今日の科学 5月19日
今日はセメントの日 。
1875年5月19日に、宇都宮三郎が国産のセメント(ポルトランドセメント)の製造に成功し、出荷されたことを記念した日です。セメントは コンクリート の原料の1つです。日本では第二次世界大戦後に、コンクリートが急速に普及しました。
日本では、コンクリートを近代化の象徴のように思う人が多いかもしれません。でも、世界に目を向けると、コンクリートは古代から使われていました。イスラエルのイフタフ遺跡からは、9000年前につくられたコンクリート製の床部分が発見されています。
古代のコンクリートで有名なのは、2000ほど前にローマで普及したローマン・コンクリートです。パンテオンやコロッセオなど、ローマン・コンクリートでつくられた巨大な建物が今でも残っていて、その技術の高さがうかがえます。
現在、世界中で使われているセメントは、ポルトランドセメントと呼ばれるもので、1824年にイギリスのレンガ積職人ジョセフ・アスプジンが発明したものです。このポルトランドセメントは幕末頃から日本にも入ってきました。
しかし、輸入セメントがとても高価であったことから、国産化の道を探り始めました。明治政府は化学技師の宇都宮三郎をヨーロッパに派遣してセメント製造の研究をさせました。そして、深川に官製セメント工場をつくり、1875年に国産セメントを出荷するまでになりました。
私の故郷、秩父に秩父セメント(現・太平洋セメント)が設立されたのは、1923年1月30日のことです。秩父のシンボルともいえる武甲山がセメントの原料である石灰岩でできていて、それ以来、秩父では武甲山を削ってセメントが製造されている。
武甲山の石灰岩からつくられたセメントは、日本の高度経済成長を支えたといわれている。同時に、環境破壊なども批判されている。僕の父は秩父セメントに長年勤めていたから、僕はセメント、武甲山の破壊によって育てられたようなものだ。秩父セメントができなければ、武甲山は昔の姿のままで、今よりも豊かな自然環境が保たれていたかもしれない。でも、秩父地域は今よりももっと衰退していたかもしれない。
この事実にどう向き合っていいかよくわからないし、答えも出ないまま、何十年も生きている。