見出し画像

上海アート散歩①知っておきたい中国個人旅行の基礎知識【2025年1月版】

 2024年11月22日――日本の一般旅券保持者に対するビザ免除措置が、中国政府から電撃的に発表されました。期限は2025年12月31日まで。2020年3月から実に4年8か月ぶりのビザ免除復活です。

 この知らせを受けた瞬間、私はその日のうちに迷うことなく上海行きの航空券を手配しました。ここ数年で現代アート関連の美術館が次々と登場しているという噂を耳にし、その実態を自分の目で確かめたかったのです。

 もっとも、ビザなしで行けるとはいえ、中国への個人旅行は依然としてハードルが高いのも事実。中国ではGoogleが遮断されているため、必要な情報をネット検索で入手するのは困難を極めます。そこで【2025年1月】時点で実際に訪れた経験をもとに、上海個人旅行のTipsをここにまとめてみました。

事前に用意しておくもの

1.Alipay(アリペイ/支付宝)

 アリペイとWeChatペイが中国で必須なのは有名ですが、結論から言えば両方そろえておくのが鉄則です。一方だけでは対応しきれない場面が出てきます。両サービスが補完し合ってインフラを形成しているので、渡航前にそれぞれアカウント登録を済ませておきましょう。

・アリペイアプリをダウンロード
 アプリストア(App StoreまたはGoogle Play)で「Alipay」を検索・ダウンロードし、電話番号を入力してアカウントを作成します。SMS認証コードを入力すればOK。日本の携帯電話番号で問題ありません。「このページを翻訳する」ボタンもあります(WeChatペイにはないので便利)。

・実名認証
 「Me」→「Profile」→「Identity Verification」から実名認証を行います。パスポート情報と写真をアップロードし、数分~1日ほどで審査完了。

・クレジットカードの登録
 「Me」→「Bank Cards」→「Add a Card」で、日本発行のVisa、Mastercard、JCBなどを登録できます。SMSやセキュリティコードなどの認証を済ませれば使用可能になります。

・以前は観光客向け「Tour Pass」が必要という記事もありましたが、現在はサービス停止しています。特別な手続きは不要です。

 ここまで準備しておけば問題なく使えるはず。私もスムーズに利用できました。

2.WeChat Pay(ウィーチャットペイ/微信支付)

・ WeChatアプリをダウンロード
 アプリストアから「WeChat」を入手。電話番号を入力してアカウントを作成し、SMS認証で登録完了。こちらも日本の携帯番号でOK。

・実名認証
 「Me」→「Wallet」→「Verify Now」でパスポート情報を入力し、必要に応じてパスポート写真をアップロード。審査は数分~1日ほど。

・クレジットカードの登録
 「Me」→「Services」→「Wallet」→「Cards」→「Add Bank Card」を選択し、カード情報を入力します。これで支払いが可能に。

 なお、私の環境ではパスポート画像アップ後に「顔を斜めにして撮影」という本人確認がうまくいかず、認証に失敗しました。が、どうやら一部機能が制限されるだけで、支払い自体は問題なくできました。実際、旅行中は不便を感じませんでした。

3.中国の携帯電話番号のSIMカード

 アリペイやWeChatペイを使うには常にネット接続が必要です。Wi-Fiルータを使う手もありますが、VPN絡みで不安定になることがあるため、中国国内で使用可能なSIMカードを準備すると安心です。

 「中国 SIMカード」「中国 プリペイドSIM」でAmazonや楽天市場を検索すると、国内番号付きのSIMが見つかります。購入時は電話番号付きかどうか(eSIMはデータ専用が多い)、有効期限、データ量の制限などをチェックしましょう。

4.百度地図

 Googleマップ、中国の情報は使い物になりません。新しい地下鉄や道路、閉館したはずの美術館の情報などが錯綜しており、事実上利用不能です。美術館の開館時間は全て間違いです(これには辟易しました)。2024年12月に開業した浦東空港~虹橋空港を結ぶ高速鉄道の情報も皆無です。事前に旅行の計画を立てるとき、Googleマップを使うと大変なことになります。

 中国では百度地図高徳地図がメジャーですが、シェアの高さから百度地図を使う人が多いようです。

 とはいえ、旅行者にとって最大のネックが「お気に入り登録」の問題。アカウントを作るのに中国の電話番号が必要で、日本からだと登録できないため、事前に行きたい美術館をマッピングして計画を立てることができません。現地に着いてから以下を参考にアカウントを作りましょう。

