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「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その7(ステキな飲食店を集める)

 
こんにちは! “あらきん”こと荒木です。

前回のnoteでは、「熊本に新しい冬の風物詩をつくろう!」との夢を語り続けることで100人以上の仲間が集まり、みんなの思いが一つになったことを書きました。

前回の記事はコチラ

今回は、「クリスマスマーケット熊本」(以下クリクマ)にふさわしい、こだわりの飲食店をどうやって集めていったか? についてのお話です。


ホンモノの価値を感じてもらえる飲食店を探す。


僕たち実行委員のメンバーは、クリスマスマーケットという特別な空間を作るうえで
ストーリー」と「こだわり」を重視しています。

出店する飲食物に関しても、通常のイベントやお祭りで提供されるメニューとは違う、特別なものを提供したい。

僕らがミッションとして掲げている「熊本の地域にこだわりつつ、日本や世界のホンモノも感じることができるお祭り」にふさわしい味。その味を口にした人たちがホンモノの価値を感じられるメニューとは、どんなものか? それだけでなく、商品を提供する店主さんがどんな思いで商品を作っているか、そのストーリーも大事にしたい。

そういったところも含めて、自信を持ってオススメできる飲食店さんを見つけるべく、まずは自分たちでリサーチを行い、出店のお願いへ出向くことにしました。

初めて開催するクリスマスマーケットにふさわしい、こだわりの食事を提供できるお店に交渉したい。では、どんな飲食店に出てもらいたいか? どのように集めていくか?  

ここで必要となるのが、飲食店の選定や調整、交渉などを取りまとめるコーディネーターの役割です。これをウエノさんにお願いしました。

ウエノさんとの出会いは、今から僕が大学3年生のころ。

当時、熊本のクリエイターが集まる熊本市の河原町問屋街で『アップフィールド』という飲食店を経営されていました。そこは熊本の若者世代にとっての出会いと交流スペースで、多くの熱量が集まるたまり場として知られていました。

毎晩のように異業種交流会が行われる
アップフィールドの店内

学生時代はそこへ足繁く通い、さまざまなイベントを開催した場所でもあります。クリクマの実行委員長であるチカオと僕が最初に出会うキッカケを作ってくれたのも、ウエノさんでした。以来、15年以上の付き合いになります。

僕らの条件をクリアする飲食店のトータルコーディネーター役を上野さんにお願いしたところ、すぐに快諾。役員会に何度も出席していただき、僕らが理想とするクリクマのイメージやマインドを共有するディスカッションを行いました。

ちなみに、クリクマの思いとして「熊本らしさ」を重視していますが、かといって熊本の飲食店に限定していません。

なぜなら、僕らが実現しようとしているのは、先ほどもお書きした
「熊本の地域にこだわりつつ、日本や世界のホンモノも感じることができるお祭り」だから。

熊本に限らず、世界や日本のホンモノを熊本の人たちに触れてもらいたいという気持ちもあります。

しかし、こうした飲食店への思いとは裏腹に、不安もありました。
なにせ、初めて開催するイベントです。

今振り返れば、初開催となる2018年の来場者数が9万人超、直近の2021年は42万人以上もの方々に来場していただけるイベントだと胸を張って言えますが、当時はどれくらいの人数が集まるかなんて、見当もつきません。

そもそも、なんの実績もない僕ら役員メンバーが出店交渉に出向いたところで、「あんた誰?」となるのは当然です。

さらにいえば、飲食店にとって12月は稼ぎどき。5日間とはいえ、店を留守にして会場にいてもらわないといけない。ひょっとすると、赤字が出てしまうかも…。

そうした不安が頭をよぎるなか、飲食店集めをスタートしました。

阿蘇の「ソーセージ屋さん」


クリスマスマーケット発祥の地といえばドイツ。ドイツといえば、やっぱりソーセージが欲しいよね! ということで、ソーセージを提供してもらえるお店を探すことに。

熊本県内にもソーセージを提供しているお店はいくつもありますが、僕たちが目指す「熊本らしさ」という条件に合う、納得できるソーセージを出したい。

そこで注目したのが、阿蘇市の『ひばり工房』でした。こちらでは、厳選した良質の豚肉とオリジナルスパイス、そこへ阿蘇が誇る湧水を加え、手間と時間をかけて丁寧に手作りしています。

肉のうま味と食感が十分引き出されたソーセージは食べ応えがあり、本場ドイツの食肉加工コンテスト“SUFFA”で金賞を獲得。「求めているのはコレだ!」ということで、ウエノさんが『ひばり工房』のオーナー・池田さんのもとを訪ねました。

