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「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その8 〜ホンモノにこだわる・雑貨とホットワイン〜


 
こんにちは! “あらきん”こと荒木です。
 
前回の記事では、2018年にクリスマスマーケット熊本(以下、クリクマ)を初めて開催するにあたり、ホンモノの価値を感じられる飲食店の出店先探しに奔走したことをお書きしました。
 
前回の記事はコチラ
 
僕らがミッションとして掲げている
 
「熊本の地域にこだわりつつ、日本や世界のホンモノも感じることができるお祭り」
にふさわしい飲食店は、集まった。
 
しかし、クリスマスマーケットに欠かせない大きなコンテンツが
まだ2つ、残っています。
 
これらを何としてもクリアしなければ、先に進めない。
さて、どうするか? 新たな問題が浮上しました。
 
 
 

雑貨販売をどうするか?問題


 
本場ドイツをはじめとするヨーロッパでは、キリストの生誕を祝うクリスマス前の4週間を“アドヴェント”と呼び、クリスマスツリーに吊るすオーナメントやキャンドル、伝統菓子などをクリスマスマーケットでたくさん仕入れ、寒い冬のささやかな楽しみに備える。そういった風習があります。
 
それなら、雑貨も販売したいよね! 
 
ということで、インターネットや本で調べて、クリスマスマーケットで販売されている雑貨はおおよそ見当がついたものの、どうもイメージがボンヤリしたまま。「ホンモノ」と掲げるからには、実際のクリスマスマーケットで販売されている雑貨を、この目で確かめたい。
 
そこで、いろんな人にあたっているうちに辿り着いたのが
南阿蘇村にある『カフェ ティッペル』さんでした。
 


聞くところによると、本格的な手作りバウムクーヘンが美味しいお店で、おもちゃ産業が盛んなドイツ東部のザイフェン村から直輸入した、くるみ割り人形やオーナメントなど木のおもちゃを販売しているそう。雑貨好きな事務局スタッフのユキちゃんと一緒に、さっそく行ってみることにしました。
 
緑に囲まれてたたずむそのお店は、白壁と三角屋根が印象的な、本場ドイツさながらの洋館(って、ドイツに行ったことはないですが)。
 
期待を胸に扉を開けると、サンタクロースのような笑顔のオーナーさんと、娘の店長さんが出迎えてくださいました。
 
熊本でクリスマスマーケットをやろうと準備しているんですよね、と告げると、「それは面白そうだね!」とお二人。
 
お茶を次々に振舞っていただき、ドイツのクリスマスマーケットに行ったときの写真や映像を見せてもらいながら、「こういう伝統のお菓子があるよ。こんな雑貨が人気だよ」と教えてもらいました。本当に、勉強になった!
 
このお店に、クリクマで雑貨を販売していただきたいなとお願いしましたが、残念ながら、実現しませんでした。なにせ、お店を訪れたのは10月。12月の本番まで2カ月を切っています。
 
ドイツから雑貨を仕入れるのに時間がかかるし第一、初開催のイベントにどれくらいのお客さんが来るかも分からない。当然、リスクが伴います。
「せめて、名物のバウムクーヘンだけでも!」ともお話しましたが、これが想像以上に完成まで手間暇がかかるらしく、お店で販売する数量だけで手いっぱいとのこと。
 
しかし、せっかくのご縁です。ホンモノのドイツ雑貨を扱うこのお店と、何とか繋がれる方法はないか?
 
そこで、オーナーと店長にお願いしました。


 
ここに並んでいる雑貨、売ってもらえるだけ、売ってもらえませんか?
 
もともと、実行委員の直営店舗にするヒュッテ⁠の装飾用として
クリスマスらしい人形や雑貨がほしいと思っていたところでした。
 
店の棚に並ぶ雑貨を半分近く、一気にまとめ買いすると、
驚きつつも、喜んでくださったオーナーさん親子。
 
すると
店内にある、この一番大きいやつ。売りモノじゃないけど、よかったら使って
と、巨大なキャンドルスタンドやくるみ割り人形を貸してくださることに。クリスマスマーケットに飾れば、よりホンモノ感が出そうです。

 
こうして、ティッペルさんから、本場ドイツのクリスマスマーケットや雑貨について教えてもらったこと。そして、ヒュッテ用の装飾を入手できたことは、大きな収穫でした。
 
が、肝心なことが、まだ解決していない!
 
クリクマで雑貨を販売してくれる出店先を、どうやって見つけるか? 
三歩進んで、二歩下がる。それでも。一歩でも前に進んでいくしかありません。
 
 


思わぬ効果を呼んだ販売方法


 
とにかく時間がない!
 
