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初めてARアプリを開発する人が抱えやすい3つの悩みとその解決法

これからARの開発を始めたいんだけど何から始めたらいいですか?」という質問を受けることが非常に多くなりました。

AR技術に注目が集まり、自分のやっていることにARを掛け合わせることができないかと興味を持ってくれる人が増えていること自体はとても嬉しい一方で、同様の悩みを抱えている方々は一定数いると感じたので、そういった方々の力に少しでもなれるように、自分なりの考えをnoteにまとめることにしました。

本記事は「これからARアプリの開発を始めたいんだけどどうしたらいいかわからない人」のために、よく寄せられる3つの質問に回答する形でおすすめの勉強方法を紹介するnoteです。

注意)本記事は2019年7月時点での筆者が考える最適の方法であり、時間の経過に伴って方法や学ぶべきものも変化すると考えられます。その点にご留意の上、読んでいただけると嬉しいです。

どの技術から始めるのがいいの?

近年はARに投資する大企業やスタートアップも急増し、それに伴ってAR開発に使えるSDKやデバイスも急増しました。

開発者にとっては嬉しいことですが、初めてARの開発に関わる方にとってはどのツールを選べばいいのか迷ってしまうのではないかと思います。

今回、諸々のデバイスやSDKの紹介については省略しますが、結論自分はARKitとUnityを使ったAR開発から始めることをおすすめしています。

以下にARKitとUnityを使ったAR開発をおすすめする3つの理由をご紹介します。

開発事例や開発仲間が見つかりやすい

なんと言っても1番の理由はこちらです。ARKitとUnityを使ったARの開発事例はスマホARのなかでも1番多く事例があります。

何かしら開発する上で詰まってしまった時にWeb上で解決方法を探したり、アドバイスしてくれる人を見つけるのが容易になりやすく、これからAR開発を始める方には取っ掛かりとしてとても始めやすいと思います。

低予算で始められる

AR開発のスマホAR以外の選択肢として、グラス型デバイス上で動くARアプリの開発という選択肢もあります。

ただ、グラス型デバイスは現状まだ20〜30万円とデバイス自体が高いため、初めてARアプリ開発に取り組む方々には少し障壁が高いと感じてしまうかもしれません。

一方のスマホARの場合、そもそも今手元にみなさんが持っているケースが多いです。手持ちのiPhoneが古かったり、iPhoneを持っていなかったりしてARKit対応のiPhoneを購入する必要がある場合には機材購入の費用は発生してしまいますが、iPhoneであれば普段使いのスマートフォンとして購入することができますし、これを機に機種変更をするようなノリで始められると思います。

最悪ARの開発に心が折れてしまったとしても、最新のiPhoneが手に入ったと思えば、そこまで経済的な負担も大きくはないでしょう。そういった理由から最初の取っ掛かりとしてiPhoneを使うARKitをおすすめしています。

ちなみに最近ではnreal ligthというほぼサングラスと外見が変わらないグラス型デバイスが5万円台で登場してきていますので、こちらのようなデバイスの発売を待つという選択肢もありますが、いますぐ開発を始めたい人はやはりARKit x Unityが良いと思います。

注)nreal lightは2019年9月にデベロッパー向けに発売開始で、Androidのみ接続対応可能。

今後のAR開発に応用が効く

ARKitを使ってiOSアプリを開発する場合、Unityの他にXCodeを使って開発をするという選択肢もありますが、僕はUnityを使うことをおすすめしています。

理由は3Dオブジェクトを扱うことに長けており、一度Unityをマスターすれば他のARデバイスでの開発にも応用できるからです。

元々XCodeは2Dのアプリケーションを開発するために登場しました。一方のUnityは3Dのゲームを作るためのゲームエンジンです。そのため、UnityのほうがARのような立体的なコンテンツを扱うことに長けています。

最近ではこういったAR/VR開発をする際にはほとんどの場合、Unityが採用されています。Hololens、Magicleap、nreal lightもすべてUnity向けのSDKを真っ先にリリースしています。

このように今後他のスマホARやデバイス型デバイスのARを開発する際にもUnityを習得することは大きな強みとなります。

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これらが僕がARKitとUnityを推す理由です。ちなみに「Macbookも持ってないし、スマートフォンもAndroid」という方にはARCore x Unityを推すこともあります。ARCoreとARKitは機能的には似ているところも多く、ARCoreで開発する開発者もそれなりにいるためです。

そのあたりはご自分のお財布事情や開発環境も鑑みながら選択されるとよいと思います。

どうやって開発の方法を学べばいいの?

