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「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その11〜本番編①〜
こんにちは! “あらきん”こと、荒木です。
前回の記事では、熊本の地域にこだわりつつ、日本や世界の“ホンモノ”も感じられる「クリスマスマーケット熊本(以下、クリクマ)」を実現すべく、資金集めに奔走したことを書きました。
前回の記事はコチラ。
今回からは、いよいよ本番編。次々と想定外のハプニングが巻き起こった第1回クリクマのエピソードについて、ご紹介していきたいと思います!
裏方の仕切り役は4人だけ
クリクマの初開催に向けて2018年春から準備を重ね、いよいよ本番間近となった12月。
地元のマスコミにプレスリリースを配信し、パンフレットも配布してはいたものの、そもそもどれくらいの人が集まるか?とても不安でした。来場者数の目標としていたのは、開催5日間で2万人、1日あたりだと4千人。それくらいの人に来てもらえれば、大成功だよね!と役員メンバーでも話し合っていました。
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そして、一回目の運営事務局として僕のサポート&裏方の中心として動いていたのは、30代女子の3人。
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その筆頭は、僕の会社のスタッフ「ミズタさん」。2017年冬に福岡のクリマ視察の時から、二人三脚でクリクマの企画構想から携わってくれました。正直、彼女がいなければクリクマはできませんでした。
そして10月からは、まちづくりイベントを一緒にやってきた「ヒラさん」、「ユキちゃん」も常駐メンバーに加わって本番に向けた本格的な準備をスタートしたのです。
以前noteにお書きしたように、もともと主要メンバーとして、僕を含む6人の役員がいますが、イベント開催・運営を実際に具現化、準備していくのは、この事務局4名のメンバーです。企画総務や会場運営、広報、そして直営のホットワイン店舗の準備を進めていたのですが……。本番直前、とんでもない事態を迎えることになったのです。
全テレビ局が生中継! ブッキング事件
まず大変だったのが、テレビ局の対応です。
クリクマの開催初日、地元に5つある全テレビ局から生中継してもらうことになったのです。しかも、それが決まったのは、本番の前日ぐらい。
情報番組のローカルニュースというのは、放映される時間帯も撮影場所も、ほぼ集中します。
同じ会場の同じ時間帯に、全5局のテレビ番組から一斉に生中継されるという、とんでもないブッキング事件。これに対応するためのスタッフが必要ですが、そもそもこんなに注目を集めるとは思っていなかったので、今さら人員の余裕などありません。
そこで急遽、生中継の対応をお願いしたのが、事務局メンバーの一人「ヒラさん」でした。会場運営や総合案内等をお願いしてはいたものの、それらと並行しながら、各テレビ局が放映する場所や時間を段取りするという、本人にとっては無茶ぶりもいいところです(ごめんね、ヒラさん!)。
そして迎えた、クリクマ本番当日。
オープンニングセレモニーと点灯式が始まる夕刻。各局の生中継が一斉にスタートしました。
事前に各テレビ局と調整していたタイムスケジュールに沿って、まずは○局さん、終わったらすぐに移動してください。次は△局さん……と、秒単位で現場を取り仕切っていくヒラさん。
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会場の撮影に加えて、実行委員長へのインタビューもありますから、本人の身柄も確保しておかないといけません。さらに会場では、カメラクルーとアナウンサーさんがあちこちへと移動して、中継して回ります。
とうとうヒラさん一人では、無理が生じ、途中から「ミズタさん」も応援にかり出されることに。まるで喜劇舞台のようなドタバタぶりでしたが、彼女たちのおかげで何とか無事に全局生中継を乗り切ることができました。
そして、ローカル番組の貴重な時間を使って生中継していただいたおかげで、2日目からどんどん来場者数が爆増したのです。
代表あいさつ直前、実行委員長が消えた!
生中継のブッキング以外にも、冷や汗をかいた事件がありました。
オープニングセレモニーの直前、実行委員長のチカオが行方不明になってしまったのです。
先ほどお書きしたように、何せ初開催のイベントとあって、少し甘く見込んでいました。
オープニングセレモニーに立ち会うのも僕たちスタッフくらいだろうから、「みんなで楽しくホットワインでも飲みながら、身内で楽しくやろうね」と話し合っていたくらいです。
ところが、イベントの開始時間が近づくにつれて、ある変化に気がつきました。
会場周辺に、わらわらと人だかりが出来ているのです。近くの市民会館で、今日は「有名アーティストのコンサートでも開催されるのかな?」と話し合っていたら……。
えっっっ、うちのイベントじゃん!!
そう、クリクマのために足を運んでくださった方々でした。
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オープン間際になると長蛇の列が延々と連なり、入場開始と同時に、どんどん人が会場内へと群衆が吸い込まれていきます。なんで?なんで?と、思いがけない光景に喜びが込み上げるのと同時に、危険を知らせるアラート音が頭の中で鳴り始めました。
やばい、やばいやばい。これほど人が集まるなんて、思ってなかったぞ。入口前の交差点にも人が溢れはじめ、大慌てです。
あらゆる不安が頭を駆け巡っていた矢先、その事件は起こりました。
オープニングセレモニーが始まる30分前。代表あいさつをするはずのチカオが、どこにもいません。
ケータイに電話しても繋がらない、無線機で呼び出しても反応がない。
えー!!! なんでだーーー!!!
事前にちゃんと伝えていたよな? 一体どこへ行っちゃったんだ??
