【ポカチェ】実力が同程度ならアグレの方がレートは盛れる
こんにちは。ARAです。
みなさんは、アグレッシブなプレイヤーですか。それともパッシブなプレイヤーですか。
僕は、自分がどっちかわかりません。
気分でアグレッシブになったり、パッシブになっているような気がします(笑)
ところで、アグレッシブとパッシブ、ポカチェにおいて強いのはどちらでしょうか。
レートが盛れるのはどちらでしょうか。
これは、きのこ派か、たけのこ派か、そのレベルの問題かもしれません。
しかし、実は、理論上は答えが出ている問題なのです。
それは、タイトルの通り、
実力が同程度なら、アグレの方がレートは盛れる
です。
もちろん、アグレッシブだけど下手な人と、パッシブで上手い人だったら、パッシブで上手い人の方がレートは盛れます(笑)
この記事では、なぜそれが言えるのかを説明したいと思います。
なお、この記事はidenyanさんに監修していただきました。
idenyanさん、ありがとうございました!
本記事の流れ
この記事では、最初に主張の意味を厳密に定義したあと、次の2段階の流れに沿って理論を理解し、最後に、平均順位と分散の関係について考察して終わろうと思います。
まず、1段階目として、レーティング分布というものを考えることによって、理論の直感的な理解を目指します。
次に、2段階目として、シミュレーション結果を参照することにより、理論が計算に裏付けされていることを確認します。
最後に、平均順位と分散の関係について考察しますが、よく分からなくても、「基本的には今まで通り平均順位を上げることを目標にすればいいんだ」程度に思ってもらえたら十分です。
また、noteの最後に参考文献を載せました。
より詳細な理論が気になった方は、ぜひそちらを参照してみてください!
この記事は、文献の土台となる理論を、実際に数値計算で確かめたものとなります。
0.主張の厳密な定義
まずは、このままではあいまいな、タイトルの意味をはっきりとさせることから始めます。
まず、「実力が同程度」というのを、「平均順位が同じ」と考えてください。
次に、「アグレ」というのを、「分散が大きい」と考えてください。分散とは、簡単に言えば平均順位からのズレの大きさです。
例えば、平均順位が3.5位なら、3,4位よりも1,6位の割合が多い方が分散は大きくなります。
最後に、「レートは盛れる」というのを、「目標レートに到達しやすい」と考えてください。
要するに、「平均順位が同じくらいなら、分散の大きいプレイをした方が目標レートに到達しやすい」ということなのですが、分かりやすさと人の目を引くために、上記のようなタイトルにしました()
1.レーティング分布による直感的な理解
ではまず、直感的な理解を目指します。
次の、レーティング分布というものを考えてみましょう。下の図1を見てください。
これは、各試合後に、あるレートに位置する確率を表した分布になります。(試合は十分多い回数行うものとする)
横軸がレートを表しており、高さは、確率を表しています。
左が、分散の小さいプレイヤーのレーティング分布、右が、分散の大きいプレイヤーのレーティング分布です。
それぞれ、実力に相当するレート値があり、そこを頂点に、それぞれの分散に従ってばらつきがあります。分散が大きいプレイヤーの方が、広がりが大きいですね。
この時、それぞれのプレイヤーが目標レートG以上に位置する確率は、斜線部の面積になります。(Gより大きいレートの確率の総和がG以上に位置する確率にあたるからです)
図を見ると、斜線部の面積は、分散が大きいプレイヤーの方が大きいことがわかります。
よって、分散の大きいプレイヤーの方が、目標レートに到達する確率が大きいことがいえるのです。
以上が、理論の直観的な説明となります。
このnoteでは、分かりやすさのためにおおざっぱな説明にとどめましたが、レーティング分布についてきちんと理解したい方は参考文献[1]を参照してみてください。
2.シミュレーション結果による理解
それでは、シミュレーション結果を通じて、理論の理解を深めましょう。
シミュレーションでは、平均順位の同じ2人のプレイヤーを想定します。
簡単のため、次の極端な2人を考えてみましょう。
1人目が、各順位を等確率で取るプレイヤー。
つまり、1位を取る確率が1/6、2位を取る確率も1/6、6位を取る確率も1/6といった具合です。
2人目が、1位を1/2の確率で、6位を1/2の確率で取るプレイヤー。
2~5位をとる確率は0です。
冒頭でも述べましたが、2人とも平均順位は3.5位、分散は、2人目のプレイヤーの方が大きいです。
具体的には、1人目のプレイヤーの分散が約2.92、2人目のプレイヤーの分散が6.25です。(平均と分散の計算方法は気になったら調べてください)
では、この2人がそれぞれレート2600,2700,2800,2900に到達する確率、及び最高レートを計算してみましょう。
ただし、実戦での都合上、先ほどのレーティング分布における、あるレート以上に位置する確率とは違い、ここでは、試行中1回でも到達する確率を考えます。
条件は以下の通りとします。
