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ういろのようでういろでない


これはビン入りのプリンを口に入れ、もぐもぐとしはじめた時に頭によぎった言葉で、その後すぐに自然と頭に思い浮かんだのは、中学校1年生英語の教科書だった。

Mike: これはういろうですか?
Ken:  いいえ、これはういろうではありません。

わが事ながら、毎日一体何を考えて生きているのか心配になってしまう。


そうそう、話をプリンに戻して。

「濃厚硬め」と書かれたシールがついた瓶入りプリンを口に運んだワタシの「頭の中によぎった言葉」と初めに書いたけど、本当は

「ういろの~ようで ういろでない(べんべん)」

という「メロディー」だった。

歌舞伎調って言えばいいのかな(違う?)。あの感じで。合いの手ももちろんばっちりだ。


って、全然戻ってないな…

で、その濃厚固めプリンの蓋をワクワクしながら開けると、濃厚固めプリンの上にはクリームが乗っていた。


プリンにクリームだなんて、さすが瓶入りプリンだ。


誰得だけど、生クリームをホイップしたら半分はスプーンですくって食べたいくらいワタシは甘いものが大好きだ。

小さい頃は練乳を吸っているのを発見されて怒られたのはもちろんのこと、粉のレモンティーをカメラのフィルムケースに入れて勉強机の引き出しに隠し、勉強していると見せかけて一生懸命舐めている所を後ろからフルスイングではたかれるような子供だった。

今では見かけることがほとんど無くなったフィルムケースは、ワタシの子供時代の「七つ道具」のひとつだ。

カメラのフィルムケースは粉を持ち運ぶのにものすごく便利で、ワタシの勉強机の引き出しには「レモンティー入り」のフィルムケースのほかに「ココア入り」「アップルティー入り」のフィルムケースも保管されていた。

もちろん「飲むためのモノ」として購入されたそれらの粉たちなのに、ワタシの保管庫にどんどんと詰められていくカレラは「飲み物」として消費できる量がかなり少なく、その件についてもよくチクリチクリと嫌味を言われていた。

「あっれーおかしいなぁ。こないだ買ったとこやのにもう半分しか残ってないやん~。アンタしらん?」

と犯人がわかりきっているにも関わらず、回りくどい質問で攻めてくる。


そんなオカンの子育てのモットーは

「隠し事をしていることがわかっても、直接ガーっと怒らずに『あたし知ってるねんで?』って遠回しに言うことで『お天道様は見ている』という姿勢を身に着けさせる」

だとワタシは勝手に思っている。

そしてそうやって育てられたワタシは「路駐が出来ない小心者」として無事に成長を遂げた(←


大人になり、粉のレモンティーはお湯に溶かして飲むのが当たり前になったある日のこと。

レモンティーをティースプーンにすくって舐めてみたところ、思いっきりむせて粉をまき散らかした。

口で息を吸い込んだのが敗因だろう。

涙目になりむせながら「思い出は思い出のまま美しくおいておくべきだったな」と感じたワタシは、むせたショックと思い出ほど甘くなかったレモンティーの粉への恨みだけを心に残し、そっとレモンティーの袋を閉じた。


プリンに話を戻そう。

濃厚固めプリンをホイップクリームと一緒にすくいとろうと、スプーンを挿しこんだ瞬間「ん?!」と顔をしかめたあと、パクっと一口。

「ほんまに硬いなぁ…」

と子がつぶやいた。


そう、濃厚硬めプリンを食べていたのは子。

ワタシはイチゴミルクプリンを食べていたのだ。

「ちょっと一口食べてみる?」と聞かれたワタシは、遠慮なくスプーンを濃厚硬めプリンのビンの中へとさしこむ。

ワ「硬いな」
子「やろ」
ワ「で、味は?」
子「プリン」
ワ「そうか」

さすがワタシの子。よくできている(←

そして、濃厚硬めプリンを食べたワタシは「ういろうやな」とつぶやいた。

頭の中には(初めに戻る



そのつぶやきを聞いた後、子がぽつりとこう言った

「遠慮なく持ってったな…ひとくちどんだけでかいねん…」

と。


(*'▽') カタスギル プリンハ ウイロウ


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