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短編「魔王」脚本
ショート歌劇「魔王」
息子 折田ジューン
お父さん 井上貴々
魔王 根魏山リョージ
娘(語り部) だんしんぐ由衣
〇タイトル表示/①黒背景、白抜き文字→②夜の森の背景、白抜き文字。
① Remote Short KAGEKI
② 魔王
〇本編
【SE】風雨
部屋。
横たわり、熱にうなされている息子。
息子「うーん、うーん。熱い、体が熱いよー」
一升瓶を傍に晩酌中の父親、画面入室。
お父さん「お〜い、息子よ、どうした!?」
息子「お父さん、体が、体が熱いんだよー」
お父さん「なにい?今すぐ駆けつけてやりたいが、別居中だからな!一人で病院に行けるか!?」
息子「うーん、心細いよ~。でも、頑張ってみる」
息子、体を起こす。
魔王、画面入室。
息子「は!?わーー!」
お父さん「どうした!?」
息子「だ、誰か入ってきたー!」
お父さん 「なに?」
父、画面をチェックする。
お父さん「何言ってんだ、誰も入ってきてねえだろ」
息子「ええ!?何言ってるの!めちゃくちゃ入ってきてるよ!誰だお前はー!?」
お父さん「おい、しっかりしろ!」
魔王「私は」
お父さん「大丈夫か?」
息子「しっ!答えようとしてる!誰だ?」
お父さん「え?」
魔王「私は、魔王だ」
息子「ま、魔王だーー!お父さん、魔王がいるよぉ!」
お父さん「なに?」
父、飲んでいた一升瓶の銘柄を確認。ラベルには「魔王」の文字(手書き)。
お父さん「(ニコニコで)居るよぉ〜、魔王居るよぉ〜!」
息子「わああ」
息子、恐怖で顔を隠す。
お父さん「おい、坊や、なんで顔を隠すんだ?」
♪息子「お父さん、そこに見えないの?魔王がいる 怖いよ」
お父さん「坊や、それは霧だ」
息子「え、霧?」
♪魔王「かわいい坊やおいでよ」
息子「霧じゃなーい!」
♪魔王「おもしろい遊びをしよう」
息子「なんか、遊びに誘われてるよぉ?」
お父さん「誰かだ、こんな夜中に」
♪魔王「川岸に花咲き きれいなおべべがたんとある」
♪息子「お父さん お父さん」
お父さん「なんだ!?」
息子「聞こえないの?」
お父さん「なにが!?」
息子「魔王が何か言うよ」
お父さん「なあに、あれは枯れ葉のさざめきだよ」
息子「え、そうなのかなあ」
♪魔王「坊や」
息子「やっぱりいるよー!!」
♪魔王「一緒においでよ 用意はとうに出来てる 娘と踊って遊ぼうよ」
息子「娘?娘なんてどこにも」
猫を抱いた娘、画面入室。
息子「いたー!!!また入ってきたー!そしてなんで猫―!?」
【SE】雷
お父さん「さっきから何言ってるんだ!」
息子「お父さんこそ何言ってるの!画面が最初の二分割から今や四分割になってるよ!!」
お父さん 「なってねえよ!」
息子 「なってるよ!」
お父さん 「なってねえつってんだろ!」
息子 「なってるよ!!」
魔王、食い気味に
♪魔王「歌って おねんねもさしたげる」
娘、微笑。
息子「ぎゃーー!」
♪魔王「いいところじゃよ さあおいで」
息子「誰が行くかー!」
お父さん「いや病院行けって!」
♪息子「お父さん お父さん それそこに 魔王の娘が」
お父さん「違うっつーの、それは、枯れた柳の幹だ」
息子「そんな馬鹿な!」
♪魔王「可愛いや いい子じゃのう坊や じたばたしても さらっていくぞ」
♪息子「お父さん お父さん 魔王が今 坊やをつかんで連れてゆく」
お父さん「いい歳して誰が坊やだ!」
息子、静かに息絶える。
お父さん 「ん?」
♪語り部 「父も心 おののきつつ あえぐその子をいだきしめ」お父さん 「おーい、しっかりしろ」
♪語り部 「辛くも宿に着きしが 子は既に息絶えぬ」
魔王、娘(語り部)、してやったりの表情で退室。
お父さん 「おーい。なんだ寝たのか?」
返事のない息子。
お父さん「よし、なら俺も、寝るか!」
父、その場で寝る。
暗転。【SE】拍手喝采
カーテンコール。
四人、礼。
満面の笑顔。
【メッセージ表示】「No play , No life」
【ロゴ表示】「アートにエールを」
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