刀神(とうしん)4

旅先で見つけた施設

地域に根差したもの

寄贈品が多かった。

期間限定特別展示、追加料金なしで入れた。

地面に染みでた想い

イヤなものじゃないといい

狭い入口を入ると正面に偉丈夫の甲冑。

見慣れたものでも、ビクッとちょっと跳ねてしまった。これじゃないなと本能的に思う。

一つ一つ見ていく。

徐々に空気がかわる。おやっ、認められたようだ。敵意はない。少しだけ安堵し、息をコッソリはく。

耳をすまして、探りながら見ていく。

少し静かになった。

身体の力を抜く小さな声に気がついたのは展示をじっくり見はじめて二週目が終わる頃。

「寂しい」んっ聴こえた。

どこだ。小刀?

端に展示された懐剣が目に入る。たぶんこれだな聞き取ることはまだ出来ない。回りが騒がしかったのは、これを伝えようとしていたのだろう。

入口の人に尋ねてみた。

「特別展示の中にある小刀について詳しく教えて貰えませんか?」不思議そうな顔をする

「なんで、あんな小さかもん気にする。お前さんで二人目じゃ。わしじゃ詳しく話せん事務所に館長いるきにきけっちゃ」

「はい」真っ直ぐ事務所へ向かう。

「あぁ、あれですね。私も気になっていたのですが、どうも藩の偉いかたの持つものらしいのですが、どうにも分からず・・・」

「一緒に寄贈されたものはありませんか?」

「確か、帷子があったかな?でも偉い人のではないですよ?」

簡単に自分の力を説明する。

「理解できなくても、小刀を帷子と一緒にして上げて下さい。」

しぶしぶ特別展示が終わったら、一緒に展示すると約束してくれた。

詳しく聞くと、実は特別展示を初めてから、気分が悪くなったり、ケガをしたりする人がいたとコッソリ教えてくれた。

悪い気はないので、それは偶然かも知れませんよと明るく別れた。

今度は帷子を探した。

良い話を伝えたくて、ひっそりと片隅に展示された帷子は何も伝えて来なかった。

ただ、館を出るとき入り口に咲いた梅の木がふぁっと香りを届けてきた。

まるで、ささやくように


ここまで






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オビエルタヌキ/春うらら寝ぼけております
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