「日々の誇り」
「日々の誇り」
朝日が昇る前から
地下鉄に揺られて
三十年変わらぬ道を行く
誰もが寝静まる街を抜けて
独りの部屋を出て
独りの席に着く
それがどうした
私には仕事がある
キーボードを打つ音が
静かなオフィスに響く
誰よりも早く来て
誰よりも遅く帰る
家族はいらない
恋人もいない
でも私には
この仕事がある
若い社員が言う
「前田さんは寂しくないんですか?」と
答えてやる
「私には誇りがある」と
三十年磨いた技
この手が作り上げた実績
それこそが私の
かけがえのない宝物
夕暮れのデスクで
また新しい仕事と向き合う
明日も明後日も
私は歩み続ける
独りでいい
それが私の選んだ道
この仕事と共に
私は生きている