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「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その12〜本番編②〜

こんにちは! “あらきん”こと、荒木です。
 
前回の記事では、2018年にスタートしたクリスマスマーケット熊本(以下、クリクマ)のオープニングセレモニーで巻き起こった、さまざまな想定外のハプニングについてご紹介しました。
 
前回の記事はコチラ
 
予想をはるかに上回る来場者を迎えた中、がむしゃらに奔走してくれた仲間たち。今回は、彼らの活躍ぶりをご紹介したいと思います。
 


オープニング初日に、全ての食材を使い切った飲食店が続出

 
前回の記事でお書きしたように、会場に入りきれないほど大盛況となったオープニング初日。なんと、5日分の食材を使い切った飲食店が続出したのです。
 
僕たち主催者側としては、5日分で2万人の来場者を目標にしていたものの、なにせ初めて開催です。出店してくださった店主さんたちには「確実に売上があがるお約束はできません」とお伝えし、食材をどれくらい用意するかは、各店舗にお任せしていました。
 
そうした中、いざ蓋を開けてみると、どの飲食店にも長蛇の列が。
 
なかでも最初に材料不足の窮地を迎えたのが、僕たち実行委員が運営するホットワインでした。
ホットワインに欠かせない材料といえば、赤ワインです。仕入先の卸売会社に連絡を取り、九州じゅうの系列の販売店・倉庫から、ホットワインに使っていた銘柄の赤ワインを調達。九州全土からその銘柄のワインが品切れになったことは、今も伝説になっています。
 
ホットワイン以外にもあちこちの飲食店で食材切れが続出したのですが、それはイベント立ち上げメンバーである主催者役員たちの店も例外ではありませんでした。
 
たとえば、飲食店のまとめ役であり、自身も出店していた「ユウサク」。彼の店で目玉商品といえばクラフトビールと「フィッシュ&チップス」でしたが、まだ営業時間中にも関わらず、小麦粉にまみれたユウサクが、運営本部のテントに飛び込んできました。
 
どうした、どうした?と思ったら、食材の魚がなくなってしまい、慌てて仕入先さんへ追加手配の電話を掛けていたのです。見た目も内面もタフなユウサクでさえ、イベント終了後に疲れ果て、粉まみれで真っ白けのまま、裏で大の字で倒れ転んでいた姿が、今も目に焼きついています。
 

運営本部で、髭を白で塗っている「ユウサク」(笑)



お笑い芸人がレジ打ち係!?

 
クリスマスマーケットといえば、飲食とともに欠かせないのが、雑貨販売です。キラキラとしたクリスマスグッズが店頭にディスプレーされているだけで、会場はすっかり華やいだ雰囲気に。

雑貨販売テントの様子


飲食部門と同様、こちらも大盛況だったのですが。このとき大活躍してくれたのが、当時、東京でお笑い芸人として活動していた「ラッキータウン」のパープルケンシロウです。
 
彼らとの出会いは、実行委員長のチカオが東京で開催したイベントでした。本来の役目であるMC以外のことまで懸命にこなす2人の姿に感動した僕は、クリクマのステージでMCを依頼することに。
 
お金がなかった彼らは、サンタクロースとトナカイの衣装を身につけたまま、ヒッチハイクをしながら熊本入りしたのですが……。
 
ようやく会場へたどり着いた彼らに、非情な宣告をすることに。
 
そもそもの原因を作ったのは、雑貨店の統括を任せていたダイチさんでした。開催直前になって「雑貨店でレジを打つ人がいない!」と、実行委員長のチカオに相談があったのです。
 
いやいや、スタッフ手配しといてくださいねって言ったじゃん!
話が違うよ、時間もないよ!となったものの、どうにかするしかありません。そんな矢先、目の前に現れた救世主こそ、パープルとケンシロウです。
 
彼らの人柄の良さを知っていたチカオは急遽、役割を変更。
 
ヒッチハイクでやって来た彼らに「ごめん、雑貨店で人が足りないからレジ係をやって!」と無茶ぶりしたのでした。
 
えー!と驚きつつも、引き受けてくれた彼ら。

 
ステージが始まるまでの繋ぎだろう」と思いつつ、彼らがサンタクロースとトナカイ姿のままレジ打ちをやっていると、ステージの方から歓声が聞こえます。
 
点灯式が始まってるね……って、あれ???
 
