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今年の共通テストを英検一級講師が解いてみた。リーディング編

こんにちは。札幌の大通りで英語講師をしているアラと言います。

さて、今年も共通テストが行われましたね。コロナ禍で2回目です。当日は酷い事件も起きました。それでも受験生のみなさんはがんばりましたね。おつかれさまでした。受験勉強もあと少し、最後までやり切りましょう。

そして今年は共通テスト2年目。2年目の試験は難化するとまことしやかにいわれていましたし、英語は一年目の平均点が予想に反して低くなかったので、僕もきっと難しい問題がでるんだろうな、と予想していました。

英語の難易度は前年並み

ところが、英語は前年並みな難易度だったと思います。文章量はちょっと増えたみたいですけど、読みやすくなっている感じがしました。一方で数1Aがかなり難しかったようですね。センター数学といえば計算力が鍵で、解法の丸暗記もかなり有効な対策でしたが、今回は単元の考え方をしっかり理解していないとつらい問題が多くありました。それでいて計算量はいつもより多いという。一次試験をそんなに難しくする必要ってあるの?と思ってしまいますね。

で、解いてみました。リーディング。難易度は去年と同程度ですが、去年よりは解きやすく感じました。授業でも散々過去問や予想問題をやったので形式に慣れたせいかもしれません。今年の受験生も、学校や塾でやりまくったでしょうから、形式面では戸惑うことなく挑めたはずです。

時間について

練習では時間が足りない子が多くいました。センター試験では20分以上余るのが高得点をとる子のパターンでしたけど、共通テストの英語は英文量が多くなっているので、はやい子でも10分くらいしか余りません。今回自分で解いてみると、15分余りました。練習すればもうちょっと早く解けそうですね。難しい問題集で練習していた子なら、20分余らせたかもしれません。ま、余った時間が多くても仕方ないんですけど。

単語レベル

単語レベルはやはりセンター試験よりは上かな、と思います。hard-wiredという単語が出てきましたが、なかなかセンターレベルの参考書ではお目にかからなかった単語だと思います。単語帳の単語をコツコツ覚えることを嫌がる高校生はとても多いですが、このレベルの単語を覚えるまでには相当時間が必要です。まずはallowだのprovideだの、基本的な単語からやっていかなくてはいけませんし、ピンポイントに試験ででる単語を学ぶなんて都合のいいことは不可能です。3年生になってからでは絶対に間に合わないので、とにかく早く動き出しましょう。

面倒臭さも前年並み

共通テストになって、英文はずいぶん自然になったと思います。個人的には読みやすい。センター試験の英文は、おそらく使える単語の制限のせいだったろうと思いますが、どこか違和感のある文章があったように思います。妙に子供っぽいというか。それに比べると共通テストの英文は自然に読めますね。

ただし、設問が面倒臭いのです。選択肢ごとに何度も何度もページをめくって本文を確認しなくてはいけません。一つの選択肢の中に、正確に照らし合わせなくてはいけない項目が二つあったりするので、とにかく確認が面倒くさいです。果たしてこれは英語のテストなのか、モヤモヤするところです。

でもよくできた試験だと言える、かも

モヤモヤはするんです。本文を完璧に読めても、面倒な作業でミスしたからお前は英語ができないってことだな!と言われている気がしなくもない。学生が書いたステマ丸出しのブログ記事に載っている家電の実売価格を真に受けて細かい割引の計算をおっぱじめる奴なんているかねぇ、と思わなくもない。アンケートの結果として「ペットを飼っている人は毎日3、4時間ペットと一緒に過ごします。」と書いてある文章を読んで、「アンケートの結果を見るに、多くの人が毎日三、四時間ペットと一緒に過ごす、と回答したのだな」と、見事見抜いた人が賢い!っていうテストってどうなの、と思わなくもない。

しかし、本文がちゃんと読めていれば、80%は狙えるテストでもあるのです。妙な設問、面倒な設問は確かにあります。でもほとんどは読めさえすれば正解できます。この、「読めればいい」という点がとても良いと思います。