前述のようなリスクをお伝えしたうえで出店のお願いをしたところ、迷うことなく「いいですよ!」と了承いただき、クリクマに出店して頂けることになりました。

ミシュランガイドの「ピザ屋さん」

続いて出店候補としてあがったのは、熊本県北部の菊池に店を構える『ナポリピッツァ研究所 イルフォルノドーロ』というピザ屋さん。

早速リサーチしたところ、「日本一美味しいピザ屋になる!」との夢を掲げて、2010年にオープン。ミシュランガイド「ビブグルマン」でも紹介され、食通として知られる芸人さんが全国放送のテレビ番組で紹介したこともあり、注目を集める存在に。熊本県産の食材を使ったピザがクリスマスにはぴったりだ! ということで、お店を訪ねることにしました。

写真引用: https://www.forna-vesta.co.jp/category04/ より

オーナー・原田さんに初対面ながら出店の話を持ちかけたところ、二つ返事で了承していただき、話はトントン拍子。それどころか、「ヒュッテ(木製の小屋)にホンモノのピザ窯を設置して、注文が入るたびに窯でピザを焼いて提供したい!」との提案まで。思いがけない申し出に、驚きを隠せなかったことを覚えています。

せっかくのアイデアを形にできればと、ヒュッテの中で薪を燃やしてピザを焼くことが果たして可能か、建築士と何度も協議を重ねました。

しかし仮設建築物という構造上、どうしても防火上の諸条件をクリアするのがなかなか難しいと分かり、あえなく断念。最終的に、『イルフォルノドーロ』が所有する移動販売車で販売することになりました。

写真引用: https://www.forna-vesta.co.jp/category04/ より

ヒュッテでの販売は叶わなかったものの、僕らが想定していないことまで提案してくださる熱い思いを持ったオーナーにジョインしてもらえたことは、大きな収穫でした。


Dr.シマヅを全力で走らせる。
~チュロスおじさんとの出会い。~

甘いものが大好きな僕は、来場してくれる子どもたちが喜んでくれるホンモノ志向のお菓子はないかな? と調べていました。

写真引用: http://dannychurros.com/より

ある休日、SNSを眺めていると、熊本県合志市のカントリーパークで開催されているイベントに、チュロス屋さんが出店していることを発見。その移動販売車の外観に僕は一目惚れし、インターネットで調べてみると、こだわりの米粉を使ったチュロスを手づくりして販売している福岡のお店だと分かり、僕が求めていたお菓子のイメージにぴったりでした。

すぐに役員のLINEグループで提案したところ、みんなも「すぐに出店を依頼しよう!」と賛同。しかし時計を見ると、イベント終了時間まで残り30分を切っています。どうしよう、イベントが終わったら福岡に帰ってしまう……。僕が直接足を運んで交渉したいと思ったものの、自宅からイベント会場までは、どんなに急いでも車で40分はかかってしまい、間に合わない。

そんな中、役員の一人であるDr.シマヅさんの家が会場の近くであることを思い出し、再びLINEグループで「いま、家ですか? 時間ありますか? すぐにカントリーパークへ行ってチュロスを試食して、僕らが求める条件をクリアしているようであれば、出店交渉をお願いできますか?」と依頼。シマヅさんはすぐに会場へと向かってくれました。

車でわずか5分ほどで到着したものの、イベント終了まで残りわずか。しかもカントリーパークの総面積は約27ヘクタール、東京ドーム6個ぶんもあります。

広大な敷地を猛ダッシュで走り回ってお店を探してもらい、僕ら役員メンバーはLINEグループ上からドキドキ・ワクワクしながら「頑張れ! がんばれ!」と、その様子を実況中継さながらに見守りました。

ぎりぎりセーフでなんとかお店が見つかり、実際に食べてみると味もクリア。米粉を使ったオリジナルの生地はグルテンフリーで、小麦粉や卵アレルギーをお持ちの方でも安心して味わうことができる、優しい素材とのこと。何といっても、オーナー自ら「チュロスおじさん」と名乗るその人柄と愛情あふれる笑顔も合格点でした。コンセプトよし! インスタ映えよし! そのまま出店交渉してもらい、その場でオーナーに出店を決めてもらうことができました。

