#8『暮らしを保障する』8/8
金沢市で活動している『あらい淳志』です。
今日は、東京オリンピックの最終日ですね。
アスリートの皆さんのこれまでの努力に、深く敬意を表します。私も、スポーツの力を信じています。
同時に、コロナ禍はますます猛威を振るいつつあります。
現場で命がけで戦っている医療従事者の皆さん、自粛によって影響を受けている皆さんのご負担は、いかばかりでしょうか。深く心を痛めます。
政治に求められる使命は、コロナ禍を乗り越え、国民の暮らしと命を守ることです。
苦しいときだからこそ、みんなで支え合い、乗り越えなていかなければいけません。
苦しんでいる誰かのために。政治の力と、国民の皆さんの協力が不可欠です。
【日本への処方箋】
今日のテーマは、『暮らしを保障する』です。
前回の続きになります。
前回、私は、日本社会の最大の課題は、「国民生活の不安定化」であると指摘をしました。
大多数の皆さんが将来への明るい展望を描けず、消費が上向かないことで、経済がうまく回っていかないのです。
反対に、大多数の国民の生活が安定をすれば、消費が増え、経済はまた持続的な成長につながると、私は考えます。
すなわち、今の状況を変えるには、国民の暮らしを『安定』させる政策を打てばいいわけです。
この『暮らしの安定』のための具体的な政策を考え、実行をしていくのが、私たち政治家の役割となります。
今日は、その具体的なアイデアを、ひとつ紹介します。
①『ベーシック・サービス』を保障する
処方箋の一つは、『ベーシック・サービス』の保障です。
初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれません。
「ベーシック・サービス」って何??ってことですよね。
この考え方を打ち出したのは、慶應義塾大学・経済学部教授の井手英策先生です。
既にご存知の方も、たくさんいらっしゃると思います。井手先生の議論は、これからの日本の経済・社会保障政策に関する、最もホットな論点の一つです。この議論の提唱者、まさに第一人者になります。
詳しく知りたい方は、井手先生の本を読むのが一番いいです。ネット上にもたくさん記事があるので、ぜひ検索してみてください。
簡単にいってしまえば、『人が生きるために、必ず必要になる社会の仕組みを、全ての人に保障してしまおう』という考え方です。
全ての人間の暮らしを保障する
『人が生きるために、必ず必要になる社会の仕組み』。いったい、どんな仕組みでしょうか。
具体的には、子育て、教育、医療、介護、障がい者福祉といった分野になります。
たしかに、子育てや教育が利用できないと、人間は生きてはいけません。大人になることができませんから。
同じように、病気になったときに、医療が受けられないと生きていけない。
年を取って、体が思うように動かなくなったときに、誰かが介護をしてくれないと生きていけない。
障がいがあるときに、サポートがないと、その人は生きていけない。
ざっと考えて、少なくとも、こうした分野は、人間が生きていく上で、絶対になくてはならないものなのです。
にもかかわらず、今の日本の社会では、こうした仕組みを十分に利用できない。その不安がある人たちで溢れているような状況です。
いざというとき、お金が足りなくなるかもしれない。こうした仕組みを十分に使えるかどうか、分からない不安がどこまでもつきまとうのです。
だから、必死になって、お金を貯める必要が出てくるのです。
もし、子どもが生まれたときのために、いくらお金が必要なのか。子どもに教育を受けさせるときには、どれくらい貯金しないといけないのか。病気になったり、老後に備えたりするときには、どれだけ備えがあればいいのか。
多くの人が、その「もしも」に備えるために、「不安」を感じているのが今の日本の社会です。
非正規雇用が増えて、所得が減り、貯蓄も減り、社会保障はどんどん削られいく中で、昔よりもこの不安はどんどん大きくなっています。
この不安が、日本の経済に重くのしかかっています。不安を取り除かないと、自分でお金を貯めておかないといけないから、消費が増えず、経済が停滞をしてしまうのです。
『もしも』に備える
貯金が必要なのは、『もしも』のときに備えるためです。生きていく上で、突然お金が必要になることがあるわけです。
私は、ここまで何度も言ってきました。『自分の力ではどうしようもできないもの』には、『社会』として備えをしておくべきだ、と。
「ベーシック・サービス」を全員に保障をするということは、全ての人の「もしも」に対して、社会全体で備えをしておくということです。
そうしておくことで、社会から脱落者を出さない。脱落者が出なければ、全ての人が同じ社会の一員として、その社会に貢献しようという動機付けにもなります。
自分は社会に支えてもらっているから、自分も社会のために貢献しよう。そうすることで、いざといきには、自分も社会から守ってもらえる。個人と社会とのwin-winな関係を構築できるわけです。
所得が低くたって、貯金がなくたって、不安を感じなくていいんだから、好きなものを買って、好きなように消費ができるようになります。消費が増えることで、経済が上向き、税収が上向き、経済全体が好循環を始めます。
自分が望む生き方で、自分がどんな生き方をしたいかに、集中をできるようになる。
怠けるようにはなりません。
むしろ、不安がなくなって、生き生きと自分の夢や目標に挑戦し、人のために働く余裕が生れます。相手のことを思いやる、社会について考える余裕ができるわけです。
自分の強みを生かした、イノベーティブな社会につながる素地ができます。
弱者を生まない社会を作ってしまう。
最低限の人間的な暮らしを保障してしまえば、格差への不満は大きく減ります。
無理矢理、結果の平等を目指す政策ではありません。むしろ、一人ひとりの自由な生き方、チャレンジを認める社会へとつながります。
そんな政策に、私も挑戦をしたいと思っています。
【財源をどうするのか】
財源は、大きな課題です。
井手先生は、全ての国民が広く負担を分かち合う「消費税」を主な財源としています。
私自身も、長い目でみたときに、そうした形での財源の確保は必要になるということを、否定はしません。
ただし、消費税というのは、逆進性が高い税目でもあります。特に所得が低い方々への過重な負担にならないような工夫が必要です。これには、『給付付き税額控除』といった仕組みが考えられます。
税負担の基本は、全員が社会の一員として、その負担を分かち合うことです。その中で、それぞれの所得に応じて、応分の負担をすることが大切です。
今の日本は、所得の低い人への負担が重い、反対に所得の低い方には負担が少ない社会になっています。
この税構造については、抜本的な見直しをしなければいけません。
消費税の議論は、こうした負担のバランスを見直してからでないと、国民感情としては、実現不可能だと思います。多くの国民の皆さんが納得をいただけるように、丁寧に合意形成をしてかなければいけません。
こうした税負担の改革案についても、のちのち記事を書ければと思います。
【改革ができない日本】
ここまで、国民生活の不安にどう対処すべきか、アイデアを説明してきました。
ベーシック・サービスの保障は、そういう意味では、大きな発想の転換に他なりません。少子高齢化という時代の変化に伴う、大改革です。
残念ながら、すぐにこうしたアイデアが実現するかは、見通せません。
これだけ立派なアイデアがあるにもかかわらず、どうして日本の国会は『改革』を断行できないのかが、次なるテーマです。
これは、与野党がスキャンダルや疑惑の追及で罵り合う『不毛』な国会とも深く関わっています。国民の政治不信の根源でもあります。
斬新な政策アイデアが、どうして国会を通じて社会に実装をされないのか。
そのためには、今一度、与野党が党利党略を超えて、国会の仕組みを作り直す必要があると思っています。
次回は、こうした『国会改革』『政治改革』がテーマです。
しばらく専門的な話題が続きますが、どうかお付き合いいただけますと幸いです。
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