彼らが驚くのも当然です。だって、自分たちがMCをやるはずのステージがすでに始まっていたのですから。
 
動きたくても、長蛇の列ができたレジにいたのは彼らだけ。どう考えてもレジを離れるわけには行かず、代打でMC役を務めるボランティアの大学生たちを遠目で眺めながら、黙々と金額の数字を叩いていたのでした。
 
 
結局、休憩どころかご飯を食べる時間も取れないまま、レジ打ちに徹した彼ら。翌朝に会場入りすると、「昨日はありがとね。助かった。じゃあ、今日もレジ打ちよろしく!」と、チカオが2人に屈託のない笑顔で言い放ちます。
 
さらに彼らがレジ打ち係となる原因をつくったダイチさんさえも「パープル君、陳列棚が減ってきているから、補充しといてね」と、2人をすっかり雑貨部門のスタッフとして扱う始末。
 
補充ですね!はい!かしこまりました!!って。これなんか、おかしいね?
 
と疑問を抱いていたようですが、2日目もレジ前には途切れることなく長蛇の列ができ、次々とさばいていくしかありません。こうして朝から深夜まで5日間、作業に徹していた彼らのレジ打ちテクニックは、めきめきと上達。お客様が手にした商品を見ただけで、値札を確認することなく金額を打ち込み始めていたほどです。
 
しかも驚かされたのは、レジ打ち誤差の少なさ。
当時のレジといえば、バーコードをスキャナするのではなく、価格を一つずつ手打ちするタイプ。しかも消費税があるから1円単位です。パープルが商品に記載してある店番号と金額を読み上げ、ケンシロウがレジに打ち込む。
 
こうしたアナログ環境、しかも連日、長蛇の列ができていたにも関わらず、通常ではありえないほどの高い精度で、見事にピンチヒッター役を務めてくれた彼ら。5日間のうち3日間は「誤差数円」。残り2日間は「誤差0円」という奇跡的なレジ打ち実績を達成していたのです。しかし、驚かされたのは、これだけではありませんでした。
 

ギャラ全額をクリクマのクラファンに!

 
実は、彼らには5日ぶんのギャラと東京からの交通費として、先払いで14万円が渡されていました。1人あたりだと7万ですから心ばかりの金額でしたが、それでも感謝してくれた二人。
 
ところが!!! なんと、その14万円を丸ごと、僕らが資金集めのために募集していたクラウドファンディング振り込んできたのです! 
 
初開催で資金がない。しかも、僕たち実行委員メンバーが100万円ずつ身銭を切ってイベントをやろうとしていたことを知っていた彼ら。「このままクラウドファンデングに入金したら面白くね? 相当ウケるよ!」と2人で話し合い、もらったギャラをそのまま支援にあててくれたのです。
 
そもそも彼らだって、お金の余裕はありません。それなのに貴重な14万円をクラファンにあて、お金がないからと、ヒッチハイクをして東京から熊本まで来るという……。
 
しかも、MCができると思ってサンタさんとトナカイの姿でやって来た挙げ句、彼らを待っていたのはレジ打ちです。ノーギャラで休憩する間もなく深夜まで働き続け、寒い真冬に寝泊まりするのは、僕の会社の会議室という、まさに極限状態。僕が言うのもなんですが、ブラック企業の扱いどころではありません。
 
それでも文句一つ言わずに、最後までやり遂げてくれた彼ら。その後、芸人としてのコンビは解消して、それぞれの道を歩み始めた2人ですが、毎年クリクマには関わってくれています。
 
とくにパープルは、昨年からもう一つの会場となった、JR熊本駅前広場の会場統括ディレクターとして招聘。今年も10月から、熊本に常駐で入ってくれており、開催期間の12月末まで力を発揮してくれています。
 
ちなみに、イベント拡大とともに待遇も改善され(笑)、滞在中は、実行委員長の「CHIKAKEN(ちかけん)」2人が経営するゲストハウス「月が綺麗ですね」にお部屋を準備。さらに、本番に入ったら、マンスリーマンションで寝泊まりしてもらうよう物件も手配!
 