それでは次にARKit x Unityで開発を始めるときに、どのように情報をキャッチアップしていけばよいかについてご紹介します。

まず開発を始めるためには、Unity自体のキャッチアップから始める必要があります。

Unityのキャッチアップは北村愛実さんの「Unityの教科書」が1番おすすめです。

北村愛実さんはUnityの教科書をUnity5の頃から、Unityのメジャーアップデートごとに教科書を出版しています。

初心者にもわかりやすく、取っ付きやすい内容になっており、とてもおすすめです。自分自身もUnityが初学者だったころは本当にお世話になりました。

そしてARKit x Unityのキャッチアップについても北村愛美さんのおもちゃラボブログがおすすめです。

こちらの記事ではARKitとUnityでスマホARアプリを作る手順がセットアップから丁寧に記載されています。

しかもARKit2で追加された機能やそれを活用した開発事例についても最近も更新されており、自分でなにか作る際のヒントとしてもとても役に立ちます。

またこのおもちゃラボブログではUnityのShaderについても詳細にまとめられているので、Unityでもっと凝ったものを開発したいとなった場合にも学べることがたくさんあります

なんだか北村愛実さんのご紹介ばかりになってしまいましたが、彼女の本や教科書は本当に初心者にもわかりやすく丁寧にかかれているので、これからUnityを使ってAR開発を始める方にはとってもおすすめです。

Twitterでも情報発信をされていらっしゃるので、気になる方はTwitterもチェックしてみてください。

どうやってアイデアを考えるのがいいの?

開発ができるようになってきたら、今度はARを活用したアイデアを考える必要があります。

アイデアを考えるのはワクワクする一方で、なにもインプットせずに作ると途中で「あれ?なんか違うぞ?」となってしまい、段々と何を作ればいいのかわからなくなってしまいます

自分もAR開発に関わり始めたときには、作り終わってみると「なんでこんなものを作ったんだろう?」というようなものになってしまったり、よくよく人に話を聞くと過去に似たような事例があったりしました。

今回はARのアイデアを考える上でおすすめする学習方法を3つお伝えします。

ARの教科書を読む

まずおすすめするインプット方法が「ARの教科書」を読むことです。こちらARの技術的な説明から過去に研究されたARのユースケースなどについて詳細に載っています。

まずはこの本を読んで、AR技術周りに関する用語や知識をインプットすることをおすすめします。

特に過去にAR技術でどのような研究がなされていたのかを学ぶと、車輪の再発明を防ぐことができると同時に、過去の事例を応用して新しいアイデアを生み出すことができます。

過去にMerucariさん主催で「ARの教科書輪読会」がcluster上で開催されました。こちらの発表動画や資料がまとめられているWebページもあるので、もし気になる方はこちらもチェックしてみてください。

既存のARアプリを触りまくる

すでにストアなどで公開されているスマホARアプリを触ってみるというのも大切です。

既存のARアプリを触ることで、アイデアのヒントになるだけではなく、自分の身体で「どんなAR体験が面白いのか?」「どんなAR体験が気持ち良いのか?」を体感することが可能になります。

以下に自分がおすすめのARアプリから4つほどご紹介します。

★ARCore Elements

こちらはGoogleが提供するARアプリのデザインガイドラインをARアプリ化したものです。

冒頭にARKitをおすすめしたのに恐縮ですが、このアプリは一見の価値があります。ARアプリの開発に力を入れるGoogleのARデザインの知見が詰まった作品です。

もし手元に対応デバイスがなくて、体験できないという方は過去にこちらのアプリのレポート記事を書きましたので、そちらを参考にされてみてください。

★ペチャバト

ペチャバトはARで弾を打ち合う対戦ゲームです。このアプリの面白いところは手軽にAR空間を共有して、複数人でARを体験できるところです。

通常のARアプリの場合、AR空間の共有を実装しているアプリはなかなかなく、一人でしかARを体験できないアプリが大半を占めます。AR空間を共有できないARアプリは体験が個人に閉じてしまうので、ユーザー間でのコミュニケーションが生まれず、体験として飽きられてしまうケースが多いです。

