習近平の3期目について

2021年3月14日 21:44

　2022年の第20回党大会で、習近平が総書記から退任し、政界から引退する確率は限りなくゼロに近い。

　何度も書いているように、後継者がいない。胡錦濤も習近平自身も、前任者の在任時に中央委員から常務委員に抜擢され、中央書記処常務書記、中央党校校長に就任して総書記修行に励んだ。

　胡錦濤は江沢民が総書記だった10年間にじっくりと育てられ、二期目に国家副主席と中央軍事委副主席に、胡錦濤の2期目に常務委員入りした習近平も国家副主席となり、任期途中から中央軍事委員会副主席となっている。

　総書記になるためには、これらのポジションが必須ということになるのだが、現在の3ポストはバラバラ。中央書記処常務書記は王滬寧（67）で習近平のわずか2歳年下。

　中央党校校長は中央組織部部長の陳希（69）で、彼は習近平とは大学の同期なので同い歳。国家副主席の王岐山（74）は習近平の5歳年上だ。

　年齢だけを見ても、彼らが次の総書記ではないことは明白だ（年齢は2022年秋開催予定の第20回党大会時点）。

　今の政治局には最低5年間を修行にあてた後、二期10年の総書記生活を送れる若者がいない。

　次世代のホープ（）として生き残った最年少の胡春華も、政治局で二期足踏みしてしまい気が付けば来年の第20回党大会で59歳なので、仮に彼が後継者として選ばれても、68歳定年の内規を守るのであれば一期しか総書記ができない。安定した政権運営には二期連続が望ましいだろう。

　党大会まであと一年半ほどあるが、今から担ぎ上げても2022年からの就任に間に合うとは思えない。

　おととしの四中全会で陳敏爾、胡春華が常務委員に昇格、あるいは昨年流れた「体調不良の趙楽際に代わって楊暁渡が後任、陳敏爾が中央書記処入り」みたいな話が実現していればなんとか間に合ったのかもしれないが、結局噂レベルだったし、現在の政治局委員には意中の人間はいないのではないか。

　ちなみに中央委員会最年少の陸昊（りくこう）で55歳。彼が次の党大会で謎の大抜擢を遂げれば間に合うのだが、ハゲてるし陸昊ではないでしょう。

　習近平にしてみれば、来年まだ69歳なのに、何で退任せねばならんのだという思いもあろう。

　1982年、鄧小平は『關於建立老幹部退休制度的決定』を出し、鄧小平は自分も含めた古参幹部を現役から引退させようとした。

　実際には、鄧小平自身は中央軍事委員会主席のポストは手放さなかったし、公職から降りたはずの古参幹部も影響力を保ち続け、単に公職を退いただけという結果になったが、第12回党大会で「終身ではない」と中国共産党章党章に規定された。

　1926年生まれの江沢民が2002年に総書記を退任したのは76歳だ。任期縛りや常務委員縛りの無い中央軍事委員会主席のポストは2004年まで握り続けたが、後任の胡錦濤は69歳の2012年で総書記、中央軍事委主席を退き、ついで翌年に国家主席を退任した。

　胡錦濤の完全引退を賞賛した習近平が任期を延長するのは不都合がある気もするが、江沢民は1989年6月に開催された第13期四中全会で総書記に就任し、第14期、第15期と総書記を歴任している。

　中国共産党章程には、党総書記は二期を超えて務めてはならないという規定は存在しない。毛沢東はアレとしても、平時に三期務めた江沢民がいるのは力強い。

　69歳で常務委員を退任しなければならない理由となっているのも、数々の常務委員を引退に追い込んできた『七上八下』なる内規があるからだ。

　2002年の第16回党大会で、江沢民の常務委員退任後も李瑞環が常務委員を続投しそうだったため、江の片腕・曾慶紅が68歳定年制を持ち出して李を辞めさせたというのが始まりだ。

　その5年後、2007年の第17回党大会で、常務委員となっていた曾慶紅（当時69歳）が続投しそうだったのを、68歳定年制をチラつかせて退任に追い込んだのが李瑞環、という話だ。

　2012年の第18回党大会では何事もなくみなさん引退された。当時69歳だった総書記の胡錦涛もだ。このラインが再度注目を集めたのが、2017年の第19回党大会だ。

　習近平の盟友・王岐山（当時69歳）が常務委員を続投するかどうかが話題となったが、常務委員は退任し、国家副主席に就任し、常務委員と政治局委員の間という序列におさまった。

　『七上八下』はそもそも内規なので、守らんでもええんや、となれば守る必要がない。前回の党大会（第19回党大会）の直前には、「能力のある人は多少任期が伸びてもよい」的な記事が量産された。

　今回は習近平なので、もっともらしい記事がじゃんじゃんでてくるのではないか。

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