周りの人達の電卓を叩くスピードに圧倒されたあの時の俺へ
拝啓
どうも、計算するときは未だにスマホじゃなくて電卓使いたい47歳の俺です。
あの時の俺は27歳、公務員を辞める直前だね。自分の中の人生の転機の一つだったね。
そういえば先日、こんなニュースをみたよ。
「資格なんていらないよ。それよりも愚直に目の前の業務に取り組むべきだ」
確かにこの意見は一部の人にとってはそうかもしれないけど、そうじゃない人もいると思う。あの時の俺はまさに後者だった。
公務員を辞めて民間企業に転職しようと考えた時、当時の俺の手元にあったのは職歴と学歴。
職歴は所謂プログラマ、システムエンジニアみたいなことをやってたけど、古い技術だったし、所詮は公務員としての経歴だった。
学歴は仕事をしながら通った大学の夜間、二部の学部卒だった。
転職活動は今でこそ色んな入口があるけど、当時は日曜の日経新聞の求人広告か、リクナビ転職ぐらいだった。
まず最初に通るのは書類選考。いままでどんなことをやってきたとしても、自分をよく知らない選考側が最初に目にするのは履歴書、職務経歴書だ。
なにをやってきたか、何ができるのかはとっても大事だけど、どうやっても最初は書類で、紙の上で選考される。その書類の「見栄え」が悪いと書類選考を通過できない。
自分としては一部とか二部とか夜間とか関係なく働きながら自分でお金を払って大学を卒業したことを誇りに思ってるし、同じような境遇の人を尊敬している。でも転職で選ぶ側の人たちがそうであるかどうかは分からない。
当時はまだまだ学歴社会、普通に書類選考されたら分が悪かった。
いずれ公務員を辞めて民間企業に転職しようと考え始めた時、じゃあ何を得意技にすればいいか考えた。その時、既に大学を卒業して働いていた友人が
「これからは英語、IT、会計だ」
と教えてくれた。
英語は自分で勉強していたし、ITは仕事で関わっている。残るは会計だ。
仕事では全くやったことがないし、何やってるかも知らない。であれば勉強で何か学べばいい。当時の俺の頭に浮かんだのは簿記検定。
よし、簿記検定受けよう!どうせやるなら1級だ!英検受けるノリでそう思った俺はなけなしのお金払ってTACに入った。1級が簡単ではないことを知るのはもうちょっと経ってからだ。ある意味無謀なアホでよかった。
初めてTACに通った日の衝撃は忘れられない。
授業の教室を探していると、人がたくさんいる自習室になってる教室があった。みんな一言も発せず、聞こえてくるのは電卓を高速で叩く打鍵音。ダダダダダダダダダーン!すんげースピードで電卓叩いてる。そして電卓を見ていない。右手にはペンを持ち、問題を見ながら電卓を見ないで打ってる、ものすごいスピードで。そのスーピ〜ド〜で〜♪
今思えばその人達は会計士の受験生だった。でも俺は「電卓が早く叩けないと合格できないんだ」と思い、まずは電卓早く叩く練習した。そろばんが電卓に変わっただけ。そろばんなんて小学校の授業で体験したのみ。
でもおかげで電卓を左手で見ずに早く叩けるようになったし、今でもできる。あんまり役にたたんけど。
電卓といえばやっぱりこれ。今もうこの形は売ってないのね。中古高い。
勉強始めて、これはやっちまったなと思った。いきなり目指すんじゃなくて3級からやるべきだったんだと。でももう後には引けない。お金払った。必死に勉強した。仕事が終わったあと、週末の休み、できるだけTACの自習室に行って勉強した。あんなに頑張って勉強したの高校受験以来だった。
最初は全く歯が立たなかった。全然数字合わないし、どうやってその答えになるのかわからんし。でも授業聞いて復習してTACのテキストと問題集と過去問を何回も繰り返してる内になんとなくコツを掴んできた。
理解が一気に進んだのは
「複式簿記だから左をいじったら右もいじる、左が動いたら右もなんか動いてる」
ということに気づいてから。いろんな問題に対してT勘定とかテーブル使った解法を学ぶけど、その根底にあるのは
(借)AAA xxx (貸)BBB xxx
の仕訳。過去問や問題集やる時に、便利な解法使わずに全部仕訳を切っていくと分かるようになってきた。そうすると今度は便利な解法をちゃんと使いこなせるようになった。
初めて挑戦した第102回簿記検定。もう20年前になるのか。
運がいいことに不得意な問題がほぼ出なかった。過去問と同じ問題もあった。合格した。
決して頭がいいわけでもない俺が合格できたのは、頑張ったから、運が良かったから。本当に嬉しかった。
履歴書の資格の欄に「日商簿記1級」と書いた。
俺はこの資格のおかげで転職ができたと思ってる。自分の人生を変えてくれた資格だ。
資格なんてなくても実力でのし上がれる人はいる。でもみんながみんなそうじゃない。資格のおかげで人生が拓ける人もいるのだ。
あの時の俺、本当によく頑張った。
あの時会計を学んだこと、簿記1級に合格できたことは後の人生に大いに役に立ってる。会計はどこ言っても同じ共通言語。ほんと導いてくれた友人にも、諦めずにやりきったあの時の俺にも感謝してる。
ありがとうあの時の俺。
でも、その後も転職するたびに色々勉強する必要性に迫られ、まだまだ勉強の日々は続くよ。36歳で大学院にも行くよ。
今、リスキリングとか生涯学習とか話題になってるけど、学歴のない俺はずっとリスキリングしないとサバイバルできなかった。そして47歳の今もまだ勉強してるよ。こうなったら死ぬまで勉強だ!
そして若い頃にクビになった経験を、今となってはそれもいい経験だったと思えるようになってるよ。その時の俺へはまた今度。
じゃあな、あの時の俺。頑張れよ。
電卓の「=」押す時にリターンキーと同じようにダーン!って叩くなよ!
敬具
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