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広い世界を見て
世界一周の旅は、あっという間に終わった。
そして自分が思っていた通り、旅はめちゃくちゃ楽しかった。本当に楽しかった。
旅をして、世界の美しいところも汚れたところも、自分の目で耳で鼻で感じてきた。
空港でお別れのキスをするゲイのカップル
チリのアタカマ砂漠で瞬く、満点の星空
長距離バスに揺られながら眺めた高原
朝日に照らされて輝くパタゴニアの山々
轟々と音を立てて流れ落ちるイグアスの滝
日系ブラジル人のおじさんが奏でるウクレレ
凍えながらも目を奪われたデンマークの町
カンボジアの遺跡で腕輪を売る男の子の声
タイのゲストハウスにいるおばちゃんの笑顔
間違いなく、人生で一番自分が生きていることを実感できた毎日だった。
ただ、旅が常に楽しいものだったわけじゃない。
ご飯は基本的に美味しくないし、人見知りをして現地の人や他のバックパッカーとは全然仲良くなれない。
泊まるところは知らない人との相部屋だし、シャワールームや洗面所は汚いし、外には野犬がうろうろしてるし、夜は散歩する気になんてならないほど怖い。
海外にいてもすぐに日本に帰りたくなる。
世界一周を成し遂げたからといって、何かが大きく変わったわけではなかった。
帰国後の僕は就職活動で内定をいっぱいとれたわけではないし、女の子にモテたわけでもなかった。
相変わらず人見知りで好き嫌いが多くて、コーヒーと海が好きなどこにでもいる男子大学生のまま。
でも、世界一周をやりきったという誇りと、広い世界をこの目で見てきた経験は、自分の中に確かにあった。
世界一周を達成した自分なら、どんなことでも挑戦できる気がした。世界一周は、未来の大きな糧になった。
そして、世界一周で人生を通して夢中でいられるものを見つけた。旅だった。
旅先のご当地グルメを楽しむわけでもなければ、有名なホテルに泊まるわけでもない。現地のアクティビティツアーになんてほとんど行ったことがない。人見知りだから現地の人と仲良くなったりすることも、滅多にない。
それでも旅の中には興奮と感動が散りばめられていて、僕はきっと旅をするために旅に出ているんだろうなあと思わせられる。
よく知らない土地に行って、見たことのない景色を見る。はじめましての人と話して、食べたことのないものを食べて、その土地の文化を知る。
それが自分の人生にとっての充足で、僕が旅をする理由。
僕は、これからも旅を続ける。
自分の心が震える瞬間を探して、旅をする。
世界を旅をすればするほど、僕の好奇心は満たされるどころか、どんどん溢れてくる。
もっと自分の知らない世界を見たくなる。
アフリカにいる民族にも会いたいし、イースター島のモアイと写真が撮りたいし、夜空に輝くオーロラも見てみたい。
自分の目で見て肌で感じたいものが、世界にはまだまだたくさんある。
そして、僕がその経験・魅力を発信して、旅に出る人をもっと増やすのが、僕の使命だと思っている。
誰かの人生に、旅という選択肢を増やしたい。
そのためにも、まだまだ旅をし続けなきゃいけない。まだまだ旅に満たされる日はこない。
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