今日の科学 6月15日
1947年6月15日は、フランスの物理学者アラン・アスペが生まれた日です。
アスペはベルの不等式が成立せず、量子もつれという特殊な現象が起きることを実験を通して示し、量子情報分野の扉を開くことに貢献し、2022年にノーベル物理学賞を贈られました。
私たちの日常生活で起こる物理現象の多くのものが、ニュートンがまとめた力学の体系で説明できます。ただ、20世紀に入り、相対性理論、量子力学が発表され、ニュートン力学では説明できなかった現象も説明できるようになりました。
量子力学は、原子の中のようなとても小さな世界で起こる現象を説明するために使われる理論です。量子力学では、私たちの感覚からすると奇妙に思うような性質がたくさんあります。量子もつれは、そのような量子の性質の1つです。
量子もつれの状態をつくった2つ以上の粒子の間では、1つの粒子の状態が決まると、もう1つの粒子の状態が自動的に決まってしまうというとても強い相関を持っています。量子もつれの状態の2つの粒子は、1つが0の場合は、もう1つは1というように、片方を観測することで、もう一方の状態が確実にわかります。
ベルの不等式は、物理学者のジョン・スチュワート・ベルが提案したものです。この不等式が成り立つと、量子もつれの性質はないことになります。しかし、この不等式が成り立たない、つまり、破れていると、量子もつれの性質があることになります。
ベルの不等式の破れを実証に大きく貢献したのはジョン・クラウザーとアントンでした。クラウザーは、1970年代に量子もつれの状態になった2つの光子を使った実験で、ベルの不等式では説明できない破れがあることを発見しました。
ただ、当時の実験は装置が不完全だったこともあり、抜け穴についての議論も起こりました。この抜け穴をためのふさぐ実験をしたのがアスペで、この実験は大きく評価されました。
また、ツァイリンガーは3つの量子の量子もつれを利用して、離れた場所に一瞬で情報を送る量子テレポーテーションの実験に成功しました。
3人の研究成果は、量子コンピュータや量子暗号通信など、量子情報分野の研究が大きく発展するきっかけとなりました。その功績をたたえるために、2022年にノーベル物理学賞が贈られました。
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