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パイロット VS 台風

こんにちは、あらいぐま機長です!
今日は台風についてお話しします!

今年も台風が立て続けにやってきましたね!今回の台風はノロノロ台風で、僕も結構大変な目に遭いました。スケジュールはめちゃくちゃだし、直撃の空港には飛びませんでしたが、台風の上を飛ぶのも大変なんですよ。積乱雲がこれでもかというくらい立っていて、『これどこ飛ぶの?』って感じでした。

日本では8月の終わりから9月にかけて、台風シーズンに突入します。台風が来ると、エアライン業界はもう大混乱。飛行機は欠航になり、ちょうど夏休みの終わりの時期と重なるため、予約の変更を希望するお客さんが殺到し、空港のカウンターには長蛇の列ができてしまいます。時には怒りの声も飛び交うこともありますよね。

空港だけでなく、エアライン本社も台風が強ければ飛行機を避難させたり、パイロットや客室乗務員のスケジュールを組み直したりと、てんやわんやです。これは毎年恒例の「エアラインの風物詩」と言ってもいいかもしれません。

今日は、パイロットから見た台風時の運航の裏側についてお話ししていきます!


台風が飛行機に与える影響とは?

まず、台風で飛行機が欠航になる最大の原因は「風」です。台風が来るたびに欠航になると、お客さんはもちろん困りますし、エアライン側も1便につき数百万円~1千万円以上の損害を被ります。それでも、エアラインが欠航を決めるのは安全のためです。

台風で警戒するのは、特に「ガスト」と呼ばれる瞬間的に強く吹く風です。強風やガストによって飛行機の操縦が難しくなり、安全を確保できなくなるため、欠航が決まります。

また雷雨も飛行機の運航にとっては大きな障害となります。
雷雲が空港上空に入ってくると地上作業を行う人たちが危険にさらされるので、空港のハンドリングが一斉にストップしてしまいます。

たまに僕もそういう状況にあたることがありますが、着陸はなんとかできたものの空港のスポットが空いてないし、運よくスポットに入れたとしても地上作業ができないので飛行機のドアも開けられないし、最悪30分とかお客さんも含めて機内で待機…なんてこともあります。

台風の時にはこの状況が何時間も続くことがあるので、その間の便は欠航にしよう、という判断もあります。

METARとTAFから見る天気情報

ここで、僕らパイロットが実際に見ている天気情報を紹介します。
これは今年のものではないですが、台風が沖縄に接近して大量に飛行機が欠航した時のTAF:飛行場予報です。

沖縄の台風の日の飛行場予報

3行目の数字を見てほしいんですけど、23050G65という数字が並んでいますね!
これはどういうことかと言うと、230°の方向から50kt、一時的に65ktの突風が吹く予想ということになります。Gとはガスト、突風のことです。

65ktというと時速120kmくらいの速度です。人は立っていられないと思います。そんな風の中飛行機は…理論上は風が正体していれば降りられるんですけど、かなりやばいです。

『風は息をしている』と言われるんですけど、強い風が吹く時って一定の風が続くわけじゃなくて、息をするように強い風になったり弱い風になったりします。

宙に浮いている飛行機はこの風の変化をもろに受けてしまうので、やっぱり危険なんですよね。

ちなみに、僕が今まで見た中で一番強かった予報風はガスト99kt(時速約183km)です!
この数字以上はシステム上出せないので、実際はもっと強かったんだと思います。

運航判断の裏側

実際に欠航するかどうかは、エアラインの運航部とか、それを決める専門の部署があって、そこが決定します。
欠航の判断ってめちゃくちゃ難しくって、上のTAFは朝9時、15時、21時、3時の1日に4回出されるんですけど、全然変わるんですよね。
また今回の台風のように予報通りに動いてくれるとは限りません。

あんまり早めに欠航を決めちゃって実際はそんなでもなかった!ってなっちゃうとエアラインにとっても損失だし、お客さんも飛行機に乗れなくて困ってしまいますよね。逆にギリギリまで引き延ばして『やっぱ欠航!』としてしまっても『もう空港まで来てるんだけど!欠航するなら早く言ってよ!』となってしまいます。

最近は花火大会が豪雨で中止になることが多くて、Twitterなんかで判断が遅い!とか荒れちゃうことが多いですが、運営側も大変なんですよ。。

なので欠航かどうかの判断には機長は基本的に介入しません。
もっと上の階層、会社の運航方針に従うという形になります。

飛ばすことが決まったらパイロットは基本的には運航しますが、時には「やだなー」と思うことがしばしば。そりゃね。実際に台風の中に飛んでいく僕たちは怖いですよ。でも怖いと思うからこそ入念に準備を行うし、無理に空港に進入することはありません。

到着時間を調整して天気のいいタイミングを狙ったり、燃料を多めに積んで周辺空港でホールディング(待機)できるようにします。台風の予測は難しく、予報が外れることもよくあるため、行ってみないと分からない部分も多いんですよね、

台風時のフライトと着陸

台風時のフライトでは、揺れや積乱雲を避けながらの飛行が続きます。目的地に到着するまでに体力を使い切ってしまうこともありますが、最大の試練は着陸です。

ガスト40kt(時速約74km)の中の着陸なんか本当に大変です。気流が悪すぎてオートパイロットは役に立たなくなり、手動で操縦桿を動かしながら、スピードや高度、センターラインを維持しなければなりません。
ここで重要なのは、副操縦士の存在です。
機長が操縦に集中している間、副操縦士が冷静に状況を判断し、必要であれば「ゴーアラウンド(着陸のやり直し)」を提案することもあります。むしろ操縦に一生懸命になっちゃうとどうしても『おろしたい!』って気持ちが強くなっちゃうので、横で見ている副操縦士による冷静な意見ってとっても大切なんですよ。

また、最終的に着陸を諦めて引き返すかどうかの判断も機長の責任です。
『もう無理!帰る!!』ってなっても、ディスパッチャーからは『もう一回トライしてくれませんか?』なんて言われることもあります。

そんな時もパイロットは燃料や状況を考慮して、最終的に戻るかトライするかを決める権限があります。僕もそういう状況でATB:エアターンバックと言いますが、出発地に引き返した経験は何度もありますよ!

台風後の達成感と缶詰状態

無事に台風の中で着陸できた時の達成感は大きいです。でもその後は台風の影響でステイ先のホテルに缶詰状態になることもあります。

レストランとかのお店も閉まってしまうので、コンビニで食料を買い込んでホテルに籠もることになります…。
そんな時は、無事にフライトを終えた喜びを感じながら、ひとりでビールを飲んで乾杯するのが定番です!

以上、今日は台風と飛行機の運航について、パイロットの視点からお話ししました!
台風の影響を受けたフライトは大変ですが、その分、無事に運航できた時の達成感は格別ですよ。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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