元気なバクテリアづくりと、まちづくりとの共通点~養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?中編~
>>前編
適切な生物ろ過を作るには?
自然界ではバクテリアの活動による水質浄化が自然に行われています。
しかし、人工的にろ過装置を作るときには、専用の素材や培養材といった設備・操作が必要に。
鍵になるのは、いかにバクテリアが元気に活動できる環境を作るか!です。
この環境づくり。
実は、人間社会のまちづくりと共通した見方もできそうなのです。
それでは、実際にどのようにして生物ろ過を作るのか?
順を追ってみていきましょう。
*本記事では、参考までにいくつかの実際の製品画像を載せていますが、実際にろ過システムを作成する際には各製品のカタログスペックを参照し適切なものを選択するようにお願いします。
1. バクテリアの家づくり
人間が働く上で家が必要なように、バクテリアにとっても住処は必要です。人間が効率的に働くために会社の近くに住まいを持つように、バクテリアにも循環する水の通り道に住んでいてもらうと効率的にろ過ができるというわけです。
そこでまず準備するのが、バクテリアの住処となる「バイオメディア」と、バイオメディアの容れ物「ろ過槽」です。
「バイオメディア」とは、バクテリアが住み着き繁殖しやすい素材や構造物のことです。効率よく生物ろ過を進めるために表面積を大きくしつつ、水流を妨げないような形状のデザインになるように。各社の技術が光ります。
バイオメディアには多種多様な種類があり、それぞれに適した設置場所や規模があります。あなたの飼育水槽に必要な能力が発揮されるかどうか、カタログスペックを確認しましょう。
「ろ過槽」はバイオメディアに限らず、物理ろ過・化学ろ過の材料を入れる容器です。これは広い意味での説明ですが、飼育水槽のサイズや必要なろ過能力の規模によって適切なものを選択することになります。
金魚など小さい観賞魚の水槽などに使われるものから…、
陸上養殖で大規模に水を浄化するためのタンク、
飼育水槽にあわせて、市販のろ過素材を利用した自作のろ過槽を作ることもあります。
バクテリアが住みつける場所、そしてその容れ物が用意できれば、
バクテリアの家が出来上がったことになります。
次に住人を住まわせましょう。
2. バクテリアを住まわせる
住処が準備できたら、市販のバクテリア添加剤を投入します。
ここで使用する「バクテリア添加剤」とは、実際にバクテリアの生き物自体を入れるということです。
即効性のあるものや安全性が高いもの、魚にストレスをかけにくいものなど、バクテリア添加剤には多くの種類があります。淡水・海水の両方で使用可能なものや、アンモニア以外の有害物質も分解できるバクテリアブレンド剤も。
有用なバクテリアの生産、これもまた研究開発の賜物なのです。
3. 能力を引き出す
家をつくり、住民を住まわせました。
ただ、生物ろ過の能力を発揮してもらうためにはバクテリアに増えてもらい、アンモニアの分解能力を高めるステップが必要です。
まず必要なのは酸素。
バクテリアの活発な繁殖と、アンモニアの分解ためには酸素が不可欠です。
エアレーション装置を設置し、水中に酸素を供給しましょう。
これが、以前の記事で魚がいなくともエアレーションを止めるべきではないと説明した理由ですね。
また、新しい水槽や魚が少ない水槽の場合、
アンモニアも必要です。
前編にて、アンモニアはバクテリアにとってのエサのようなものだと説明しました。アンモニアの発生源(魚など)が少ない場合は、十分に増殖するまで必要量が不足しないよう人工的に適量を添加する必要が出てきます。
そして…、
時間が必要です。
装置を揃えて水の循環システムを稼働させてから、新しくバクテリアが「定着」するまで、一般的には数日から数週間かかります。
定着とは、バクテリアが住処にしっかりと付着し、増殖し、安定してろ過機能を発揮できるようになった状態のこと。
稼働してからしばらくの間は、アンモニア濃度や亜硝酸濃度をこまめにモニタリングします。アンモニアや亜硝酸の濃度が0 ppmに近い状態で安定していることが、定着の目安として考えられます。
生物ろ過、独り立ち。
バクテリアの定着が確認できれば、生物ろ過システムづくり完了!と言えます。
一度定着してしまえば、あとは飼育水槽内のエサの食べ残し、魚の糞便がバクテリアの栄養になります。≒バクテリアの栄養を追加で添加する必要がなくなります。
これこそが、生物ろ過のサステナブルなポイントといえるでしょう。
まとめ
自然の力で有害なアンモニアを除去できる生物ろ過。
住みやすい家をつくる
家にバクテリアを住まわせる
能力を発揮するまで育てる
定着すれば持続的なシステムの担い手に!
その裏には研究開発の結晶があった!
こうしてバクテリアにろ過能力を発揮してもらうまでの過程を理解していくと、私たち人間の社会にも共通しているように見えませんか?
住みやすい場所をつくり、住む人を呼んで、その人が能力を発揮できる環境を用意すれば…、住民1人1人が担い手となって持続していく社会にできるかもしれませんね。そしてその基盤には技術や知恵が不可欠なわけです。
さて…。
とは言え、生物ろ過システムが出来ればもう手放しにしてOKというわけではありません。生物ろ過システムが出来てからもメンテナンスが必要な部分があります。この点を後編でご紹介していきます。
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