これほどに信頼をうけて嬉しかったこと
ドバイの展示会場での出来事です。
隅から隅まで見て回り、少々歩き疲れてきた頃、会場の隅の方へ行き、人気の少ないブースの前をのんびりムードで歩いていた時のこと。
ブースの奥からサウジアラビア人のオーナーさんが出て近づいてこられました。ん?熱心なサウジアラビアの方だなあと思い、目が合い会話が始まりました。
が、とんでもない方向にいったんです。
”うちは、プラスティックバックや食品を載せるプラスティックコンテナーを作っているんだ。”
それを聞いて、今回の展示会のテーマとは少し離れた商材だなあと思って
商品を眺めていました。う〜ん、商売になるマッチングポイントはどこだろう。。
多少疲れとぼんやり頭で考えていたので、相手からみると、不機嫌そうに見えたかもしれません。
どこから来たのか?という海外では当たり前の質問が入ってきました。
「日本人か?」そう聞かれ、
「日本人だ」と答え、
お互いの国のニュースや知識の交換が始まるのですが、ちょっと、ローカルな話題。
「〇〇(お菓子ブランド)を知っているか?」
「ん~○○は聞いたことないけれど、△△なら知ってるよ」
「ちがうちがう 〇〇だ!」
「知らないなあ。。」
次の言葉が、驚きです。
「○○にコンタクト取りたいので、○○のオーナーを探して教えて欲しい!
僕は こんな事をしたいんだ。この○○に話をしてみたいんだ」
”ん?なんか、すごいワールドに 引き込まれているの?私。”
”え~、それ、この商品とどう関係するんでしょ?”とか、
”なんで 〇〇なの?”とか、
ぼやけた頭は覚醒し、質問は矢継ぎ早に浮かぶけれど、
とにかく それにも増して、矢継ぎ早に話してくるサウジアラビア人。
静かになるまで聞くことに。
そして、最後にもう一度、目を見開いて、
「〇〇を知らないのか?」
「探せるのか?」
という言葉のくくりを聞いて 私が話し返す番になりました。
”いきなりそんな相談を受けてもなあ。”と思ったものの、
私が今聞かされて、依頼された?ことは、
① 探して
② 訳を話して
③マッチングさせるだけなので、
まあ、こういう機会は私の勉強にもなるかも知れないし、会社に損がでる話でもないので、お受けしようか。と名刺交換。
お受けした もう1つの大切な理由としては、
この方の発するオーラと、強い視線に触れた時、
あ~ 本気だな と感じるところがあったからです。
中近東の人たちは、意外に情緒的であり、そしてシャイで(女性の営業に対してだけかもしれませんが)あった瞬間は長めの挨拶も多いので、本気かどうか つかみづらい場面も多いのですが、
これまでに出会った熱心でストレートなお客様のその視線と、
このオーナーさんの視線は、とても似ていました。
もしかして 疲れてぼんやりしていた心身は、
回りくどい話術が溢れる中東にいて、
ストレートな話を受けやすい状態だったかもしれません 苦笑
日本に戻り、探し出すのは簡単でしたので、連絡をして、
主旨を話して、できるのであれば、直接話をして欲しいとお伝えしました。
まあ、考えれば 無責任なものです。
そのお菓子を買って社内の数人に配って 感想も聞きましたが、
ここまで私はいっさいビジネスのことを考えていませんでした。ボランティアでいいし、これも何かの縁の始まり 程度にしか思っていませんでした。
日本側のオーナーさんと話すのは電話でした。
この方は日本におられることが殆どなく、海外展開ばかりされておられました。
「中東はねえ、、、これまで話はいくつかあるんですが、どうも進まないんですよ。ドバイぐらいには出したいと思ったことはあるのですがね」
海外展開をされているので、話も早い始まりでした。
自分の中東諸国との関わりや経歴をお伝えし、
中東がなぜ進みにくいのかということに対する自分の考えと、
”サウジアラビア人の本気”を伝えることしか私にはできませんでした。
その後しばらくすると、二人は第3国で会う約束をしたようで、その知らせをメールでサウジアラビア人の方から受け取りました。
絡むつもりはここでもなかったので、ああそう、頑張ってね みたいな程度です。
1つ伝えたのは、〇〇さんには申し訳ないのですが、一度日本に来て、他のメーカーさんの味も試食したらいい。ということでした。もし、彼が来日するのであれば、本格的にビジネスとしてお話を始めてもいいということです。
そのうちに、二人は出会い、契約書の原案をサウジアラビア人より送ってきました。厳しい原案を読みなたら、上司とも、絡むなら 設備の出荷をお手伝いする程度だよねということで終わったのです。
何度チャンスを逃せば気が済むんだ!!と
思われている読者の方は多いことと思います。
そして何ヶ月か後に、契約したこと、店をつくる場所を知らせるメールが届きました。初対面の私を信用して託してくれたサウジアラビア人と、無責任な説明を信用してサウジアラビア人と話してくれた〇〇のオーナーさん。
この二人が合意して 中東諸国に店を出すことになったのです。
一号店が開店する前、まだ工事中のときに 私は その店を見に行き、彼と待ち合わせをし、店舗の向かいのカフェで話をしました。
店を出すのに大変な資金がかかっていましたが、彼の目は キラキラとひかり、
「やるしかないんだよ」と。
あら〜、こんな ひたむきなサウジアラビア人と出会えて嬉しいと心から思ったものです。その後も 時折 彼からは こんなことがしたいので という相談を聞きますが、なかなか 簡単には行きません。
ですが、ビジネスからお付き合いが始まったわけではないので、とても気軽です。そして 脱サラした今も、新しいビジネス案を言い合える関係は宝物だと、少なくとも私は思っています。