なにせ、初めてのクリスマスマーケットです。ほかにもやることが、たくさんあります。
かといって、妥協はしたくない。
 
悶々としていると、クリクマの提案者で、実行委員長の一人であるチカオが、友人を紹介してくれました。
 
熊本を拠点に、pink india(ピンクインディア)というブランドを展開している、ダイチさんです。
 
彼は、スウェーデン人デザイナーがインドをベースに展開する同ブランドに一目惚れし、日本の総代理店となった人物。ブランドのホームページから伝わる彼の情熱、本当に良いものを未来へ繋いでいきたいという思い。ダイチさんなら、任せられそうだ!。
 
こうしてダイチさんに雑貨出店の代理店として仲間に加わってもらい、クリクマに出店していただける雑貨店のコーディネートをお願いすることにしました。
 
 
クリクマがコンセプトとする「ホンモノ」を基準に、ダイチさんの視点で、これは面白い、というお店に交渉してもらう。その目利きのセンスの良さは、まさに適役でした。北欧雑貨店や、食材・製法にこだわったジャム、パン、シュトーレンのお店など、27店舗の雑貨店に出店してもらうことができました。
 
本来、クリスマスマーケットの雑貨販売は、ヒュッテと呼ばれる木製の小屋で行うもの。スノードームやオーナメント、リースなど、それぞれの専用ヒュッテが立ち並ぶ光景が一般的です。
しかし、初開催のクリクマで準備できたヒュッテは、8棟だけ。飲食店ぶんを用意するのがやっとでした。
 
そこで思いついたのが、大きな一つのテントに雑貨系のお店をまとめてしまうこと。屋根のついた蚤の市のようなイメージです。予算もない、時間もない、苦肉の策として思いついた、この案。
 
お客さんが一つのテントで、いろんな雑貨を手に取って選べる、という環境が功を奏し、じつは思わぬ事態に!? それはまた、「本番編」でご紹介したいと思います。
 
 
 

ホンモノの「ホットワイン」にこだわる


  
これで、雑貨販売のメドは立った。
 
残る一つの、クリスマスマーケットに欠かせないコンテンツ。
それが、ホットワインです。
 
ドイツのクリスマスマーケットでは定番とされ、
グリューワインという呼び方で親しまれている暖かい飲み物。
 
どうやらこれが、クリスマスマーケットの呼び水となるらしい。
 
運営資金を稼ぐためにも、このホットワインは
主催者の直轄で販売しよう! 
 
そう決まったものの、いざ取り組んでみると
簡単なものではありませんでした。
 
ホットワインは、酸化すると味が変化してしまい
思った以上にデリケート。
 
これは困ったな、じゃあどうする? 
役員会議で喧々諤々しているところに、救世主が現れました。
 
彼女の名は、明夢(めいむ)ちゃん。
ご主人の転勤で長年デンマークに暮らし、ふたたび転勤で帰国していた彼女を、もう一人の実行委員長であるミシロくんが連れて来てくれたのです。
 
デンマークでもクリスマスマーケットは欠かせないものだそうで
ホットワインについて尋ねてみると、「めちゃくちゃ大事です!」と熱弁。
 
そもそも、立ち上げ前までクリスマスマーケットの存在さえ、知らなかった僕です。
 
僕:ホットワインっていうくらいだから、ワインを温めればいいんでしょ?
明夢:いやいや、何をおっしゃる荒木さん! ぜんぜん違うんですってば!!!
 
全力で否定されました。
 
ホットワインを作るのって、実はそんなに甘くない。
 
恥ずかしながら、このとき初めて知りました。
 
ちなみに明夢ちゃん、ただ熱弁をふるっただけではありません。
 
友人であり、全国的にも有名な料理研究家さんを紹介してくれて、一緒にオリジナルのホットワインを開発することになったのです。
 
せっかくなら、熊本らしいホットワインにこだわりたいよね。ということで採用したのが、熊本県北部の植木町で農園を営む、『ハナウタカジツ』の片山さんの金柑でした。タネごと食べられる金柑というのもユニークだし、地産地消だし、片山さんは、いろんなイベントを一緒にやってきた仲間でもあるし。
この金柑と様々なスパイスをブレンドした、クリクマオリジナルのホットワインが完成しました。

みんなで集まっての最初の試飲会の様子。


 Dr.シマヅさんが経営するチョコレート店の厨房をお借りして、クリクマのメンバーが集まり、みんなで試飲。
 
いや〜、本当に、美味しかったなー。
 
来年も、次の年も、そのまた次の年も、このホットワインが飲みたい。そう思わせてくれる味でした。
 
限られた予算で、どこまでホンモノの価値を見出せるか?
そうしたせめぎあいの中、みんなで何度も話し合った結果、
 


「このホットワインだけは、何があっても毎年提供していこう」
と決まりました。
 
飛び入り参加してくれた明夢ちゃんの、鮮やかなクリーンヒット。
名古屋在住の今でも、SNS班のリーダーとして応援サポートしてくれています。
 



イヤーマグカップをコレクションする、という付加価値

 
 
クリクマオリジナルのホットワインが完成し、これに付随する大切なものがある。
マグカップです。
 
クリクマ初開催の一年前となる2017年に、福岡クリスマスマーケットを見学させてもらった際、イヤーマグカップの存在を知りました。
 
イヤーマグカップについて調べてみると、本場ドイツでは地域ごとに特色のあるマグカップが毎年製作され、記念に集めている人が多いそう。日本でも人気のイヤープレートのようなものです。
 
