見出し画像

「こんばんは、俵孝太郎です」

 94歳。昨年12月まで執筆活動を、というから本当に最後まで仕事を続けていたのですね。

 もっとも自分は、俵孝太郎さんのニュースキャスター時代を全然知らないのです。活動されていた時期からして、一つ上の世代(50代くらい)の方々ならキャスターとしての姿をリアルタイムで観ていたのでしょうか。『8時だヨ!全員集合』のDVDを観た時も、学校コントで志村けんや加藤茶がネタにしてたから、やはりそうなのかなと。「こんばんは、俵孝太郎です」のフレーズだけで笑いが取れるくらいですから、当時の世間でどう認知されてたのかも分かりますね。

 自分の中では『マジカル頭脳パワー!!』の初期~中期に解答者側としてレギュラー出演してた時のお姿ですね。政治評論家というお硬い肩書きではあるものの、頭の体操的な問題に対して腕組みしながら真面目に挑んでいた姿は忘れられません。
 問題によっては博学さがモノをいう時もありました。「しりとり二文字バトル」は最後の二文字でしりとりをするもの。例えば「ゴジラ」で始まったら「じら」で始まる言葉で繋げていきます。この場合は「じらい(地雷)」「じらす(動詞・形容詞も可)」「じらいや(児雷也)」と続ければOK。ただフレーズによっては、続けることが出来ずに次々と脱落者が出てしまうこと。この場合は言った本人に戻ってきて、本人が答えられなければその人が失格し、逆に脱落した人達が復活できる、というルールでした。
 ここで俵孝太郎さんは「ニー」で終わる言葉を出し、他の解答者を次々と脱落させていきました。ニーで終わる言葉というと何でしょうね、カンパニーあたりかな? 一周回ってきて俵さん、ズバリ一言

「ニーチェ!」(『ドイツの哲学者』という注釈あり)

と答えて見事しりとり成立、ボーナスポイント獲得となりました。
 どうでもいい話ですが、自分はこれで哲学者のニーチェを知りました。何がきっかけになるか分からないものです。

 ……いつだかの日テレ・バラエティ特番では、山城新伍が下ネタ全開の解答をした際(お約束)、ビートたけしがフォローすることもありました。
「NHKでも許されてますから大丈夫です。『こん◯んは、俵孝太郎です』
 これを御本人がいる真ん前で言ってたのですが、当の俵さんは怒るでもなくただ笑っておられました。洒落が分かるというか、バラエティにおける立ち位置をきちんと理解してなければ、先に挙げた真面目な回答も、そして自分を茶化すようなネタに対してもあのような振る舞いは出来ないでしょう。

 今時のテレビには、そういう評論家の方がいるのかどうか。いや、それ以前にバラエティ番組自体の質が当時とは比べ物になりません。元々がお硬い方ですら、自分のキャラを上手く見せて楽しませてくれる、そんな番組が今あるんでしょうか。あの時代を体感した側としては、何とも寂しく思えてならないのです。

 俵孝太郎さんの御冥福をお祈りします。

いいなと思ったら応援しよう!