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今日の科学 5月28日

1942年5月28日は、アメリカの生化学者スタンリー・ベン・プルシナーが生まれた日です。彼は、牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)や神経難病の1つであるクロイツフェルト・ヤコブ病が、異常なタンパク質プリオンによって引き起こされることを発見し、1997年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

BSEやクロイツフェルト・ヤコブ病は、脳内の神経細胞が壊れてしまう病気で、長い間、ウィルスによって感染するものだと思われてきました。プルシナーは1972年から、クロイツフェルト・ヤコブ病と似た症状のスクレイピーに感染したハムスターを使い研究を始めました。

でも、クレイスピーの原因となるウイルスは発見されませんでした。ところが、精製して最後に残った部分がほとんどタンパク質だったため、タンパク質分解酵素で処理したところ、感染性がなくなりました。

そこで、プルシナーは1987年に、「クレイスピーの病原体は感染性のあるタンパク質(プリオン)である」とするプリオン仮説を提唱。そのあまりに独創的な仮説だったために、当時はインチキ科学者扱いされることもありました。

その後、プリオンタンパク質の遺伝子が正常な細胞にあることあり、正常なプリオンタンパク質がつくられることがわかりました。さらに、遺伝性プリオン病の家系で、この遺伝子に変異があることなどが発見され、プリオン仮説を徐々に立証していきました。

発表当時は、多くの研究者から非難されたプリオン仮説は、研究を積み重ねることで段々と解明されていきました。そしって、1997年にプルシナーはノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

プリオン病は正常なタンパク質が異常化して、神経細胞にダメージを与える病気です。でも、なぜ、正常なタンパク質が異常化するのかは、まだわかっていません。このしくみが明らかになれば、たくさんの病気を治す手がかりが得られるかもと期待されています。

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荒舩良孝
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