トイレの近くかどうか、気にしないわけないじゃないか
汚い夢だった。
中学の校舎の、技術室みたいだった。
奇妙なことに、トイレの入り口のすぐ近くに、6人は座れそうなデカい長方形のテーブルがあって、見たことのないひとたちと一緒に座っていた。それぞれの席には、型が揃っていないパソコンがある。
配線が汚い。
古い型のデスクトップ1台、妙に分厚いノートパソコンが4台が置かれている。座っているのは3人だけ。知っているひとはいない。古い型のデスクトップを使っている女性が、パソコンの処理速度の遅さを嘆いている。
よくよく見ると、彼女のパソコンには、ブラウン管モニターがつながれていて「たしかに遅そう」と思う。ケーブルの束を見ながら、なんかできることがあるだろうかと思う。
ただ、それよりも気になるのは、すぐ目の前にトイレの入り口があることだった。
混んでいるのか、並んでいるひとたちが見える。
なんでこんなところで、と思うが、気になるのは私だけのようで、同じ作業机を囲むひとたちの中には、菓子パンを片手に、飲み物を飲んでいるひともいる。
トイレから帰ってきたひとは女性が着るような、薄手のひらひらした服を着た男性で、うっすら化粧をして、ボブカットなのだけれど、汗をかいて化粧はとれかけていて、前髪の一部はこめかみに張りついている。
「おかえり」と言われて、男性は「ここのトイレ、どっちもダメね」と言う。
私は「このひとは、どっちのトイレに行ったんだろう」と思う。男性用か女性用か。
急にトイレにいきたくなる。
食事中のひともいるので、「トイレに」とは言いづらく、私は「ちょっと席を外します」とその場を離れた。
「どこいくのかな」「トイレじゃないかな」「近くにあるのに」という会話が背後から聞こえる。
すこし歩くと、さっきのとは違うトイレがあった。
入ると目の前に和式トイレがある。
問題は二つあった。
ひとつ目は、和式トイレが排水溝のような見た目だということ。
ふたつ目は、その排水溝のようなステンレスの網になったところに、アイツがどでーんとむき出しでおいてあるということだ。
あちゃー、と思う。見てみぬふりをして立ち去ろうかと本気で思った。が、しかし、私自身のためにも、また次に使うひとのためにも、どうにかしないといけないだろうとも思う。
周りを見渡すと掃除道具はなさそうだった。ただ、ホースに先にシャワーヘッドが付いたような道具がある。
すぐさま、水を出す。幸いなことに水の勢いがよくて、私はブツと安全な距離を保ちながら、物事に対処することができた。
ほぼほぼ問題が解決したころである。
気づくとそばに髭面の顔の濃い中年男性が近くにいて、何やらどでかい板のようなものを持っていた。板の上には見たことのない大きさのステーキが置いてある。
「おめでとうございます」
顔の濃い中年男性は、インド人みたいなターバンをしている。
「何がですか」と聞くと
「おめでとうございます!あなたにはビッグステーキがあたりました」という。
困惑する私のことは気にすることなく、ステーキおじさんは、手洗いスペースにどでかい板をのせて、その上の肉をバーナーで炙り始めた。
私はその場を離れたいような気持ちと、ステーキおじさんが肉をバーナーで炙るのを見届けたいような気持ちにはさまれて、身体がかたまっていた。
やがて、おじさんが「焼けた」と言って、ナイフで切ってくれた。だいぶレアである。
食べたくないなと思う。衛生的にそれってどうなんだろうと思うが、おじさんは一口分を私の口に無理矢理押し込んで、残ったデカい肉を指さして英語で「これはお前のものだ」と言った。
私は、その大きくて分厚い俎板を両腕に載せられた。英語でどうにか意思疎通をはかる。
これは私が持って帰らなくてはいけないのか。
なぜトイレで渡されるのか。
疑問を伝えるが、うまく伝わらない。
肉、衛生的に大丈夫なのかと思う。
いや、ぜったい大丈夫じゃないよと思う。
少なくとも手を洗いたい。絶対に。
そこで目が覚めた。4時30分だった。
彼がインド人かどうかはわからない。
でも、インド人のひともトイレの近くが、どでかいステーキを炙り、誰かにプレゼントするのにふさわしい場所かどうかは気にするだろう。AIが生成してくれたターバンをしているようなインドの男性は、シーク教徒だと思うのだけど、どうやら牛肉を食べないみたいだし、変な夢だ。
それにしてもビッグステーキ、大きかった。
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