・卓の平均レートはステージ6で2400(固定)、ステージ5で2150、ステージ4で1700とする。
・開始レートを2300として、1000戦を続けて行う試行を10000サンプルとる。
・3位は最低+1という条件を適用し、ステージ4,5落ちは考慮する。ステージ3落ちまでは考慮しない。
では、まず1人目のプレイヤーの結果がこちらです。
5回分のシミュレーション結果を取り上げます。
これを見ると、1000回も試行回数を重ねれば、2600には約44%の確率で到達でき、2700には7~8%程度の確率で到達でき・・・という感じですね。
最高レート(とても低い確率であることに注意!)は2800後半~2900前半です。
次に、2人目のプレイヤーの結果を見てみましょう。
こちらも、5回分のシミュレーション結果を取り上げます。
こちらは、1000回の試行回数のうちに、2600には約92%、2700には26~27%ほどの確率で到達でき・・・という感じですね。
最高レートも3100台と、全ての項目において1人目のプレイヤーを上回っていることが分かります。
今回のシミュレーションでは、単純な2人のプレイヤーだけしか取り上げませんでしたが、実際に、平均順位が同じなら、分散の大きいプレイをした方が目標レートに到達しやすいことが、確かめられたのではないでしょうか。
3.平均順位と分散の関係
2節まででみたように、平均順位が同じなら、分散の大きいプレイの方が目標レートに到達する可能性が大きいことが分かりました。
ただし、注意しないといけないのは、「平均順位が同じなら」という点です。
安定をとったプレイよりも、1位 or 6位みたいなプレイの方が推奨されるわけではありません。
例えば、新たに次のようなプレイヤーを考えてみましょう。
1位を4割の確率で取り、6位を6割の確率で取るプレイヤーです。
このプレイヤーの平均順位は4位、分散は6です。
分散は、1位から6位を等確率で取るプレイヤーよりも大きいことが分かります。(6>2.92)
では、このプレイヤーのシミュレーション結果を見てみましょう。
これを見ると、2600に行ける確率は2%に満たないくらい、2700には0.2%ほどの確率でしか行けませんね。
分散こそ、1位から6位を満遍なくとるプレイヤーより大きいもの、全ての項目において負けてしまっています。
これは、いわば当たり前の話で、例えば全ての試合で1位を取るプレイヤー(平均順位1位)の分散は0ですが、他のどのプレイヤーよりも良い成績をとります。
単に分散が大きいことが良いことではないということに注意してください。基本的には平均順位が大事です。
では、最後に興味深い事例を出してこの記事を終わりましょう。
次の1位を4.5割、6位を5.5割の確率で取るプレイヤーを考えます。
このプレイヤーの平均順位は3.75位、分散は6.1875です。
このプレイヤーのシミュレーション結果は以下のとおりです。
また、比較のために1位から6位を取るプレイヤーの結果も再掲します。
このプレイヤーは、2600に到達できる確率は約22%、2700に到達できる確率は5~6%と、こちらも、1位から6位を等確率で取るプレイヤーに負けてしまっています。
平均順位が低いので仕方ないですね。
ところが、2800に到達する確率、2900に到達する確率は1位から6位を等確率で取るプレイヤーを上回っています。
つまり、レート2800を目指すのであれば、1位から6位を満遍なく取るよりも、平均順位を犠牲にするが1位を4.5割、6位を5.5割というプレイングをする方が達成確率が高いということになります。
このような例が見られるように、分散が大きいということが、一つのアドバンテージであることが、実感していただけたのではないでしょうか。
(もっとも、今回の場合はお互いの平均順位が低すぎてそもそもの確率が小さく、実戦ではあまり意味のないものとなってしまっていますが・・・)
4.まとめ
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
簡単に、この記事のまとめをします。
まず、この記事でいちばーーーんお伝えしたいことは、タイトルでも、冒頭でも書いた「平均順位が同程度なら、分散の大きいプレイをした方が目標レートに到達しやすい」です!
ひとまずは、これだけ抑えてくだされば十分です。
そして、この理由を、レーティング分布を用いることで説明しました。
さらに、実際にシミュレーションでも、このことが裏付けらていることを確認しました。
最後に、平均順位の重要性を確認しつつ、分散が大きいということがアドバンテージであることが伺える事例を紹介しました。
以上が、この記事の全容となります。改めて、最後までお読みいただき、ありがとうございました!
5.参考文献
1.「分散ICM」 idenyan
https://drive.google.com/file/d/1mfq5QakdnzOoK0443XzzgiFPzziqbnr-/view
2.分散ICM【ポーカーの数学 #1】 idenyan
https://www.youtube.com/watch?v=jpEbu_JbLTk&t=570s