魚介類生食への道はタコから入った、という話。
朝食食べつつNHKで『あさイチ』を観てたら、中継で北海道・日高産のタコが。デカい。全長だけでも1mはあるでしょう。まだ生きたタコを切り分けてから釜のお湯に放り込み、中の芯になる部分にまだ透明な箇所が残る(完全に茹できらない)くらいに2,3分程茹でたら、今度は海風が当たるところに干す。こうするとタコ独特のコリコリでプリプリな食感を残しつつ、実に甘いタコ刺しになるそうな。
食ってみたいなぁ、と思ったところでフト自分の過去を思い出しました。
自分は子供の頃、とりわけ小学校3,4年くらいまでは魚類の生食が苦手でした。どういうわけか苦手でした。鮭のムニエルや焼いたカジキマグ、焼きサンマ等々の焼き魚は平気だったんですが、生はダメ。思うに、生の食感が嫌いだったのではないかなぁ、と。いくら新鮮でも口の中に残るあのヌルっとした感覚に嫌悪感を抱いたのかもしれません。
でもそれはひょっとしたら、最初に食べた生物があまり質の良いものでは無かった可能性もあります。もう一つ、子供の頃に嫌いだった食べ物の中に「トマト」があります。これも中のジュブジュブした、柔らかて水っぽい果肉のところで思わずオエッとなってしまい、それ以来しばらくはトマトが食べられませんでした。
つまりは「生で柔らく、ヌルヌルした部分」が好きになれなかったのでしょう。以前「トマトが嫌いだった理由」とを母親にしたところ、
「あー……じゃあ最初に食べさせたのが柔らかすぎたのかなぁ……何かごめんねぇ」
と申し訳無さそうに語っていたのを思い出します。食べ物で親にトラウマを植え付けられたと言えば悪く聞こえますが、姉の育児に関する話、とりわけ食べ物の偏食が多いというを聴いてると、苦労も多いようで……好き嫌いをなくす(なくさせる)のは大変だとつくづく感じます。
で、そんな生食に対する抵抗を取り除くきっかけになったのが、先に挙げたタコなんですね。
やはり記憶を辿ればですが、初めてタコを美味しいと思ったのは「酢ダコ」。小学校高学年か中学入りたてだった頃の話で、おそらく親父が酒のツマミに買ってきたのでしょう。それを食べてみたら、甘酸っぱくてコリコリした食感が気に入ったのですね。
その後、回転寿司に行った際、目に入ったタコの握りに手を出したら何の抵抗もなく食べられた。タコがいけるならイカも大丈夫だろう、じゃあ他の生モノもいけるだろう……となって、今では何の問題もなく食べられるようになってます。まさにタコさまさまです。
ちなみにトマトを克服したのは「プチトマト」。これは中学の頃に技術家庭の科目でプチトマト栽培があり、クラス一同で個々人に植木鉢から育てたのですね。そしてようやく実をつけ、今が食べ頃だと自分のをもぎ取って食べ始めました。さて弱った、苦手とはいえ手塩にかけて育てた野菜、このままというわけには……えーい、食っちまえ!とばかりに一口で放り込みました。
そうしたらこれが甘くてジューシー。あれ、トマトってこんな美味しかったの?! と驚きが先に来ました。何だ、これならいけるわ、とやはりトマトへの抵抗はなくなりました。
幼い頃に持っていた「食に対する抵抗」を克服できると、一歩成長した気分になります。そこで思い出したのがこの一冊です。
自分のは単行本版ですが、その中のエッセイ&漫画で実は夫婦揃って海の幸が嫌いだと記しています。奥さんは「生臭いのがダメ」、旦那さんも「海水浴場のすえたような磯臭さから、魚屋の店先の匂いまで、全部ダメ」。しかし世間では高級な食べ物=寿司というイメージから、仕事の付き合いで海の幸を生食する機会が何度もあったためほとほと参ったとも。
とはいえ「オトナな肉の食べ方」というのもあるはずなので……『孤独のグルメ』でも紹介された「群馬県下仁田にある高級すき焼き屋」で食事をした時は、めちゃくちゃ贅沢だと感じました。上州牛に地元の卵、さらには下仁田特産のネギとこんにゃく(しらたき)をふんだんに使った一品です。何が凄いって、肉もそうですが熱でトロトロになったネギを肉汁と割り下、卵と一緒に食べた時「これはネギがメインになるすき焼きでは?」と思えるくらいでしたから。これぞオトナな肉の食べ方。
この本の発行から21年、今はどんな食生活をされているのでしょうか?