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胡春華はどれくらい干されているのか

 2022年10月の第20回党大会で政治局委員から中央委員に格下げとなった胡春華同志。広東省委書記、国務院副総理という輝かしい経歴から、59歳で中国政界閑職の筆頭・全国政協副主席に格下げされて、すでに2年が経過した。

 政治局委員も広東省委書記も、全国政協副主席も同格の副国級との設定ではあるものの、1990年以降に広東省委書記を経験した6人中、3人が常務委員に昇格するという、出世コースとなっている。

 うち2人が胡春華同志と同じく国務院副総理を経て常務委員入りしており、彼らと対比すると露骨な左遷人事であるのはいうまでもない。上海市に次ぐ出世への近道ポストであることを考えると、余計にかわいそうになってくる。

 日本の企業に例えるなら、地方の支社長から本社の執行役員となった胡春華部長。取締役入りは叶わないにしても、少なくとも執行役員を継続と見られていたが、執行役員を外されたばかりか新人研修センター所長(仮称)に就任した、というところだろうか。

 そんな胡春華はどういう目に遭っているのか。

 まず思い出されるのは、2023年1月に開催された中央紀律検査委員会第2回全体会議において、「二十届中央委员的其他党和领导同志」(第20期の中央委員を兼任する、その他の党と国家の領導同志)とイジられたことである。

 2023年1月時点では党人事は発表になっているものの、国家機関のポストは発表前で従前のままの端境期なので、李克強や汪洋のようにヒラ党員でありながら、国家機関の領導同志ポストを持っている人間が存在する。第20期の中央委員でありながら国家機関の領導同志ポストを持っているのは、胡春華同志ただ一人なのだ。

 こういうのは正確に記すのが中国で、図らずも胡春華同志が格下げされてしまったことが強調される言い回しになってしまった。

 2023年3月までは国務院副総理を務めていたので、そこまでは担当する農業部門で国内視察、商務部門のお仕事で外遊もあったのだが、3月に政協副主席に就任すると、露出は一気に激減した。政協周りの会議に出席か、もしくは発言内容が誰も読んでいない全国政協の機関紙・人民政協報に掲載されるのみとなっている。

 政協副主席就任後の2023年4月3日付の人民政協報には、「深入学习宣传贯彻习近平总书记关于加强和改进人民政协工作的重要思想全国政协党组理论学习中心组2023年第一次集体学习发言摘编」(人民政協工作の強化と改善に関する習近平総書記の重要思想を深く学習、宣伝、貫徹する、全国政協党組理論学習センター2023年第1回集団学習・発言の概説)という記事が掲載されている。

 この記事には、「政協の新兵」として「人民政協工作の強化と向上に関する、習近平総書記の重要思想を学習する中で、知見と収穫を得た」と、涙無しには読めない胡春華同志の発言要約が掲載されている。

 人民政協報で得た収穫は、副総理や地方時代の経験を買われたからか、政協の農業や農村周りの集まりには顔を出し、関連する脱貧困を目的とした国内視察が見られたくらいか。発言が表に出ることも少なくなった。

 王滬寧が海外の賓客と会見する際は石泰峰、王東峰がセットで同席し、石泰峰が不在の場合は胡春華同志と王東峰がセットで同席している、という悲しい結果も得られてしまった。胡春華同志は石泰峰の代理なので、胡春華同志と石泰峰が2人がセットで出てくることはなかった。

 メインストリームである中央経済工作会議や中央金融工作会議にも姿が見られない。陳希や夏龍宝といった、習近平に近く、経済と特に関係のない人間は出席しているので、あからさまに干されているのは丸わかりだ。

 そもそも59歳で二線級の政協に入る時点で干されているのは確定なのだが。

 習近平政権となって以降、政協副主席を兼務することで65歳の定年縛りがある閣僚級からランクアップし、メインポストを任期まで務める抜け道が編み出された。

 第20期でいえば、姜信治がそれにあたる。2023年の時点で65歳だった姜信治は、政協副主席というドーピングを施されることで政治的寿命が延長され、2017年から続く中央組織部の常務副部長を続投することになった。

 しかし、胡春華はそもそも兼務するメインポストが無い。だから、活動は政協会議副主席の範囲内に限られてしまう。

 表舞台への返り咲きは習近平が変な感じになるなど、政変に近いビッグイベントが起きない限りは無理だろう。

==参考消息==
https://tv.cctv.com/2023/01/09/VIDERyqgn7nBZxu10QXuNrde230109.shtml
http://dzb.rmzxb.com//rmzxbPaper/pc/con/202304/03/content_41221.html
http://dzb.rmzxb.com//rmzxbPaper/pc/con/202306/15/content_45050.html

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