クリスマスマーケット熊本で
満面の笑みで接客をする「チュロスおじさん


ここでご紹介した3店舗は、いずれも初回から継続して出店してもらい、今ではクリクマに欠かせない名物店舗となっています。

先ほどもお書きしたように、初開催でどんなイベントになるか分からない。どれくらいの人に来てもらえるかも分からないし、売り上げ保証もできない。飲食店にとって稼ぎどきにクリクマへの出店を決めていただいたことは本当に嬉しく、心から感謝しています。

こうして出店交渉を重ね、初年度は、10店舗の飲食店が揃いました。

初回の飲食出店の一覧


一般枠と主催者枠の2つの出店枠

ちなみに、クリクマに出店していただく一般枠の飲食店には「食事のみ」提供をお願いしています。

ドリンク販売は主催者の専売とし、主催者直営又は役員メンバーがヒュッテを構えて「ホットワイン」や「ビール」、「ホットチョコレート」、「スパークリングワイン」や「ソフトドリンク」などを販売。そこで得た収益は実行委員会の貴重な資金収入の一つとして、会場設営費や運営費に充てています。

イベント全体の企画・主催をしながらも、役員がヒュッテ店舗を運営しながら、イベント資金を稼いでいます。そんな、主催者・役員店舗をご紹介します!

◆「ホットワイン」店舗は、実行委員会直営店舗として運営

主催者直営の「ホットワイン」店舗

◆「ビール」店舗は、クラフトビール工場を経営するユーサクが担当

ビールは、ユーサクが担当。
ユーサク手作りのクリクマ専用ビールサーバー
(すごい!)

◆「ホットチョコレート」店舗は、Dr.シマヅさんが担当

毎年長蛇の列ができるDrシマヅさんの「ホットチョコレート」店舗。


◆「コーヒー」店舗は、チカオが担当。

何を販売しているかわからない「コーヒーショップ」。
お客さんは少ないが、毎年「一番の写真スポット」。
何を販売しているかわからない「コーヒーショップ」。
お客さんは少ないが、毎年「一番の写真スポット」。

◆「スパークリングワイン」「ソフトドリンク」は、僕アラキが担当。

ドリンクショップは、僕・荒木の担当です。

役員メンバーは、それぞれがヒュッテ装飾などにもこだわり、身内で装飾の評価競争をしています。

2年目からは飲食審査を出店の条件に。

初開催のときは自分たちで飲食店をリサーチし、交渉するといった方法をとりましたが、2回目以降は審査の過程で必ず試食をすることにしました。役員会議で候補にあがった飲食店の食べ物は、持ち寄るかお店まで食べに行ってみる。

回数を重ねるにつれて大きいイベントへ成長すると、「ウチも出店したい」とおっしゃる飲食店が増えます。公平性と専門性をしっかりと担保するためにも、飲食店のオーナーさんにプレゼンをしていただき、味もしっかり確かめたうえで、出店者を決めることにしたのです。

さらに今年(2022年)からは、飲食の専門家にも加わって頂き、新たに実行委員会の中に「飲食審査委員会」の特別組織や審査基準を設け、出店者を「公募」することにしました。

ちょうど5月24日から募集を開始したところで、エントリーしてくださる飲食店のオーナーさんには、すべて面談と試食を行います。(これまで出店してくださった方も同様です。)

より良いもの、自信をもってオススメできるメニューを多くのお客様に楽しんでいただくために、飲食部門の審査を今まで以上にしっかり行う体制を整えた形です。

審査委員として、僕ら役員メンバー6人に加えて、1回目の開催から出店してくださっている『ひばり工房』の池田さん、そして『イルフォルノドーロ』の原田さんにも参加していただくことにしました。

おふたりはクリクマの主旨や僕たち役員メンバーの思いもよくご理解くださっていますし、初回から加わってもらっているおふたりは、食のプロとしての視点から質疑応答できる。なんたって、初回の様々なリスクも一緒に、ビクビクしながらこれまで乗り切ってきた同志。

しかも、通常の店舗とは勝手が違います。長い行列ができている人数ぶんのオーダーを、あの小さなヒュッテの中でさばいていく適応力が求められる。
そのオペレーションを熟知されているおふたりに審査委員として仲間入りしていただけたことは心強く、7月に開催する飲食審査会を今から心待ちにしています。

こうして飲食のプロたちも加わった飲食店選びの体制が整い、狭き門を通過した飲食店が、今年12月の会場にラインアップする予定です。来場される皆さん、どうぞ楽しみにしていてください! 

次回のnoteでは、雑貨販売や会場装飾の準備をどうするか? について紹介していきます!!
続きはコチラです!


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