応えがありました。本書ではフラッシュカードをかなり推しています。僕も以前からフラッシュカードを生徒にかなり強くおすすめしてきましたが、本書で科学的な根拠が示せるようになって本当にありがたい。ちなみにフラッシュカードの一番の魅力は、その持ち出しやすさです。ポケットに入るのでスキマ時間に活用しやすいのです。カバンから本を出すとなるとどうにもおっくうで、スマホをいじっちゃいますからね。
で、大事なのはリスト型が優れている理由です。それは、リスト型は単語とその訳を覚えることに集中できる、ということです。本書では、他の形式だと、文法について考えたりしなくてはいけないので、単語以外の要素にも意識を向ける必要があるから単語の意味に集中できないのではないか、と分析されています。
わからない単語がでてきたら、その単語をつかって英文を作って覚える、という方法が教育の現場でよく言われますが、これも効率という点ではリスト型には及ばないようです。正しい英文を書くことにも注意力を使ってしまうので、単語の意味を覚えることに集中できないと考えられるわけです。(pp. 122)
その点リスト型は、英単語とその日本語訳しかないわけですから、その時使える脳の力と時間を全部その二つに費やすことができます。覚えることに労力と時間を一番使えるので、一番効率が良い、ということでした。当たり前といえば当たり前ですが、種々の実験や分析を経た結論ですから説得力がありますね。
ここで大事なことは、Duo型はダメだとかそういうことでは全くない、ということです。人によって、また、その時の気分によって、やりやすさやりにくさは当然ありますし、何より、一つの方法でしかやっちゃダメなんてこともないのです。
新出の単語で文を作るのも、もちろん英語の勉強になります。先生が文をチェックしてくれるなら尚更です。Duoの例文は長文の問題集ではなかなか出せない文脈のものがあり、覚えれば表現の幅が広がるでしょう。長文を通して覚えるのは、「試験のためにやらなくちゃ。」というプレッシャーがなくてもやりやすいでしょうから、むしろ長期的にみれば一番覚えられるかもしれません。ですから、自分にあった方法をまずは探し、組み合わせてやっていけばいいのです。
次回の「大学受験の英語」は今回の続きというか補足です。「とはいえ学校や塾ではこの形式が良いのでは?」というお話です。