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今日の科学 6月20日

今日は、ペパーミントの日。
ペーパーミント(ハッカ)が特産品である北海道北見市まちづくり研究会が、1987年に制定しました。6月の北海道が爽やかで、20日(はつか)とハッカの語呂合わせもあり、この日が選ばれました。北見市は1938年ごろに世界の70%のハッカ原油を生産しました。

ペパーミントの有効成分はメントールです。特有の香りと清涼感があり、ガムやキャンディーなどの食品、歯磨き粉、シャンプー、制汗剤、洗顔料、入浴剤、化粧品、医療品などに幅広く使われています。

メントールは有機化合物の仲間ですが、鏡像異性体が存在します。鏡像異性体というのは、分子を構成する原子の種類や数が同じで、分子式で書くと同じものになりますが、立体構造を比べると左手と右手のように重なり合わないものです。まるで鏡合わせのような関係ないので鏡像異性体と呼ばれています。

鏡像異性体を持つ分子は自然界にはたくさんあり、メントールはその1つです。ハッカやペパーミントに含まれていて、いい香りがするのは左手型のL-メントールです。右手型のD-メントールは消毒薬のようなにおいがします。

自然界では、左手型の分子と右手型の分子はしっかりとつくり分けられていますが、人工的に化学合成しようとするとそうはいきません。左手型と右手型が混ざった状態でつくられます。この左手型と右手型のつくり分けは、長い間、化学界の大きな課題でした。

この課題を解決したのが、日本の化学者、野依良治でした。野依のグループは、1980年にBINAPという人工物質に金属元素をくっつけた触媒を開発し、鏡像異性体を持つ化合物の左手型と右手型のどちらか一方を選択的につくる不斉合成を可能にしました。

野依のグループの開発した触媒はL-メントールだけを100%つくることに成功しました。この技術によって、人工のL-メントールを大量生産する工場がつくられ、世界中に供給されるようになりました。それまでよりも手軽に様々なミント製品を生産できるようになったのです。

野依良治は不斉合成反応の手法を確立した功績によって、2001年にノーベル化学賞を受賞しました。

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荒舩良孝
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