『アタック・オブ・ザ・キラートマト』で本当のバカ映画を味わおう
さて、Z級とも称されるこの映画について、なぜ急に書き始めたかをまず語らなくてはならない。
NHKで昨晩からスタートした新番組『あしたが変わるトリセツショー』を観ていた時である。記念すべき第一回のテーマは「トマト」。
番組内容はつい先日終了した『ガッテン!(ためしてガッテン)』を流れを汲むモノで、当然ながらトマトも同番組内で紹介していた。なので「ここは以前と被る部分があるな……これは新情報だな……」と思い出しつつ眺めていたら、
「……え?!」
突如始まった映画紹介。おい待て、トマトだからってこの映画を出すか!一緒に観ていた母親が一言「C級だねぇ」。いやいや母上、もっと下だと言われてますから。
「トマトが人間を襲う」という発想自体は、実はそんなに変でも無いと思っている。ホラー映画のパロディであれば、どんなシロモノが人間を襲ってこようが構わない。だから何を題材にしたっていいし、無限に作れそうな気がする。もっとも「じゃあお前も作ってみろ」と言われたら流石に困ってしまうが……ならば『殺人抱き枕 Attack of the Killer Huggy Pillows!』てのはどうか? ひょっとしてもうあるのか?
閑話休題、そんな数多あるホラーコメディ映画の中でも本作がカルト化しているのは、低予算ながらも全編にわたってひたすらギャグを差し込みまくったからで、そこにハマるかどうかだろう。初見は20年以上も前だが、その折は一緒に観ていた姉の方が大爆笑してて、つられて自分が笑うような感じだった。姉が面白いと思ったからコレは面白いのだろう、という認識だったが、今ではDVDも所有するほど好きである。
ざっくり見ると、低予算なのを逆に利用したネタが多い。どこぞの老夫婦が会話してる場面だけを映し、そこに効果音だけ足して
「おや、ティミーが喰われたぞ」「可哀想に」
と台詞だけでトマト襲撃を表現するなど手抜きもいいところである。いや襲われてる側を映せよ! あと爺さんと婆さんも何でそんな呑気なんだよ! 襲ってくるトマトの下に台車が見えるくらいでは驚きもしないが(※注意:該当場面は特別編だと上下がカットされていて見えなくなっている)、「急だったんでこんなトコしか用意できませんでした」と異様に狭い部屋で作戦会議を開いたり、「特殊部隊」というのは人間性が特殊だからか?と思えるメンバーだらけだったりと、ツッコミ入れたら負けだと言わんばかりのネタを矢継ぎ早に入れてくるのだ。もうお腹いっぱいである。
しかしZ級と称されながらも、登場人物の描写には雑味が無い。最初こそ主人公は不明で始まるが、先に挙げた特殊部隊集結のあたりから段々とキャラが立ってくる感はあると思う。とりわけバカキャラ担当のパラシュート男・フィンレターあたりは「またこの人が何かをやらかすのかな?」と期待させる何かがある点、本当にZ級の映画ではないぞ、と強調しておきたい。
しかし個人的に一番ツボったのは、そんなギャグ満載の中にやはりギャグとして唐突に始まるミュージカル場面だったりする。なにせDVDには特典映像として、歌詞付き動画まで収録されるほどだ。
メインタイトル曲「キラートマトのテーマ」はどこかのおっさんが物凄く安っぽい鼓笛隊をバックに、物凄くヒドい歌詞を声高らかに歌い上げる。そんな歌で心を掴んできたかと思えば、広告代理店の社長が自社の企業理念をノリノリで歌い出したり、対トマトの最前線にいる兵士達が「トマトをぶっ潰せ」と歌うわ、最後は一応の主人公(?)といえる刑事と一応のヒロインと呼べる人が愛を語り合うわと、ギャグになるなら何でもやっちまえ! と言わんばかりの展開にあふれている。
ちなみになぜ広告代理店が出てくるかというと、政府の対トマト政策の一環として、トマトへの恐怖を払拭させるプロパガンダを依頼されたため。報道官を通じて「そんなの可能ですかね?」と問われた社長は、やはり安っぽい鼓笛隊をバックにテンポよく歌う。これがまた楽しそうなのである。しかし、こんな映画に出てくる広告代理店が当然マトモなはずもない。どうマトモでない(ヒドい)のかは、ぜひ本編を観て確かめてほしい。
全編において安っぽさやしょうもなさ、くだらなさを感じつつも、全てが「本当の意味で」Z級ではない、明るく楽しく、そして愛すべきホラー・コメディである。観て損はない、かも?
余談になるが、以前『大怪獣のあとしまつ』のレビューで「どうせバカをやるならもっととことんやれ」と書いた。この一文が出たのは本作の影響かもしれない。というか、あの映画のギャグセンスは『キラートマト』の足元にも及ばないだろう。まったく、怪獣がトマトに負けてどうするんだ!!
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