養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?前編~毒もあるいはエサになる。
育てるを育てる。AQSimです。
陸上養殖で魚を健康に育てるためには、まず水質を適切に保つことが大切。魚の健康と成長を大きく左右します。
ではどのように水をきれいに保ち、魚が健康に育つ環境を維持すればよいのでしょうか?
そのための重要な方法が「ろ過」です。
陸上養殖の「ろ過」では、大きな汚れを取り除く物理的なフィルターだけでなく、目に見えないバクテリアが活躍しています。
まずは、それはどんな仕組みで、なぜ重要なのか?について探っていきましょう!
養殖に必要な「生物ろ過」とは何か?
ろ過は何種類ある?
養殖の水質管理に欠かせない「ろ過」。はじめに整理したいこととして、ろ過と一言でいっても、その仕組みは様々ということがあります。大きく3種類の方法に分けてみましょう。
1. 物理ろ過
これは、ろ過と聞いたらきっと最初に思い浮かべる基本的な方法。物理的に水中の大きな物質をひっかけ、通さないようにします。
ペットボトル浄水器をイメージしてください。
目に見える大きな汚れやゴミを、網や石、砂といったフィルターがキャッチして水をきれいにしています。魚の飼育においても、これによって魚の食べ残しやフンといった不純物が水から取り除かれ、清潔な環境が維持されます。
2. 化学ろ過
物理ろ過は、ある程度のサイズがある物質にしか効果を発揮できません。それに対して化学ろ過は、活性炭や専用の吸着材を使って小さく有害な化学物質を吸収する仕組みです。例えば、飲料水に使われる浄水器のカートリッジのようなものがあります。
目に見えない不純物や水の色を取り除くことで、安心して飲めるきれいな水ができます。養殖などの飼育水槽でも、アンモニアやその他の有害物質を吸着して、魚が過ごしやすい水質に保つ役割をもっています。
3.生物ろ過
そして、今回注目する生物ろ過。
バクテリアの働きを利用して有害なアンモニアを分解する方法です。
自然界の浄化作用を利用するから、魚にも環境にも優しい。さらに、持続可能なアプローチとして注目されています。
では…
生物ろ過が重要なのはどうして?
生物ろ過の役割、
それは養殖槽で必ず発生する有毒な「アンモニア」を分解することです。
高濃度のアンモニアは、魚のエラを傷つけます。
さらに、藻類や植物プランクトンの過剰な繁殖の原因にもなります。そうすると、魚が使える酸素が減ってしまう。つまり、目に見えないけれど毒性が強い汚れの代表がアンモニアなのでした。
厄介なのは、魚を育てるうえでアンモニアの発生は避けられないということ。発生し続けるアンモニアにどう対処すればいいのでしょうか。
ここで必要になるのが生物ろ過です。生物ろ過では、特定のバクテリアがアンモニアを分解し、無害な物質に変換します。
バクテリアにとってアンモニアはエサのようなもの。
分解することで自分のエネルギーに変えています。人で例えるならば、呼吸や食事に近い形でアンモニアを利用している生物なのです。
ほんの少し詳しく説明すると、硝化細菌などのバクテリアがアンモニアを分解して毒性の低い物質に変換してくれます。分解されたアンモニアはまず亜硝酸塩になり、最終的に低毒な硝酸塩になっていきます。
もちろん化学ろ過でもアンモニアを除去することはできます。
が、使い捨ての吸着材を使用した一時的なものでしかありません。
一方で、生物ろ過はバクテリアが生きるためにアンモニアの分解を続けるため、持続性が強みです。化学的な手段を使わないから、環境にも優しいと言えます。
つまり、一度バクテリアが棲みついてしまえば、エコで効率的な水質管理ができるのですね。
まとめ
水質維持の方法、ろ過には3つの方法があった。
生物ろ過はバクテリアを利用して有害なアンモニアを分解。
バクテリアが生きるための糧として分解するので持続的。
ということでした。
さて。一方で、生物を利用したろ過方法ということはその生物にも生きていてもらわないといけませんよね。そもそもどうやって生物ろ過のシステムを作るのでしょう?どうやってメンテナンスされているのでしょう? この点は中編・後編の記事でまとめてみたいと思います!
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