パイロットの仕事
こんにちは、僕はアライグマ機長、アニマルエアラインでパイロットをやっています。これでも割とベテランなんですよ。
今日はパイロットの仕事について説明します。
パイロットって聞くと空港を歩くあのかっこいい制服姿はイメージできるけど、いまいちその仕事ってイメージできないですよね。
飛行機を操縦してるってことはわかるけど、コックピットの中で何をしてるのか、具体的にはよくわからないと思います。
だから具体的にイメージできるように、仕事の1日の流れから、パイロットがコックピットに入って何をしているのか、なるべくわかりやすく説明してみようと思います。
今日はアニマルエアー羽田空港発、那覇空港行きでシュミレーションします。
沖縄っていいですよね。
パイロットは当然、仕事で沖縄に行くことはよくありますが、ステイする時間がそんなに長くないので、あんまり海でゆっくりする時間はありません。
綺麗な海でのんびりしてみたいなー。
パイロットが制服に着替えて最初に行くのは、ディスパッチルームです。
空港に事務所が入っていて、その中にあります。だいたい飛行機の出発時間の一時間前にここに行って、フライトの準備をします。
フライトの準備
フライトの準備っていうのは、大きく分けるとフライトプラン、気象情報、航空情報の3つがあります。
フライトプランってのは飛行機にとっては大事なもので、全てのフライトに対して、その飛行の計画を航空局に提出しなければなりません。このフライトプランは管制官がその情報をみてこの飛行機がどの経路、高度を飛びたいのか知ることになります。また飛行機が行方不明、ってなんて事態にもこのプランを参照して捜索を行います。
プランには他にも積んでいく燃料の量や、機長の名前や搭乗者の数まで記載されています。
次に気象情報。パイロットはお天気をしっかりと確認してからフライトに行かないといけません。
みんなが出かける前に天気を確認して、傘が必要か考えるのと一緒で、ルート上や目的地の天気を考慮して積んでいく燃料の量を考えるわけです。天気が悪いとすぐに空港に降りれないかもしれないなら、たくさん燃料を積んで行って空港上空で天候の回復を待てるようかな、と考えるわけです。
また飛行経路や高度もなるべく悪い天気を避けて通りたいですからね。気象情報をみて飛行機がとるルートや高度を変えます。
最後に航空情報
これは飛行場やルート上の施設の情報で、先進国である日本でも意外にもいろんな施設が壊れてたり、メンテナンス中だったりします。
壊れているものを使ってしまうと事故につながることもあるし、ちゃんと確認しないといけません。海外の空港だとこれがたくさんあって結構骨の折れる作業になります。
さて、この辺が終わったらディスパッチは終わりです。シップへ向かいましょう。シップってのは飛行機のことで、航空に関することは海上の言葉が由来になっているものが多くあります。空に浮かぶ船って、ロマンのある言葉遣いですね。
客室乗務員、整備士とのブリーフィング
シップに着いたら、飛行機の出発のためのセットアップ作業を行います。
その前にお待ちかねの客室乗務員とのご対面ですね。
かわいいあらいぐまがいないかチェックする、、のは冗談として、フライトの概要とか、揺れの情報とかをパイロットと客室乗務員で共有します。
客室乗務員はこの情報をもとにサービスのやり方を変えます。揺れるところを避けて食事を出すとかですね。
次に整備士とのブリーフィング。
このシップがどんな状態か整備士から説明を受けます。
過去にどんな故障を起こしているのかも確認します。それがまた自分のフライトでも起こるかもしれないので、先に知っておくとスムーズに対応できるってわけです。
外部点検とプリフライト
それが終わったら外部点検。自分でも飛行機に異常がないか目視で確認します。
バードストライクの跡が残ってたりするから要注意ですね、鳥と雷はパイロットの天敵です。
最後に飛行機のセットアップ。知ってるかな?コックピットには上にも下にも右にも左にも大量のスイッチが並んでいます。
これを出発のための位置に全部入れてやらないといけません。間違えると大変なことになるスイッチもあるから、要注意ですね。
やっと準備が終わりました。お客さんをシップに迎え入れましょう!