これはセンター試験の時はちょっと微妙でした。「読まなくても解ける」という評判の問題が結構あったので、受験生が半端な勉強をしてしまい英文を読む力がつかない、という大問題がありました。そんなの本人のせいだろうと思うかもしれませんが、人間なんて自分の気持ちを上手くコントロールできない生き物です。若ければなおさらです。「楽な道があるかも」と一度思ってしまえば、どうしても引きずられてしまいます。そしてそういう評判が立つくらいですから、「単語帳で覚えるのは僕には合っていない」とか言って結局単語まったくやってない子が7割くらい得点しちゃうことがまれではあるけれど本当にあったし、しっかり読める子が時間が足りなくて6割だった、なんてこともありました。特に後者はありふれていました。

それが共通テストになると、読める子はちゃんとそれなりの点をとってきます。まだ2回目ですからこれからどうなるかわからないけれど、今のところ、共通テストはちゃんと読む練習をしてきた子には高得点を与えてくれている印象です。そしてその逆の「なるべく読まずに済ませたい」と思ってあまり読む練習をしてこなかった子たちには、厳しい点数を投げつけているように思います。もちろん、実際には隅から隅まで読む必要があるテストではないですけどね。

なので、英語を読めるようになるだけで高得点が狙えるのですから、シンプルです。紙のテストなのに発音が問われたりしないし、文章の流れみたいな曖昧なものが関わる問題もないし、選択肢だけで正解が選べる!みたいな評判が立ちそうな問題もないのですから、結構いいテストなのかなと思います。面倒臭いけど。

面倒臭さに意義を見出すとしたら

今回の共通テストでは数1Aの他に、日本史、化学、生物でも難化したと言われています。僕の教え子たちにも、日本史や化学がふるわず志望校を下げるか悩んでいる子たちがいます。どの科目も問題の複雑さがずいぶん上がったようです。日本史は出題される資料がかなり多様になったそうですね。

英語は昨年から、センター試験に比べて複雑さがぐっと上がったわけですが、英語の試験だけ取り出して考えると、ちょっと複雑すぎると思います。よくできているとは思いますけど、受験生のどの能力を測っているのかよくわからない。情報を照らし合わせて確認することは確かに大事ですが、なんでもかんでもやればいいわけじゃない。重要な情報を照らし合わせて確認することが大切なのであって、ステマ記事の数字を一個一個確認することが大切だとは思えない。

それでも受験生にとっては大事なテストですから、何とかこれに取り組む意義を見つけてやりたいものです。そう考えると、ま、正攻法で英文を正確に読む力をつけていけば、特別なことをしなくても80%は狙えるし、それ以上の結果を出したければ、それはこの日本社会で特権的な地位にある大学に進みたいということですから、エリートたるもの、無駄に思える作業にも努力を惜しんではならない、ということで頑張ってもらうのはどうでしょうか。そんなことわかってるよ、と当の受験生に言われちゃいそうですが、そうでも言わないとこの面倒臭さは受け入れ難いですね。本文と選択肢でアイテムの順番が違うとか、もう酷すぎ。英語関係ないし。

最後に

エリート志望と普通の人を篩い分けるにはよいテストかもしれないけど、意味があるとは思えない作業を課すのはやめてほしい。でも英文はセンターの時より質が高いよね」というのが今回の共通テストの感想です。

国公立志望の人は、この面倒臭さを早めに受け入れましょう。多感な時期の皆さんがこの世の中の理不尽に慣れ切って諦めの気持ちになってしまうのは、将来の国家的損失につながるかもしれませんが、仕方がない。ぼやいていたらあっという間に時間が経ってしまいます。ぐっと飲み込んでとにかく前進です。

私立志望の人は共通テストの過去問や模試にこだわらず、英検準一級や志望校の過去問にこだわりましょう。照らし合わせの上手下手は英語とそんなに関係ないので、模試では本文が読めたか=訳せたかという点をみるようにしましょう。私大の英語の難化はまだ続いているように思います。英文の細かいところにこだわっていかないといけません。共通テスト模試の偏差値にこだわるヒマはありません。

どちらの皆さんも、この世に人の実力を測り切るテストなんて存在しないことを忘れずに。自分にとっての「英語の実力」とは何なのか、日々考えながら勉強していきましょう。

では今回はこの辺で。リスニング編も書く予定です。

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