寒い事務所に寝泊まりしていたことを考えると、ベッドもあって大昇格ですよ!」と無邪気に喜んでくれるパープル。そして、エンタメ業界から離れた今も、設営や撤収の手伝いに来てくれるケンシロウ。本当に、なんていいヤツらなんだ。
 
熊本に縁もゆかりもなかった彼らが、今では僕らの仲間として、イベントを支えてくれています。
 

深夜ぶっ通しの撤収作業

 
彼らを含む総勢100人の仲間たちとともに、なんとか5日間のイベントを乗り切った僕たち。目標2万人だった来場者数が、最終的には10万人近くの方々にお越しいただき、感無量でした。が、しかし。感動の余韻に浸る時間などありません。
 
会場として借りていた広場が、翌日から別のイベントに使われるとあって、翌朝9時までにはまっさらな状態に戻して引き渡す約束だったのです。
 
寝不足でクタクタでしたが、何がなんでもやるしかない!
総勢100人といってもボランティアで参加してくれていましたし、平日なので無理も言えません。実行委員と運営事務局の限られたメンバーが残り、深夜の撤収作業に取り掛かりました。
 
飲食販売の店舗に使っていたヒュッテ(木製の小屋)を分解し、会場にあったものすべてを、会場近くに借りた空き地へと移動。朝4時ごろにようやく撤収が終わると、一旦解散して仮眠を取り、朝8時には再び集まり、作業の続きに取り掛かりました。
 


何をしたかというと、男性陣はヒュッテの運搬です。
分解したヒュッテは、翌年の開催までの間、倉庫に保管するわけですが、そこはクリクマ会場から車で一時間ほどかかる、福岡県との県境に近い南関町。
 
トラック7台ほどに荷物をすべて積み込み、自分たちの運転で車を走らせました。しかし前述の通り、あまりにも過酷なスケジュールでみんな寝不足状態。もしものことを考えて高速道路は使わず、国道3号を北上。途中で何度も休憩をはさみながら、たどり着くことができました。
 

南関の実家に帰ってきた「ヒュッテ」たち
南関の実家に帰ってきた「ヒュッテ」たち


到着後もまたひと仕事あり、ヒュッテの建材をトラックから降ろして倉庫へと手作業で移動するのですが、これが重たいのなんのって……。どうにか1日がかりで作業を終えたのでした。
 
一方、事務局の女子3人は何をやったかというと、大量に発生したゴミの処理です。会場から空き地へ移動させた荷物と一緒にゴミも動かしていたので、これらを処分しないといけません。
 
朝8時に仮眠を終えて再集合すると、生ゴミになにやら真っ黒いものが覆いかぶさっています。恐るおそる確認してみると………、正体は、カラスの大群!ビニールシートで覆って保管していたゴミが、カラスたちによって荒らされており、散らかっている!!

その時のホンモノの写真です。カラスたちにやられてました。


 
大の男でさえ、ひるんでしまう環境の中、彼女たちだけに作業を任せて良いものか迷ったものの、ほかに人員はいないし。そんな心配をよそに、3人は文句一つ言うことなく、作業に取り組んでくれました。カラスたちと戦いながら、大量の生ごみをゴミ収集車へと積み込み、作業が終わる頃には全身ゴミだらけ。彼女たちのガッツには感謝、感謝です。

事務局女子3人が積み上げたゴミたち


 

5周年を迎える2022年は?

 
お金も人員も限られた中でやり遂げた、はじめてのクリスマスマーケット熊本。
 
たくさんの課題や反省点はありましたが、なんとか実現できたのも、ボランティアで手伝ってくれた100人の仲間たちや、協賛してくださったスポンサーの方々、イベントを周知してくださったマスコミの皆さん。そして、裏方に徹してくれた事務局女子3人、たくさんの運命共同体となってくれた仲間たちのおかげです。

1回目のクリクマを支えた仲間たち!(1回目の集合写真)

 
熊本らしい冬の風物詩を、優しいクリスマス村をつくりたい。
たくさんの想いが一つとなって、第一回目は、5日間の開催で短かったけど、最高の5日間を作り上げることができました。
 
その後、おかげさまで年を重ねるごとに規模は大きくなり、昨年からは熊本駅と花畑広場、2つの会場を使って開催しています。
 
そして、6年目を迎えるクリスマスマーケット熊本2023。今回新たに新会場が登場し!3会場での開催。観客動員数のべ82万人を目標に、まもなく、開幕します!
 

今年はさらにバージョンアップしてお待ちしていますので
ぜひ、遊びに来てください! 会場で皆さんとお会いできることを楽しみにしています!

さらなる続きは、クリクマ2023終了後の寄稿を予定しています。お楽しみに!

クリスマスマーケット熊本2023
公式ホームページ


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