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東海農政局長の着任記者会見~災害対策の知見に期待

 東海農政局は2024年7月18日、東海農政局長に7月5日付で着任した秋葉一彦新局長の記者会見に出席しました。
 記者は現実の能登半島地震に関連して、知多半島や渥美半島を抱える管内で、半島ゆえの震災対策のポイントを聞きました。

自己紹介から防災にいたるまで所見を述べる秋葉新局長

■農家出身で愛知にも縁
 秋葉局長は千葉県生まれで、実家は農家。「農政局の仕事を非常に身近に感じているというのが正直なところです」と切り出します。
 学生時代は千葉大学の園芸学部で勉強し、愛知県総合農業試験場でも研修をしていました。ほかに岐阜県高山市のホウレンソウの雨除け栽培。ハウスで雨だけ当たらないで作るやり方を全国で一番最初に確立したのは高山だと紹介しています。
 大学時代の同級生らが愛知県や岐阜県などにいるため、情報交換をしてきたといいます。「土地勘」は、過去の局長より豊富のようです。
■蚕からジビエ、環境政策など多彩
 1992年(平成4年)に農林水産省入省。様々な分野を担当しています。
 農蚕園芸局蚕業課を振り出しに、植物防疫や東北農政局、農林漁業金融公庫などを経て、2015年(平成27年)に農村振興局で鳥獣被害対策とジビエ振興対策に携わります。
 鳥獣被害対策は、捕獲よりもまず把握。「被害がたくさんあり、鹿にしても、猿にしても、イノシシにしても捕獲を進めるという話が結構あります。それは絶対違う」
 局長はまず、被害実態と獣道がどこにあるかを調べ、それから被害防止の電気柵、罠、追い払いをする干渉地帯、食べ物になるようなものを断つといった対策を集落みんなでやることが先だと語ります。
 そのうえで捕獲した獣は、肉にして一挙両得。厚生労働省の衛生免許とか、さばき方など一連の仕組み作りを進めてきました。
■環境対策に一家言あり
 局長は2021年(令和3年)、みどりの食料システム戦略にかかわる環境バイオマス課長を担当。前職の大臣加信審議官でもみどりの食料システム戦略を担当していました。
 温室効果ガスの発生源は、工業とか商業もあるのですが、農林水産分野も例外ではないので、その対応策に力を入れてきたそうです。
■明治用水の視察
 一昨年5月に発生した明治用水の漏水事故は、記憶に新しいところです。局長は着任後、現地を視察しています。
 「農業用水だけではなく、工業用水、上水道としても使われています。安定供給の役割を担う地域の重要施設であるということを改めて強く認識したところです」と述べています。
 東海農政局が6月に発表した明治用水左岸側にも漏水防止の止め板設置工事をする説明もしました。工期は2027年(令和9年)まで延びることになりますが、強靭化が確保されます。
■半島の防災
 明治用水に関連して、知多半島の愛知用水や渥美半島の豊川用水の老朽化も心配です。
 記者会見の質疑で、能登半島地震の復旧の遅れも含めて、半島特有の震災復興の課題を伺いました。
 局長は発災後、政府の対策本部の一員として金沢市で対応に当たっていました。その経験から、農業者自身がハザードマップを確認▽農業の事業継続計画(BCP)をチェック▽停電時の発電機用意などのリスク対策~などを挙げています。
 局長は、復興のためには農業者にとっても住むところが大事なことだと強調します。能登半島地震で田んぼは復旧して水を入れられるようになっても、農家が帰ってこられないという現実を見てきたからです。
 半島の先の4市町で6割ぐらい復旧できたそうですが、人が戻って来られたら、もっと復旧率が上がったようです。
 インフラについては、上下水道が非常にネックになっていたと指摘しています。
 「浄水が直ったところから水を出せば下水の対策をしなければいけない。農水省は農業集落排水事業をやっていて、市町村の下水事業と一体的にやらなければならない。東海管内の場合、渥美半島では農水省実施の農業集落排水が非常に多い。関係省庁が浄水と下水を一体としてやらないとうまくいかない」
 「能登半島でも最初に復活したのは、田んぼに苗が植えられたということ。農業は地域の復興に真っ先に貢献できる産業だ。防災対策もしっかりしていきたい」
 東海地方は南海トラフ巨大地震の対策が急がれます。会見から、局長の強い思いが伝わってきました。
(2024年7月26日)
 

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