能楽の空白(という濃密)
能を見る時間の80%は退屈な時間だ。幕があがって囃子方が登場し、切戸口から地謡が出てきて、それぞれの位置に着座する。ワキが登場してなんだかやり取りがあって、それでもなんだか始まったのか始まってないのかわからない。
そして、そうしたあいまいな空間を突然笛の音が引き裂く。そこではじめてシテが登場する。しかしそのシテもまたひとさし舞っただけで十分に盛り上がる前に去って行く。
アイが物語る話は多くは主人公の不在であり、いまさっきのシテの存在そのものが実は大きな空白の存在だという