カレンダーボーイ:8日
「シュー・ア・ラ・クレームがいいです」
しぐれの声に、洋菓子店のスタッフが目を丸くした。誇らしげに並ぶケーキや生菓子たちをいっぱい収めた大きなショーケースの上から、恐るべき二歳児を凝視している。初めて見る顔だから、新しいバイトなのだろう。
岳が相手を値踏みする間に、しぐれは小さくて短い人差し指をくちもとあたりにあて、「うーん」と首を傾げた。
「どうした?」
岳はしぐれを覗き込み、しゃがんだ。視線を同じ高さにして、改めて見上げるとショーケースは途方もなく大きい。
「やっぱり、クレーム・キャラメルにします。岳はどうしますか?」
「シュークリームかなぁ」
「おねえさん、シュー・ア・ラ・クレームとクレーム・キャラメルをひとつずつください」
しぐれの注文っぷりは堂々としたものだ。
スタッフはもう、目をまんまるにして、クレーム・キャラメルとシュークリームを小さな箱に詰めてくれた。
カレンダーに同梱するおはなしの一部です
カレンダーは12月中旬のお届けです
こちらは金具がある都合上、他の本との同梱はできません
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