全スタッフ総動員で必死に会場を探し回っても、見つかりません。
こうなったら、会場にアナウンスするしかない。
「実行委員長のイケダチカオさん、至急、ステージ隣の本部テントにお越しください。オープニングが始まりますので、大至急お越しください」
ステージのまわりには、すでに大勢の人が集まっている。
やばい、どうする? もう時間がないぞ。
真冬にも関わらず、冷や汗が流れ始めていた矢先。チカオが突如、目の前に現れました。聞けば、会場から道路を挟んだ向かいにあるマッサージ屋さんで、マッサージを受けたまま寝落ちてしまったようなのです。
日頃は決して弱音を吐かない彼ですが、連日の会場設営や準備で疲れ果て、限界を迎えていたのでしょう。幸いなことに、マッサージ屋さんが会場の目の前とあって、アナウンスの声が届いて飛び起きたそう。
10分ほど時間が押したものの、なんとか、お客様には気づかない程度の許容範囲。こうして、なんとかクリクマの幕を開くことができたのでした。
ギリギリの電力。点灯式を死守せよ!
この行方不明事件と同じころ、僕は別のことでパニックに陥っていました。
オープニングセレモニーのメインイベントである、点灯式を控えていたからです。
もともと点灯式の段取りは、ミズタさんとヒラさんに事前にお願いをしていた役割でしたが、テレビ生中継の対応で人手が足りなくなり、僕が引き受けることに。
ただ、本番直前のギリギリまで電気工事が行われていたため、点灯式のリハーサルなど出来ないまま、ぶっつけ本番。当初はさほど人も集まらないだろうから問題ないだろうと、たかをくくっていたのです。
身内で楽しくゆるゆると点灯を行うはずが、会場に入りきれないほどの人が溢れかえっている。
そして、一番ヒヤヒヤしたのは、総使用電力量の限界です。おおよそ使用量の目処を立てて工事していたものの、イルミネーションの点灯式ともなると、会場じゅうの電力を一斉に使うことになる。LEDとはいえ、できる限り予算を削減するために、電気容量はぎりぎり・・・リハーサルもできていません。
もし、カウントダウントでライトアップをした瞬間、電力オーバーで電源が落ちてしまったらどうしよう? 飲食店の電源もストップしてしまうし、会場全体が真っ暗になってしまう。
点灯式どころか、消灯式になっちゃうよ!!!
何としても、それだけは避けたい。
どこまで持ちこたえられるか? こうなったら一か八か、落ちたときは仕方がない!
しかも、それだけではありません。イルミネーションを点灯するためのスイッチ係も用意していなかったのです。
イルミネーションを点灯させるスイッチというのは、1か所だけではありません。ブレーカーが5、6か所に散らばっていて、そこに1人ずつスイッチ係を配置しないといけない。そういうアナログなやり方です。
前述の通り、身内ばかりで点灯式やるつもりでいたので、「一つずつ点灯させていけばいいか」なんて考えたのが、甘かった。
会場に入りきれないほどの人が集まり、点灯の瞬間を見守っています。時計を見ると、点灯するカウントダウンまで、残り15分。
ちょうど近くにいたイベント仲間の「モリさん」を捕まえ、「スイッチ係を5人集めて!あと15分しかないから、ごめん!」とお願いすると、さすが長年、一緒にまちづくりをやってきた仲間です。緊急事態だと察して、会場にいた学生のボランテイアメンバーをすぐに集めてきてくれました。
ちなみに、もともと「モリさん」にお願いしていたのは、物流や運搬のお手伝いです。生中継ブッキングを対応してくれたヒラさんといい、モリさんといい、これまで一緒にまちづくりイベントをやってきたこともあり、臨機応変に対応してもらえる柔軟さには、感謝!しかありません。
無線機が繋がらない! 会場まわりを1人シャトルラン
こうして、点灯式のスイッチ担当のスタッフを5か所に配置できたのですが、ここでまたハプニングが起こりました。
それぞれのスタッフにタイミングを指示するための無線機が使えないのです!
本来であれば、無線機を通じて指示すればいいのですが、点灯式直前に起こった実行委員長チカオの行方不明事件などアレコレが重なり、無線機は混線状態。
結局、無線機からの指示ができないし、イルミネーションを点灯させるための分電盤は、会場の外まわりに点在しています。会場は、僕が中に入れないぐらいぎゅうぎゅうでしたが、会場の外周だけは空いている。
よし、ということで、僕が選んだ解決策は、夜中のシャトルラン。外周を1人で走り回り、それぞれに点灯式のタイミングを直接指示することにしたのです。
ちなみに、スイッチといっても、単純なものではなりません。分電盤には何十個ものブレーカーがあって、一つでも間違えたら、会場内のお店の電源が切れてしまいます。しかも点灯式の時間帯といえば、あたりは真っ暗闇ですし、任された5人にしても、スイッチを触るのは初体験です。
「これとこれを上げたらイルミネーションはつくけん。これは絶対に下ろすなよ」と口伝えで指示を出し、次の場所へと猛ダッシュ。
こうして、なんとか連携を図ったものの……。またもやアクシデントが。
会場のお客さんが多すぎ、その歓声で、ステージの音響が聞こえづらいのです。
無線機は役に立たないし、カウントダウンの音も聞こえない。
ついに観念した僕は、スイッチ係のみんなにこう伝えました。
「ごめん、もうみんな。雰囲気でやっちゃって」
ステージでカウントダウンが行われている様子を見ながら
「そろそろだな」と判断したら、各自でスイッチをオンにしてくれ。
………そして、カウントダウンが始まり、会場一体となって、5、4、3、2、1、0、「点灯!」と同時に、会場中に「おーーーー!!!」「すごーい!」「綺麗!!」という大きな歓声があがったのが聞こえてきました。
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多くの人がスマホを片手に、ステージと会場全体を撮影している姿を目の当たりにし、シャトルランで「はぁはぁ」と息切れしている中、涙がこみ上げてきました。
こうして、さまざまなハプニングが巻き起こるなか、
クリスマスマーケット熊本が、グランドオープンしたのです。