見出し画像

父と森高千里さんのLIVEに行った話

姉に急遽用事ができてしまい、歌手・森高千里さんのLIVEに行く代役をたのまれた。
「父と二人でLIVEに行く予定だったけど、どうしても行けないからお願い」と。

熱心に頼まれたからOKしたものの、本当はあまり乗り気ではなかった。その日はもともと夫と日帰り温泉に行く約束をしていた日だったし、森高千里さんのことはあまり知らないし。

けれどチケット代が無駄になるのはもったいない。夫には謝り、約束は次の日にすることにして、私は父と二人でLIVEに出かけた。

車の中はほとんど無言。私も父もおしゃべりなほうじゃない。

森高千里さんのことで知っていることといえば『私がおばさんになっても』を歌っていること。そして歌番組で司会をしているのを見たことがあるくらい。

精一杯楽しもうとは思うけど、もしかしたらあまり楽しめないかもしれないな。車の中ではなんとなくそんなことを考えていた。

しかしステージに森高千里さんが立った瞬間、「ちさとー!」「森高ー!」という声援が会場のそこかしこから沸き上がり、私の体は少しだけ震えた。

なぜだろう。繰り返しになるが、目にしただけで体が震えるほど、私は森高千里さんのファンではない。

けれど確かに私の体は震えて、ポジティブな気持ちになり、ついにはうれしくてうれしくて仕方ない気持ちになった。会場のファンの皆さんの想いが、私の中に流れ込んでくるようなイメージだ。

こんな感覚は、ファンであるアーティストのLIVEに参加するときには自発的に感じるけれど、まさか今日も感じるとは。

そこまでファンではない私をポジティブな気持ちにしてしまうほどのパワーはどこにあるのだろう。

「LIVEに参加する」といったら、ファンであるアーティストのものばかりだったから、なんだか不思議で新鮮だった。

LIVEはその後も楽しく進んでいく。

歌が楽しいのはもちろん、森高千里さんの人柄もステキだった。「振付が覚えられない」というファンに対して、「じゃあ、あなたのためにもう一度やりますね」と言って、そのファンのために振付を教える森高さん。これは確かにファンになっちゃうよな、と思った。

ふいに聞いたことのある歌が流れてきて驚く。大好きな歌だったけど、この曲を森高千里さんが歌っていたとは知らなかった。

誰もいない海
二人の愛をたしかめたくて
あなたの腕を すりぬけてみたの
走る水辺のまぶしさ
息も出来ないくらい
早く 強く つかまえに来て
好きなんだもの

『17歳』

流れてきたのは『17歳』。うれしくてうれしくて仕方なくて、森高さんが客席にマイクを向けた瞬間に「好きなんだもの!」と思いっきり叫んでいた。

いつの間にか私も会場のファンの人たちと心を一つにできていたようだ。

だってそのときには、私は森高さんが好きになっていて、歌も大好きだったから。

大好きな歌に自分も参加して、自分も曲の一部になっている。それがたまらなくうれしかった。

当たり前かもしれないけど、LIVEって好きなものをみんなで共有できて、その中に自分も思いっきり飛び込めるから楽しいんだな、と思った。

だからLIVEにはポジティブなパワーが集まるのかもしれない。
ファンではない人も、うれしくなってしまうような強力なパワーが。

帰りの車の中。そういえば私はどうして『17歳』を知っていたのだろう、と考えた。

私は『17歳』というタイトルも知らなくて、なぜかメロディだけを知っていた。

そして思い出す。そういえば父が運転する車のオーディオから『17歳』が流れていたのだ。

Discord名:みずがめ
#Webライターラボ2406コラム企画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?