しかし、ペチャバトはアプリ内のQRコードを友達に見せ合うだけで簡単にAR空間を共有することが可能で、複数人でARを活用して遊ぶ事ができるようになっています。

ゲーム自体も面白いですし、開発者としてこの体験共有の手軽さも勉強になります。

★WannaKicks

WannaKicksはWannaByというスタートアップが提供するスニーカー試着のARアプリです。

自分の足にスマホカメラをかざすだけで自分の足にスニーカーをオーバーレイすることができ、試着した感じをARでサッと見ることができます。

WannaKicksは技術も面白いですし、アプリの作りなども優秀でユーザーが気に入ったであろうスニーカーのAR画面からのECサイトのリンクへの誘導もとてもスムーズです。

また最近ではGUCCIとも提携して、GUCCIの公式アプリにWannaByのAR技術を利用するケースなどもでてきており、ARスタートアップの技術展開の仕方についても学ぶことが多い企業です。

★The New York Times

New York Timesといえばアメリカの有名なメディア企業で、ARとは無縁だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし現状、New York TimesほどARとニュースメディアをかけ合わせた可能性を模索している企業は無いと思います。

New York Timesは記事中に写真や動画と同列にARコンテンツを並べて、読者にシームレスなAR体験を提供するための記事やアプリの設計に関してかなりの研究を重ねています。

New York Timesの提供するアプリ「The New York Times」でAR対応の記事を閲覧いただくと、記事中でARコンテンツを体験することが可能です。

ただARコンテンツを見せるだけにとどまらず、ユーザーとARコンテンツの位置関係に合わせて情報やアニメーションを変えているのも面白いポイントです。

また最近ではARコンテンツだけではなく、記事の背景を3Dで立体的に見せることによってより読者の没入感を誘うような記事も作成していたりします。

このようにNew York Timesが実装しているメディアの中でのARコンテンツの活用方法はきっとみなさんのアイデアの参考になると思います。

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以上おすすめの4つのARアプリのご紹介でした。他のおすすめARアプリについては過去に自分のTwitterでご紹介していますので、ぜひTwitterのタイムラインを参考にされてみてください。

また少し古いですが、昨年に自分がおすすめするARサービスについても別noteでまとめていますので、そちらのアプリもぜひご覧になってみてください。

MESONも利用しているARサービスデザインについて学ぶ

最後におすすめするのは弊社でARサービスを作る際に活用しているARサービスデザイン手法のインプットです。

優れたARサービスを考える上でどのようにアイデアを出していき、サービスを設計していくのかについて学ぶことでより面白く、ユーザーに愛されるARサービスを作ることができます。

ARのサービスの作り方というのは世の中的に未だに正解がなく、設計手法もなかなかまとめられたものがありません。弊社ではこれまでのARプロダクト開発経験から「どんなふうにARサービスを設計するのがよいのか」を形式化して、社内のARプロダクト開発に活かしています。

詳しい説明については弊社代表の梶谷が別のnoteで丁寧にまとめてくれているので、そちらをぜひご覧になってみてください!

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以上、これからARアプリの開発を始めたい人におすすめする開発の始め方でした。

上記の方法を取り入れることで、これまでAR開発に携わったことがない方でもスムーズにAR開発に取り掛かれることができます。

もしその他のことでなにかAR開発に関する質問などがあればいつでもTwitterのDMでお待ちしていますので、ご連絡ください。

終わりに

弊社では一緒にAR開発を行ってくれる開発者やデザイナー、ディレクターの方を大募集しています。

またプロジェクトとしてARアプリを開発することを考えていらっしゃる企業さまもぜひお声がけください。

一緒にユーザーにとって本当に価値あるARアプリを作りましょう!!

ご連絡はTwitterのDM、もしくは会社サイトのコンタクトフォームよりお待ちしています。


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