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極貧詩 317            旅立ち②

いよいよ卒業式が始まる
胸の中はホッコリしている
同時にドキドキしている

卒業生!起立!
司会の先生のよく通る低い声
予行演習の成果が証明される
一糸乱れぬ整然とした動き
会場にピーンと緊張が走る

校長先生式辞!卒業生着席!
小気味いい指示とそれに連動した動き
「卒業生諸君、今日は本当におめでとう!」
校長先生のスピーチが心に刺さる

3年間よく頑張りましたね
今日が中学生活の締めくくりですね
明日からは皆さんはそれぞれの道を進むことになります
ご両親、先生方、村の方々、友達から多くのことを学びましたね
皆さんの心の中に宝物があふれるほどたまりましたね
何か困ったことがあったらその宝物が必ず助けてくれます
今後の皆さんの人生は前途洋洋です
勇気を持って夢を持って自分の道を全力で進んで行ってください
行き詰まることがあったら中学校の学舎を見に来てください
学舎のあちこちに皆さんの努力が刻まれています
学舎の空気を思い切り吸い込んでまた歩みを進めて行ってください
先生方は皆さんのことはいつまでも覚えています
皆さんも先生方のことを覚えていてください
私たちはいつでも、いつまでも皆さんの味方であり続けます
さあ胸を張って大海原に飛び出して行ってください
皆さんへの心からの応援をお祝いの言葉として贈ります

校長先生の言葉の一つ一つが心の中に蓄積していく
卒業生一人一人の顔にゆっくりと順番に視線を当てる
その視線が私のところに向けられる
私の眼をじっと見てからわずかに頷いたように感じられた
パンパンに膨らんだ心の中が次々に埋まってくる
時々ホロっと心の中から涙の卵が産まれ始まている
「まだ涙は早いぞ!」と一生懸命我慢する
女子の中にはもう涙腺が崩壊している人もいる
男子はさすがに時々上を向いて涙腺の崩壊を食い止めている

3年生諸君ご卒業本当におめでとうございます
「3年生、起立!礼!」
校長先生が壇上から下りると
祝福、別れ、新しい門出、様々な思いが胸の中に渦巻く

一昨年も去年も同じように卒業式が厳かに執り行われた
卒業、わずか漢字2文字だが当事者にとっては限りなく意味深い
小学校、中学校と過ぎゆきし日々が今日の卒業に凝縮されている


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