ハゲ話し
僕は体毛が濃い。
最初に気になりはじめたのは、小学校の4,5年生位だと思う。周りの子に比べて明らかにすね毛が多い…
小学校の一大イベント運動会の前夜、父親の剃刀を使い、すね毛を剃った。
風の噂で、剃ったら余計に濃くなるという話しを聞いていたが、全校生徒プラスその親御さん達に見られて、辱めを受けるくらいならと、
今回一回だけ、
毛の神様にそうお願いしながら、ドキドキしながら剃った。
それから約30年…
毛の神様の怒りに触れたのか、40歳をこえた僕は
剛毛になっていた。
特に25歳を超えたあたりから神様の力が強くなり、毛が増え続けた。
ただ、不思議なのが、身体中の毛の量、質と反比例して、髪の毛が薄くなってくる。
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何故だ。何故に身体中の毛が生き生きして強くなっているのに、人間にとって大事な脳を守る髪の毛が薄くなるのだ。
理不尽だ。
納得できない。
いや、意味わからん。
書いていて腹が立ってきたので
「GWで12連休あたったから、ヒゲ伸ばしチャレンジ」の予定を変更して、ハゲ話しをする事にする。
前振りが台無しだが、吐き出させてもらう。
最初違和感を感じたのが、忘れもしない27歳の8月下旬。
鏡に映る頭皮を見て唖然とした。
元々、柔らかい系の髪質&体毛多い&親父ハゲのトリプル攻撃で、将来ハゲそうだな〜と、漠然と思っていた。
しかし、回避出来るならハゲたくない、
いや、ハゲは絶対に嫌だ
心のどこかでずっと思っていた。
しかし、それは突然やってきた。
鏡に映る向かって左側、オデコの生え際から約5センチ位上の方が薄くなっているではないか。
手で色々いじってみたがやっぱり薄い。
そんで、何でこの位置やねん。
大好きなダウンタウンで磨き上げた、エセ関西弁にも力がはいらない。
今までやってしまった、頭皮に良くない事を思い出しながら後悔しまくった。
市販のブリーチでの脱色、
カッコつけパーマ、
To Be Continuedに憧れてカチカチに固めた前髪、
テレビを見てパリのモデルが頭皮の脂保持の為に、シャンプーしないという話しを間に受けた事
挙げればキリがない。
バカだ、あれだけハゲたくないと思いながらも、まだ大丈夫だろうと思い込んでやり過ごしてしまった。
世間で言う若ハゲさんが鏡の中にいた。
いや、もう少しソフトにいこう。
若薄毛さんがいた。
待てよ、まだ間に合うかもしれない
対策をうてば、髪が蘇るんじゃないか?
まず最初に帽子が1番身近な友達になり、育毛剤、スカルプシャンプー、坊主頭で誤魔化す、 頭皮に良いツボ、針、神頼み、深層心理法、ワカメ、冷水をかけて鍛える、etc。
細かく書き出せばキリがない。
出来そうな範囲内で色々やったが、季節の変わり目ごとに目立つようになっていく。
そして、人の目線が怖くなり、人に対しての第一印象が変わった。
この人は、ハゲてるか?、今後ハゲそうか?、
ハゲてないか? これ基準になった。
ハゲてるだけで好感度が100%アップだ。
今後ハゲるなと思ったら50%アップ。
絶対ハゲないな=普通
勿論、人柄がわかると、その後の印象はかわるが、ハゲ基準で始まる。
まさに、身も心も僕は ハゲ星人 と化してしまった。
これは、自分だけなのか?
他のハゲてる人はどうなのだろうか?
恐らく、大半の人は共存に成功して、星人化してないと思う。
けど、ハゲ人口の何%はいて欲しいな。
きっと、星人化している人は会った瞬間に分かり合える気がする。
ベタだけど「君の名は」のラストシーン的な感じで。
きっと星人は、孤高な存在だ。
無闇に群れず、爪を磨いているに違いないしそう願いたい。
ある日、2つの出来事が起こった。
実は、僕の同級生にも薄毛のやつもいるのだが、
その日、偶然コンビニで出会い、外で立ち話をした。
自分は完全防具の帽子をかぶっているが、同級生は堂々と薄毛をさらけ出している。
共存しているのだ。
僕は、そいつが眩しく、尊く見えたが、事あるごとに髪の毛をかき上げる。90年代の音楽シーンを賑わせたミュージシャンばりに、しきりにかき上げる。
かき上げなくても、一切邪魔にならないし、
触る事で毛が抜けてしまわないか、ハラハラする。
共存するとこの域まで達するのか?
僕は、軽く動揺しながらも、しばらく話しをして別れた。
そしてその日の晩、家族とテレビを見ていた。
地方局の制作番組で、地元の昭和な喫茶店特集をやっていた。
隣で、娘達は番組変えてと訴えているが、雰囲気好きな僕は、喫茶店特集が気になって、何とか娘達の攻撃を交わしながら、見入っていた。
その番組は、昭和喫茶に詳しい地元の案内人が、アナウンサーさんを連れて、店を紹介するという感じだったのだが、そこで、また僕の心はざわめきだす。
地元の案内人の髪の毛に、思いっきり違和感があったからだ。
伝説のハゲ隠し8:2分けだ!
ハゲ隠し7:3分けの自分と違って
もはや伝説レベル。
しかも、後頭部の髪の毛も重量に逆らって、頭頂部まで覆われている。
風が吹いても、一切乱れる事ない固め具合。
流石レジェンド!
明らかに周りの人達にはバレバレだが、僕の想いは違っていた
「長年頑張っているんだな。」
優しく抱いて「長い間お疲れ様」と言いたい。
長年、秘宝を守ってきた老兵に言うお姫様の様に。
「もう、良いんだよ。」心の底から。
2人が抱き合っている足元から、世の中いっぱいに、花が咲いていく光景まで、はっきり見える。
だけど
だけど
だけど
本音を言えば…
「ちょっとやり過ぎだよ、その髪型」
同級生を思い浮かべながら、どっちが幸せかなんて考えたが、そんな事は意味のない事だ。
番組を見終えた僕は、リモコンを娘にやり、
そっと立ち上がり、テレビを後にしながらこう呟いた
君の名は?