・ブラウザで百度の公式サイト(https://www.baidu.com/)を開きます。
・ページ右上の「登录」(ログイン)をクリックし、「立即注册」(今すぐ登録)を選択します。
・登録画面で必要事項を入力します。
・中国の電話番号を登録します。
・8~20文字の英数字でパスワードを入力します。
・画像認証:表示されるキャプチャコードを入力してください。
・SMS認証:入力した電話番号に6桁の認証コード(SMS)が送られます。
・届いた認証コードを登録画面に入力して、「注册」(登録)をクリックします。

5.百度をブックマーク

 中国ではGoogleが使えないことを必ず頭に入れておいてください。中国のインターネットでは、いわゆる「長城」と呼ばれるファイアウォールにより、Google検索やGoogleマップ、Gmail、YouTubeなどが全く使用できません。旅行先での素早い情報収集のために、あらかじめ百度のトップページをブラウザにブックマークしておきましょう。

 意外と盲点なのが、Google翻訳も使えないことです。スマホのGoogle翻訳アプリにあらかじめ中国語の言語ファイルをダウンロードしておきましょう。中国に着いてから空港のWiFiでダウンロードしようとしても、遮断されていて不可能です。必ず日本にいる間にダウンロードしておきましょう。

 ちなみに中国の空港のWiFiは電話番号認証を求められるので、簡単に繋ぐことはできません。自分でインターネット環境を用意しておきましょう。

アリペイとWeChatペイの使い分け

1.両方使える場所

 コンビニ(便利店)や飲食店、ショッピングモールではほぼすべて両方使えます。どちらのQRコードも置いてあります。小規模店舗ではWeChatペイしか使えないと書いてある記事もありますが、今は屋台でもほぼ両方使えるはずです。

2.アリペイ(地下鉄)

 地下鉄やバスに乗るとき切符を買う必要はなく、アリペイやWeChatペイのQRコードを表示すれば改札を通れます。ですがほとんどの人がアリペイを使っています。QRコード表示までのタップ数が少ないからです。WeChatペイはLINEのように最初がトーク画面になっています。

 アリペイのトップ画面から、左上の都市の選択で「上海」→上部の「モビリティ」→「地鉄」をタップするとQRコードが出てきます。バスは「公行」から出てきます。乗るときも降りるときも改札にかざせば、そのまま自動で日本のクレカから引き落とされます。日本のSuica(Felica)のように大量の人を流れるようにさばく必要がないので、みんな改札の前で2秒ほど立ち止まってQRコードを出しています。

 QRコード乗車は今まさに日本各地で進んでいますが、これが旅行者には革命的に便利でした。韓国、台湾、香港でも日本のSuicaのようなICカードがありますが、どこも現金でチャージしないといけません。しかし中国のQRコード乗車は現金不要でそのままクレカから引き落とされるので大変便利でした。

 噂には聞いていましたが、本当に旅行中一回も紙幣を触る機会がありませんでした。ほとんどの旅行者は人民元を一回も見ることがないと思います。

3.WeChatペイ(美術館)

 美術館のチケットはWeChatペイで買います。美術館のカウンターで普通に買おうとしたら「ここで買う人は今は旅行者しかいないよ」と言われました。一度やってみると簡単で便利です。予約しないと入れない美術館もあるので、同じようにWeChatから日時を指定して予約します。

・美術館の公式WeChatアカウントをフォロー
 WeChatで美術館の公式アカウントを検索します(例:「上海当代艺术博物馆」)。日本の漢字だと出るときもあれば出ないときもあります。百度地図で日本の漢字で検索し、結果をコピペするといいです。現地に行くと「ここから公式アカウントをフォローして」というQRコードが出ていることもあります。

・チケット購入ページにアクセス
 美術館の公式アカウント内の「购票」から、展覧会の日時やチケット枚数を選択して購入ページに進みます。漢字なので何が書いてあるかだいたい分かります。

・WeChatペイで支払い
 チケット購入ページの支払い画面で「WeChat Pay(微信支付)」を選択します。登録済みのクレジットカードで自動的に決済が行われます。

・入館
 QRコードを見せれば入館できます。

 ある場所に直接行って現地で入場券を買おうとしたら、受付の大学生に「そういうのはないよ。WeChatペイしかないよ」と言われました。私が不慣れそうにしていると、
 「そうだ! あなたが私のアリペイに個人間送金してくれたら私がWeChatでチケットを買うよ。そのQRコードの画面を、あなたがスマホで直接写真に撮って、その画像を見せればいいよ」
 と提案してくれました。なるほど。これで無事入ることができました。なんて機転が利く学生さんなんだ…。こうした現地でのやりとりも中国旅行の醍醐味かもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!