お客さんの搭乗が終わったらまずはプッシュバックをします。
プッシュバック
知っていますか?飛行機ってバックはできません。でも飛行機は空港のターミナルに頭を向けて止まってますよね?
だから特別な車で飛行機を押し出して、自走できる位置まで動かしてやらないといけません。これには管制官の許可がいります。
管制官からの許可のことを全部クリアランスって言いますが、飛行機はクリアランスをもらわないと飛べないし、地上で動くこともできません。不便ですね。
プッシュバックが終わったら滑走路までタクシーします。と言っても車じゃないから、ジェットエンジンの推進力によって飛行機を転がします。大きな扇風機で前に進むようなものです。これであの巨体が動くんですから不思議ですよね。
羽田空港や成田空港みたいに大きな空港だと駐機場から滑走路までタクシーするだけでも時間がかかってしまいます。
離陸
やっとこさ滑走路に着いたらようやく離陸できます。これも管制官からクリアランスが必要です。
離陸について話したいことはたくさんありますが、今日は時間がないので別の機会にしましょう。簡単にいうと、スラストパワーをマックスに入れてかっ飛ばす!そんな感じです。
上昇、巡航
次に上昇、巡航フェーズ。ここまできたらやっと一息入れられます。
離陸直後はギアを上げたり、フラップを格納したり忙しいですが、オートパイロットを入れて、富士山くらいの高度からはのんびりと遊覧飛行です。
実際にこの時コックピットの中で何をしてるかというと、オートパイロットといえども、操縦桿を機械が動かしているだけのもので、どんな動きをさせるかをパイロットがインプットしてやらないといけません。
高度を何フィートまで上昇させるか、スピードは何ノットを守らせるのか、ヘディングはどの方向を向けるのか、これもさっきのクリアランスに沿ってインプットしてやるわけです。
簡単だけど、これも間違えると大変なことになります。とはいえ、基本的にこの辺はパイロットはリラックスしています。
巡航中も機内アナウンスを入れたり、他の飛行機の間隔との関係でちょこっと高度や速度、ヘディングを変えたりします。
沖縄までのフライトなら季節にもよりますが、2時間半から3時間くらいですね。これがかなり暇です。
アプローチ、着陸
長い長い巡航を終えると次はアプローチの準備に入ります。
ここがパイロットの腕の見せ所です。
まずは那覇空港の天気情報をとって、使用している滑走路、アプローチ方式なんかをフライトコンピューターにセットしてやります。これも間違えると大変なことになるので慎重に2人のパイロットで必ず確認します。
次に降下の計画を立てて、着陸までに失敗する要素となるものがないか、キャプテンとコーパイロットで共有します。
例えば空港の近くに入道雲が立ってて、避けないといけないだとか、風が強いから飛行機のコントロールが難しいから注意しよう、とかですね。
着陸までオートでいけるオートランドっていうのもありますが、アプローチ方式によって対応してなかったり、風が強いとできなかったりで着陸は大体マニュアル操縦でやっています。腕の見せ所ってわけですね。
でも実はスムースに滑走路に接地させることよりも、さっきまでの着陸の前段階の方が重要なんですよ。「どーんっ」ってつけちゃうとカッコ悪いですが。
アフターランディング
無事滑走路に接地したら、そのまま那覇空港の駐機場まで飛行機をタクシーさせます。
駐機場についてエンジンを止めたら、お客さんが飛行機を降りている間に、飛行機のシャットダウン作業を行います。パソコンと一緒で、急に電源を切ったら壊れてしまうかもしれません。飛行機を休ませるためのスイッチポジションに操作します。それが終わったらキャビンクルーと涙のお別れをして、今度は那覇空港にあるディスパッチルームへ向かいます。
ディスパッチルームでは揺れの情報など、後に飛んでくる飛行機のための情報を共有して、タクシーでステイ先のホテルに向かいます。
これでやっとビーチに行けます!次にお会いするときには日焼けあらいぐまになっているかもしれません。