このイヤーマグカップを目当てに毎年、クリクマへ足を運んでもらいたいな。
 
こうして、クリクマでもオリジナルのイヤーマグカップを製作することが決まり、
チカオがプロデュース担当となりました。
 
1回目から昨年4回目まで、すべて異なるアーティストがデザインしていて、昨年からは花畑広場と熊本駅の2会場開催へと拡大したのですが、会場ごとに別々のアーティストさんにお願いしています。
 
2会場それぞれデザインが異なるカップとなると、両方欲しくなる、両会場を回遊してもらえる。そんな期待もありますし、クリクマを通じて、熊本のさまざまな地域と親しんでもらいたいと願っています。
 
おかげさまで、年を重ねるごとに人気を集め、開催期間の途中で完売することも。数量限定、一期一会のプレミアムなイヤーマグカップ。ホットワインまたはホットチョコレート用を購入する際、お選びいただけますので、皆さんもよかったらコレクションを楽しんでくださいね。
 
ちなみに余談ですが、このマグカップ、本番1週間前あたりに僕の会社宛に届きます。その数、ダンボール100箱ぶん! ただでさえ、クリクマに関する備品などで足の踏み場もない、結構大変なときです。
 

あまりの量に、事務所の外で荷物整理。


置くところがない! だけど、大事なものだし……。ダンボール箱の山に埋もれたカオスの中、皆さんの笑顔を思い浮かべながら、本番に向けて奮闘しています。
 
  

マグカップの荷下ろしを手伝ってくれた「三城くん」


ホットワインには、このビジュアルが必要だ!


 
イヤーマグカップと同じく、もう一つ、ホットワインに付随する大事なものがあります。
主役ではないけれど、クリクマが目指す「ホンモノ」に左右するもの。
 
 
福岡クリスマスマーケットを視察した際、木造小屋のヒュッテを見て衝撃を受けたことを、以前の記事に書きましたが、もう一つ驚いたものがありました。
 


何じゃ、ありゃ〜!?
今まで見たのことない光景に、思わずスマホのカメラを向けました。
 
みなさん、ホットワインの鍋って、想像つきますか?
 
ホームセンターで手に入るような、
ラーメン屋さんで使っているような寸胴鍋とは、明らかに違います。
(寸胴鍋が劣っている、という意味ではなく、用途が違うってことです)
 
絵本に登場するような、銅製の鍋。
赤みを帯びた黄茶色のピカピカと輝く鍋から注がれるホットワインの、美味しそうなシーン。
 
このビジュアル、クリスマスマーケットには絶対、必要だ!
 
さっそく入手しようとしたものの、
ところで銅鍋って、どこに売ってあるの?
 
インターネットで調べてみたものの、どこにも見当たりません。
 
考えてみれば、そりゃそうだ。
 
巨大な銅鍋を日本で販売したところで、ほとんど需要はないでしょう。
 
だからこそ、銅鍋から注いだホットワインを提供すれば、それだけで価値が出る。
クリクマが目指す「ホンモノ」にまた一歩、近づける。
 
そんな思いで、探し続けました。
 
どんなキーワードで探せば、見つかるんだろう?
「ホットワイン 銅鍋」、「クリスマスマーケット ホットワイン 鍋」 と、いろいろネットで検索しても、出てきません。
 
じゃあ、本場のドイツ圏では? 
翻訳ソフトを駆使しながら、ドイツ語でウェブサイトを調べてみると
 
「あった!!」 
ようやく見つけました。
 
が、すべてドイツ語で表記です。
 
2カ月近くかけてようやく見つけたというのに
これじゃあ、やり取りできないよ……。
 
途方に暮れていたとき、ふと、彼のことが頭に浮かびました。
 
そうだ、彼はドイツの留学経験があったな。相談してみよう!
 
大学時代に、一緒にまちづくり活動をしていた同い年の
真ちゃんです。
 
ドイツに留学していたけん、ドイツ語分かるよね? この銅鍋が欲しいけん、ドイツから輸入する手続き、全部お願い! とにかく俺の事務所に届けばええけん、時間なかけん!
 
いまは大分に住んでいる彼に、いきなりの無茶ぶりです。
しかし、さすが真ちゃん。かつて一緒にまちづくりイベントをやってきた仲間だけあって、輸入に必要な手続きひと通りを代行してくれました。
 
それから待つこと1カ月、60Lサイズの大きな銅鍋が、大きなダンボールに入ってやって来ました。
 

ドイツから直輸入したホットワインの「銅鍋」


念願の、銅鍋。
これで、本場ドイツのクリスマスマーケットにも遜色のない
ホットワインを提供するシーンが完成するぞ!
 
こうして、「ホンモノ」を追求しながら
クリスマスマーケットに欠かせない、雑貨やホットワインを販売する環境が整いました。
 



次回は、ホンモノにこだわった空間づくりのお話です。
続きはこちらです!!続きはこちらです!!


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