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人材紹介会社経由の転職で大変な目に

こんにちは。あらきん(@arakin_1019)こと弁護士の荒木優子です。

今回は、初めての転職を仲介会社を通して行い、大変な目に遭ってしまったドクターのお話をしたいと思います。ドクターのことをA先生と呼びます。

この記事の公開にあたっては、A先生ご本人の了解を得ており、自分と同じ目に遭わないように、他のドクターの参考にしてほしいとの言葉も頂いています。 

A先生にインタビューした内容をまとめました。

1.転職の経緯

A先生は医局を離れて初めての転職先を探すため医療系の大手の人材紹介会社に登録しました。

A先生は、週4日、常勤医師、未経験OK、自由診療メインのクリニックで、自宅から通勤しやすいクリニックを探していました。

人材紹介会社X社から、A先生の条件にあうクリニックを3つほど紹介されました。そのうちの1つがA先生が入職することとなるYクリニックです。

Yクリニックの院長は女性の医師でしたが、A先生が見学に行ったときには、男性の医師が診療をしていました。

3つのクリニックは、勤務日、給与等の待遇、診療・手技の内容は、ほとんど遜色ありませんでした。

A先生が3つのクリニックの見学と面談を終えた後、人材紹介会社X社の担当者がわざわざA先生のご自宅の近くまで来てA先生との面談を希望し、猛烈にYクリニックを推薦したそうです。

人材紹介会社X社の担当者曰く、社会保険完備、有給休暇も取得可能、未経験でも丁寧に教えてくれる、前院長も産休まで取得できる福利厚生が充実したホワイトな環境のクリニックとのことでした。

また、更に最初に提示していた給与に上乗せするので、是非Yクリニックに入職した方が良いと勧めてきました。

A先生は、Yクリニックへの入職を決めました。A先生は、入職する数か月前に入職届にサインをして提出しました。

2.驚きの入職当日

A先生が、約束の入職日にクリニックを訪れると、クリニックの看板がA先生の名前のクリニックに変更されていました。その後、クリニックの実質的なオーナーからある書類を保健所に提出するように求められます。

診療所の開設届です。A先生は、実質的オーナーに言われるがまま提出してしまいました。更に、実質的オーナーから医師名義でないといけないと説明され、クリニックの入居するビルの賃貸借契約や医療機器のリース契約の名義もA先生の名義に変更させられてしまいました。

更に、A先生以外に医師はおらず、見学の際に会った男性医師も退職したようでした。そのため、A先生は、未経験でしたが医師から学ぶことができず、自ら学ぶしかなかったのです。

A先生は、雇用されて常勤の勤務医として勤務するつもりが、クリニックの開設者となってしまったのです。

もちろん、社会保険も完備されていませんでした。A先生は、自身で国保に加入することになりました。

3.人材紹介会社の担当者に問い合わせるも

聞いていた話と違うと思ったA先生は、人材紹介会社X社に問合せますが、担当者で無いと分からない、担当者は退職したと門前払いをされてしまったそうです。

また、担当者の話よりも実際に締結した内容が優先されますと全く取り合ってくれなかったそうです。

4.辞めたいけど辞められない

詳細は省きますが、A先生がクリニックに勤めるなかで、耐えられない事項が積み重なりある件をきっかけに、実質的オーナーに退職を申し出ます。

しかしながら、実質的オーナーは自分たちはコンサルで責任者はA先生だから…とあしらわれてしまいます。どうしても辞めたいのなら患者さんの未消化の分の金銭的負担を要求されてしまいました。

美容系のクリニックでは、〇回分をまとめて最初に一括支払いor医療ローンを組んで支払いを行うことも多く、患者さんの消化が終わらないと事前に受領した分の返金問題が生じてしまいます。

また、クリニックに関するあらゆる名義がA先生のため第三者との関係ではA先生が法的な責任を負います。

そのため、通常の勤務医のように退職届を提出して退職もできません。A先生が名義となっているあらゆる契約関係を解消する必要があります。

A先生は、実質的オーナーがクリニックの承継先を探し出し、契約関係も全て承継させることができ、何とか、クリニックを"退職"することができました。

5.A先生よりほかのドクターへアドバイス

少しでもおかしいと気になったら、白黒ハッキリさせてから、話を先に進めること、契約書にサインすること

 初めて転職する場合、若いドクターの場合、特に〇〇だから~ともっともらしい理由を言われると言い包められてしまいがちなので気を付けてほしい。

人材紹介会社のウェブサイトに掲載されている情報だけでは、どういうクリニックか分からない。きちんとしているところもあれば、驚くほど管理がされていないところもある。医療法人が運営主体の場合でも二極化していると思う。

見極めるには、そのクリニックで試しに働かせてもらうことが有益だと思う。実際に働いてみないとどういうクリニックか分からない。スポットで美容のバイトにいくつか行ったが、クリニックによって全然違うことを感じた。

クリニックの患者さんの口コミも参考にならないと思う。美容系のクリニックはエステとの価格競争にさらされていて、医学的見地ではなく、患者さんからみると希望通りにしてくれるクリニックの方が評価が高いと思う。

6.A先生からのメッセージ

A先生から直接のメッセージも頂きましたのでご紹介します。

初めての転職だったこともあり、完全に無知な状態で転職活動をしてしまいました。大手紹介会社を介している安心感から、不用心に雇用契約を結んでしまったこと、勤務についてしまったことを本当に後悔した数年間でした。
荒木先生にご相談する機会がなければ未だに退職できず、悩み続けていたことと思います。駄目な例ではございますが私自身が感じた教訓が、転職を考えていらっしゃる特に若年の先生方のご参考になれば幸いです。

(おわり)



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