大糸線応援隊に「入隊」~信州のローカル鉄道を考える道しるべに
「大糸線応援隊」の隊員証(隊員No2526)が届きました。大糸線は長野県の松本駅から大町市の信濃大町駅~白馬駅を経由して南小谷駅までをJR東日本が管理。新潟県糸魚川駅までをJR西日本が管理する赤字ローカル線です。大糸線応援隊は、利用促進と知名度向上を目指して大糸線活性化協議会(事務局・糸魚川市都市政策課交通政策係)が呼びかけている活動です年齢制限はなく、入会金も年会費もいりません。
私の出身は南信州の飯田市で、大糸線に乗ったことはありません。ただ、長年、旧国鉄時代からJR東海や私鉄の取材をしてきたので、地域交通網への関心は持ち続けています。
高校生のころに利用していた飯田線(JR東海)に乗るたびに乗客数が減っていることを痛感しています。JR旅客6社のなかで、JR東海だけはローカル線の収支を公表していませんが、飯田線の抱える課題は同じです。大糸線の沿線自治体の取り組みに学ぶことで、飯田線や信州各地の魅力あるローカル線の存続に向けて知恵を絞ってみようと思い立ったのです。
隊員証が到着した直後、11月24日にJR東日本は利用者が少ない管内のローカル線35路線66区間の2021年度収支を公表しました。大糸線は、長野県内の信濃大町~白馬間の1日当たり乗車人数は550人、100円の運賃収入を得るためにかかる費用(営業係数)は1752円でした。同じく白馬~南小谷間は136人、7076円となっていました。赤字額はいずれも億単位です。
通常の企業経営なら、億単位の赤字額をゼロにすることをあきらめて不採算部門から撤退しています。大糸線応援隊のチャレンジは、地域が赤字路線について真剣に考えるため、一石を投じたともいえます。
■五島慶太の思い
長野県北部の飯山線戸狩野沢温泉~津南間の1日当たり乗車人数は63人、営業係数は1万4839円です。飯山線の前身、飯山鉄道株式会社の設立に尽力したのは、長野県青木村出身で東急グループ創設者の五島慶太でした。
「飯山線が経営に苦しんでいると、1944年当時、運輸通信大臣だった慶太は、国有化して存続させるという救いの手を差し伸べたのです」(「中京の信州人」第70号より)
五島慶太は鉄道王と呼ばれ、路線拡大の剛腕経営に注目が集まりがちですが、鉄道が地域の生活に必要なことを誰よりも理解していた事業家でした。生家から上田中学校(現上田高校)まで片道約12㌔を歩いて通っていたのですから。
ローカル線の生き残り作戦は、各線単独では難しい問題ばかりです。まずは、応援隊員という手法を突破口にして、観光客や鉄道ファンにローカル鉄道で巡る信州の魅力を発信していこうと考えています。
■三遠南信エリア貨客混載の構想
飯田線沿線も人口減少で鉄道利用者が減っています。沿線開発をしようにも傾斜地が多く難しいのが現状です。
一方で、トラック輸送には運転手不足や燃料費高騰、環境問題が重くのしかかっています。JR貨物が見直されているように、ローカル線の貨物利用に活路はないでしょうか。
南信州は野菜や果物、山菜が豊富で、天竜川ワインバレーと呼ばれる長野ワインの4大産地のひとつです。飯田線の客車に特産品を載せて愛知県豊橋市など三河と、東海道線を経由して静岡県浜松市など遠州の消費地へ運ぶ。逆に海産物や工業品を豊橋や浜松から南信州へ運ぶ。いわば「三遠南信エリア貨客混載」です。数字の裏付けはこれからですが、私が構想しているアイデアのひとつです。
■アイデアに営業係数はかからない
株式会社であるJRだけに公共性の責任を負わせることはできません。長野県はJR3社が乗り入れている珍しい県。沿線自治体や住民がアイデアを共有することが必要です。
・3JRを制覇する信州ローカル鉄道巡りスタンプラリー
・JR東海「さわやかウォーキング」の自治体版。週末、主要駅や秘境駅で健康ウォーク開催
・「ふるさと納税」の返礼品。ローカル鉄道のヘッドマークに「〇〇さん結婚お祝い号」といったネーミングライツ進呈
・同じく豊橋行き電車のヘッドマークに「飯田人形劇フェスタ開催号」「祝会社創立100年号」「市田柿の初荷号」など自治体・企業・JAなどが協賛広告を出して地域の足を守る
大いにアイデアを出して、信州各地でローカル線を盛り上げましょう。活性化の発想には、営業係数などは考えなくても良いのですから。
(2022年11月28日)
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