世界一速い二十大予想(2)
タイトルを「速い」にしてしまったことに気づかなかった。矢継ぎ早に結論まで書ききっていれば「速い」で問題なかったのだが、今さら「早い」にするのも情けないので、このまま「速い」のままにしておこうと思う。
最大の焦点は習近平が引退するか。総書記を退任するかだ。
結論から言えばその可能性は限りなく小さいと考える。ほとんど『中国S級B級論』やブログに書いた通りで考えは変えていないのだが、再度まとめておく。
(1)後継者がいない
第17期(2007年から2012年)は習近平と李克強が中央委員から二段階跳びの政治局常務委員に昇格し、習が序列6位、李が7位となった。
2人を5年間競わせ、5年後にどちらかを総書記にするつもりだと書いた日本のメディアもあったが、これは胡錦濤の前例を無視している。
胡錦涛は1992年から10年間中央書記処常務書記を務めた。国務院副総理ではない。習近平が中央書記処常務書記、李克強が国務院副総理のポストを与えられた時点で、勝負は決まっていたのだ。
2例だけとはいえ、総書記修行に必要なポストであることは確かなので、中央書記処常務書記が総書記見習いポストとなっていると考えて差し支えないだろう。
江沢民と胡錦涛の年齢差は16歳、胡錦涛と習近平は11歳差だったが、今期中央書記処常務書記を担当する王滬寧は習のわずか2歳下で、若返りには程遠い。
鄧小平の鶴の一声も無ければ、血統的なバックボーンも無い王が総書記になることはあるまい。
意中の人らしい陳敏爾も、本当に意中の人なのか怪しい。習近平が総書記に選ばれた理由として、地方の実績が挙げられていたが、陳は地方での実績も足りず、中央での経験は皆無だ。
昨年の四中全会直前に噂されていたように、常務委員昇格と、中央書記処書記入りをしていれば事実上の後継指名だったのだが。
(2)国家主席の任期縛りを外したのに
国家主席の任期は、過去連続3期を超えないものと規定されていたが、2018年の全国人民代表大会で撤廃された。
国家主席単独では権限はないが、党(総書記)・国家(国家主席)・軍(中央軍事委主席)のトップは、江沢民以降、総書記が一手に握るようになっている。
総書記、中央軍事委主席は元から任期の縛りはないので、めでたく3つを背負ったまま突っ走れるというものだ。
一方、国務院総理の任期は連続3期の縛りが存在するので、李克強は李鵬と同じく全国人代委員長になって生き残るか、早めの引退となるかのどちらかとなる。
李克強の後任については、昨年の11月に素晴らしい分析をしていたので、そのまま引用する。
初代の周恩来を除けば、6人いる国務院総理は副総理経験者が昇格している。明確な規定があるわけではないが、総書記が中央書記処書記を経験するように、国務院総理も副総理を経験しているとやりやすいのだろう。
現在副総理は4人いて、2022年の第20回党大会では胡春華以外の3人が定年の68歳を超える。王岐山のために動かさなかった定年を動かすことは考えられないから、中央委員再任も難しいだろう。
冠婚葬祭がお仕事の国家副主席と異なり、行政職の副総理がヒラ党員というわけにはいかないので、韓正、孫春蘭、劉鶴が総理に昇格する目はかなり小さい。常務委員では汪洋が副総理経験者だが、全国政協主席は上がりポストなので総理や常務副総理に転じる展開がちょっと考えづらい。また、汪洋は一期しか総理ができないので、安定した政権運営には向いていない。
中央委員から常務委員、しかも総理となると副総理をはさんだ朱鎔基以上の超人ということになるが、そんな人は中央委員会には見当たらないので、順当なら胡春華が総理なのだと思う。
常務副総理でない副総理からの総理昇格は、李鵬と温家宝がいる。総理になってしまえば、総書記が胡耀邦状態にでもならない限り、総書記への転身はないだろう。
第19期では習、李以外の政治局常務委員が退任したが、第20期は汪洋、王滬寧、趙楽際が68歳ラインを超えない。3人ともそのまま続けるのだろう。この3人の間でポストを動かすのは好ましい手ではない。
ただし、汪洋と趙楽際と異なり、王滬寧が中央書記処常務書記に留まるとなると後継者指名は無くなってしまうので、王滬寧は中央精神文明建設指導委主任、つまりイデオロギーのみを担当するようになるのではないか。
代々の中央書記処常務書記は組織部門を管轄し、中央党校校長を兼任していたが、王は兼任していない(中央党校校長は中央組織部部長の陳希が兼任)。北戴河で休暇を取る専門家に挨拶をしにいくのも陳希の担当なので、もうなっているのだけど。
==参考消息==
https://note.com/aquarelliste/n/ndd234ec30120
http://aqurelliste.seesaa.net/article/471313388.html